Carl Verheyen

米国ロサンゼルスを拠点に活躍するセッション・ギタリストの一人として、またソロ・アーティスト、作曲家、プロデューサーとして長年にわたり第一線で活動を続けるカール・ヴァーヘイエン。Supertrampのメンバーとしても知られる彼は、卓越したテクニックと幅広い音楽性を備えながら、常にギターという楽器の新たな可能性を追求し続けている。カール・ヴァーヘイエン・バンド名義で発表された最新アルバム『Promised Future』は、長年にわたり共に演奏を重ねてきたメンバーとの強い結びつきから生まれた作品だ。ギターの魅力を存分に味わえる演奏はもちろん、歌やメロディ、緻密なハーモニー、そしてバンド全体が一体となって生み出す豊かなアンサンブルが、アルバムに奥行きと彩りを与えている。
今回、MUSE ON MUSEはカール・ヴァーヘイエンに『Promised Future』の制作背景やタイトルに込めた思い、収録曲のアレンジやギター・プレイ、レコーディングで使用した機材、さらには現代のギター・サウンドに対する考え方まで、幅広く話を聞いた。
Interview / Text Mamoru Moriyama
Muse On Muse (以下MM) : 『Promised Future』では、あなたの卓越したギタープレイだけでなく、ボーカリストとしての魅力や、バンドが生み出す音楽的な相互作用も際立っています。このアルバムではどのようなことを目指し、音楽を通じて何を表現しようと考えましたか?
Carl Verheyen (以下CV) : このメンバーでツアーをコンスタントに行うようになって3年になる。今回のアルバムでは、僕たちが一緒に音楽を作る中で育んできた仲間意識や、音楽を演奏する喜びを表現したかったんだ。メンバー全員が親しい友人だし、僕の音楽を世界中で演奏することを楽しんでくれる素晴らしいミュージシャンたちと一緒に活動できることを、本当に嬉しく思っているよ。
MM : 今作はCarl Verheyen Band名義でのアルバムですが、レコーディングに参加したミュージシャンを紹介し、それぞれがアルバムにどのように貢献したのか教えていただけますか?
CV : デイヴ・マロッタについては、これまでの僕の多くの作品で知っていると思う。彼は1988年からバンドに参加していて、クリフ・ヒューゴ、スチュアート・ハム、アルフォンソ・ジョンソンがベースを担当していた時期に、何度かメンバーが入れ替わった期間があったものの、長年一緒に活動しているんだ。
2014年からは、ジョン・フォガティ、スティーヴ・ミラー、ブッカー・T・ジョーンズ、パット・ベネター、ランディ・ニューマン、ボニー・レイットなどとの共演歴を持つ実力派ドラマー、ジョン・メイダーがドラムとパーカッションを担当している。
キーボードとギターを担当するトロイ・デクスター(ウィルソン・フィリップス)は、マルチ・インストゥルメンタリストで、歌も歌うしマンドリンも演奏する。
そして2023年からは、マイケル・マクドナルド、ディオンヌ・ワーウィック、スティーヴン・ビショップ、クリストファー・クロス、ドン・フェルダーらとの共演歴を持つボーカリスト、ホリー・デクスターが加わり、4声のハーモニーがバンドのサウンドに加わったんだ。
一緒にツアーを重ねていることで、スタジオに入る前にアレンジをしっかりと練り上げることができる。それに、僕はメンバーからの提案やアイデア、アドバイスをいつでも歓迎しているよ。アルバムで聴けるのは、彼らが持つさまざまな音楽的影響が融合して生まれた、独自のサウンドなんだ。
MM : 『Promised Future』というアルバムタイトルは、どのような発想から生まれたのでしょうか。また、このタイトルにはどのような意味が込められていますか?
CV : 今のアメリカの政治状況は、これ以上ないほどひどいものだと思う。タイトル曲には、そうした状況を反映した、少し悲観的なところがあるんだ。「Shallow Harbor」も同じだね。ただ、いずれは状況が良くなると信じているよ。
MM : アルバムジャケットには、未来的な街、青空に浮かぶ惑星、そして緑に囲まれた風車のような建造物が描かれています。このアートワークはどのような発想から生まれたのでしょうか。また、アルバムタイトルや作品のテーマとはどのように結びついていますか?
CV : 実は、あの風車の写真は僕自身が撮影したものなんだ。オランダで、ある村を歩いていたときに撮ったんだよ。その日の夜には、その村にある古い教会でコンサートが予定されていたんだ。
僕にとって風車は、昔の時代を象徴するものなんだ。かつて風車は穀物を挽いて小麦粉を作ったり、水を汲み上げたりするために使われていた。インターネットも車も航空機による移動もなく、電球や携帯電話のように、今では当たり前になっている現代のさまざまなものが存在する以前の時代だね。それと未来を対比させることで、ある問いを投げかけているんだ。僕たちが約束された未来だと思っていたものは、本当に今のほうが良くなっているのだろうか、とね。
MM : 『Promised Future』の作曲からレコーディングに至るまで、どのようなプロセスで制作を進めたのでしょうか? まずご自身で曲を作り込んでからバンドに持ち込んだのでしょうか。それとも、メンバーと一緒に演奏するなかでアレンジを発展させていったのでしょうか?
CV : その両方だね。今は自宅にスタジオがあるので、曲のアイデアをじっくりと練り上げてからツアーに持ち込み、リズムセクションと一緒に発展させていくことができるんだ。実際にライブで演奏してみることは、何がうまく機能していて、どこを見直す必要があるのかを確かめるうえで、本当に役立つよ!
MM : 今作では、長い歴史を持つ伝説的なレコーディングスタジオ、Sunset Soundも使用しています。このスタジオのどのようなところが気に入っていますか? また、スタジオの環境はレコーディングのサウンドや雰囲気にどのような影響を与えますか?
CV : Sunset Soundは、僕が「トーンの聖地」と呼んでいる場所なんだ。3つあるスタジオルームはどれも気に入っているけれど、最もよく予約するのはスタジオ2だね。あそこでは初期のヴァン・ヘイレンのアルバムがレコーディングされたんだ。僕はエディ・ヴァン・ヘイレンの録音でテッド・テンプルマンが使っていたのと同じマイクやアンプのセッティングを使っているよ。
MM : オープニング曲「Every 20 Seconds」では、あなたのボーカル、Hollye Dexterのボーカル、そしてバックグラウンドボーカルが見事に調和しています。このようなボーカルアレンジを採用したのはなぜでしょうか。また、それぞれのボーカルパートが絡み合うような構成を、どのように作り上げていったのでしょうか?
CV : 最近、1970年代のデラニー&ボニーというバンドに夢中になったんだ。彼らは70年代初頭にロサンゼルス周辺で精力的に活動していて、やがてエリック・クラプトンがアルバム『Layla』の制作で起用したデレク・アンド・ザ・ドミノスのバンドメンバーたちとも深く関わることになった。夫婦でボーカルを担当していたデラニーとボニー・ブラムレットは、本当にソウルフルで、二人の相性も抜群だった。僕はああいうサウンドを求めていたんだ。ホリーはハーモニーを作ることが本当に自然にできる人だから、一緒に歌うのがとても楽なんだよ。彼女のおかげで、僕自身も毎回のステージでより良いシンガーになれているんだ!

MM : タイトル曲「Promised Future」のギターソロは、緻密に構成されたフレーズと美しい展開が非常に印象的です。このソロはどのように組み立てていったのでしょうか? フレーズをあらかじめ考えておくのでしょうか。それとも、レコーディング中の演奏から自然に発展していくのでしょうか?
CV : ほとんどは即興で、一発録りだったよ。ただ、最後の三連符を畳みかけるフレーズの部分だけは、後からパンチインで録り直して、ハーモニーを付けたんだ。リズムパートを録音し、キーボードやボーカル、ギターのさまざまなレイヤーを重ねていくと、その曲の雰囲気がすっかり自分の中に染み込んでくる。だから、その段階になるとソロも自然に、無理なく弾けるようになるんだ。
MM : タイトル曲では、リズムギター、キーボード、ベース、ドラムが一体となった、幾重にも重なる豊かなアレンジも印象的です。バンドとしてどのようにアレンジを作り上げ、それぞれの楽器にどのような役割を担わせるかを決めていったのでしょうか?
CV : この曲はスタジオでライブ録音したんだ。トロイはウーリッツァー・ピアノで8分音符のフレーズとリックを演奏していて、さらにジム・コックスもアコースティック・ピアノを弾いている。その後、トロイがオルガンのパートも演奏したので、実はこの曲には3台のキーボードが入っているんだ。僕はギターでリックを弾き、ギターソロに入るまでは歌に専念している。そしてソロの後には、ダンエレクトロのギターでリズムパートを演奏したんだ。
MM : 「Shallow Harbor」は、哀愁を感じさせる印象的な曲です。このような曲では、ボーカルのメロディを支えるギターパートや、ギターソロをどのように組み立てていますか? また、ギターを控えめに演奏する場面と、ギターを前面に押し出す場面は、どのような基準で判断しているのでしょうか?
CV : 今のアメリカで起きている政治的な混乱について、ホリーが書いた歌詞の一部にインスピレーションを受けたんだ。彼女の書いたフレーズをいくつか使い、それが残りの歌詞、そして曲の音楽的な部分を生み出すきっかけになった。この曲には、哀愁という要素がよく合っていると思う。冒頭のマイナーキーのテーマが、自然とそうした感情へと導いてくれるからね。曲の大部分は自宅でレコーディングしたんだ。1965年製のフェンダー・ストラトキャスターを、クリーントーンに設定したダンブル・オーバードライブ・スペシャルにつないで演奏したよ。こうした素晴らしいアンプを所有しているギタリストの多くは、クリーントーンで使うことがあまりないけれど、僕はこのアンプが生み出す倍音が非常に複雑で美しいと感じているんだ。そしてスタジオでは、1968年製のギブソンES-335でギターソロを演奏し、アコースティックギターも録音したよ。
MM : 「Survive」「Hippie Wedding」「Dark Angels」などの曲は、印象的なボーカルメロディを軸としながらも、緻密なアレンジや表現力豊かなギタープレイを存分に楽しめます。楽曲そのものの魅力を引き出すことと、ギターでさまざまな表現を追求することを、どのように両立させていますか? また、どちらか一方がもう一方を圧倒しないように、どのような点を意識していますか?
CV : それは素晴らしい質問だね!僕のファンが、最高レベルのギタープレイを聴きたくて僕の音楽を聴いてくれていることはよく分かっている。でも、これまでにいわゆる「シュレッド系」のギターアルバムもたくさん作ってきたし、今の音楽シーンにおいて、それが最先端の表現だとは思っていないんだ。それに、僕自身が聴きたいのはハーモニーなんだ。楽器によるハーモニーも、ボーカルによるハーモニーもね。僕が特に好きなレコードには、ブライアン・ウィルソン、ポール・サイモン、ジョン・レノンとポール・マッカートニー、エルトン・ジョン、バート・バカラックといった作曲家たちによる素晴らしい楽曲が収められている。彼らの曲には、優れたコード進行や転調、そして洗練されたハーモニーが使われていて、何度聴いても飽きない魅力があるんだ!
君の質問への答えとしては、僕の曲はすべてギターから生まれているという事実を伝えるのが一番いいと思う。ギターを弾いていて何か面白いアイデアを見つけたら、そこから発展させていくんだ。「Survive」の冒頭のフレーズがまさにそうだね。あのフレーズができてからコードを付け、そのコード進行に合う歌詞を考えていったんだ。「Promised Future」も同じ方法で書いたよ。
MM : ライブ録音による「TAKE THE LONG WAY HOME」では、バンドの演奏が持つエネルギーが見事に捉えられています。この曲のライブバージョンをアルバムに収録しようと考えたのはなぜでしょうか。また、ライブ録音によってどのようなものを捉えたいと考えましたか?
CV : 僕は長年スーパートランプで活動していたこともあって、僕たちのコンサートの告知には、ときどき「スーパートランプのギタリスト、カール・ヴァーヘイエン」という紹介が使われるんだ。だから、どの公演でも、僕たちがスーパートランプの曲を演奏すると思って来場する人がいるんだよ。僕たちならではの、独特でブルージーなアプローチでこの曲を演奏できていると思うし、アルバムに収録する価値があると考えたんだ。カバー曲を演奏することには、観客が知っている曲を通じて親しみを感じてもらい、そこから僕がどのような音楽を目指しているのかを伝えるという意味もあるんだよ。
MM : 「Hippie Reception」は、リズム隊、キーボード、ギターが織りなす幻想的なサウンドが印象的なインストゥルメンタル曲です。この曲はどのように生まれ、独特の音の広がりをどのように作り上げていったのでしょうか?
CV : 「Hippie Reception」で使っているハーモニーのパレットをベースにして、そこに即興演奏の要素を加えながら発展させているんだ。この曲はライブで演奏するのが本当に楽しい。観客の反応やその場の雰囲気によって、どんな方向にも展開していく可能性があるからね。
MM : アルバムは、Jesse Colin Youngの楽曲「Light Shine」で幕を閉じます。この曲に惹かれた理由を教えてください。また、アルバムの最後を飾る曲として、この曲がふさわしいと考えたのはなぜでしょうか?
CV : 10代の頃、僕はジェシーの歌声に強く惹かれていたんだ。僕にとって本当に特別な声だった。18歳のときには、彼のバンドに参加させてもらえないかと思って、本人に手紙を書いたこともあるんだよ!ヤングブラッズ時代の曲も含めて、彼の曲は全部知っていると伝えたんだ。驚いたことに、彼から絵葉書で返事が届いたんだよ。ちょうどサックス奏者を採用したばかりだけれど、「君の名前は記録に残しておくよ」と書いてあったんだ。
面白いことに、僕はその絵葉書を何年もずっと大切に保管していた。そして2024年、ついに彼と会う機会があったとき、その絵葉書を本人に見せたんだ。そこから、とても楽しい会話ができたよ。
僕は音楽の世界で素晴らしいキャリアを築くことができたけれど、彼はそのキャリアにおいて、とても大きなインスピレーションを与えてくれた存在だったんだ。彼が亡くなるわずか1年前に、そのことを本人に伝えられたのは本当に良かったと思っているよ。
MM : 『Promised Future』では、あなたの表現力豊かなギタープレイに加え、ギターサウンドも非常に印象的です。今作のレコーディングでは、どのようなギター、アンプ、ペダルを使用しましたか? また、それぞれの曲に合わせたサウンドをどのように作り上げていったのでしょうか?
CV : これだけ長く音楽活動を続けてこられたおかげで、今では楽器、アンプ、ペダルをかなり充実したコレクションとして所有できているんだ。本当に恵まれていると思うよ。
アンプはフェンダー・プリンストン・リバーブとトレモラックスを使用した。「Hippie Wedding」では、1964年製のヴォックスAC30を2台、1966年製のリッケンバッカー330と組み合わせて使っている。
「Shallow Harbor」のギターソロでは、1968年製のギブソンES-335とダンブル・オーバードライブ・スペシャルを使用した。クリーントーンのパートでは、65年製のフェンダー・ストラトキャスターをダンブルにつないで演奏している。このセッティングは「Light Shine」でも使ったよ。
「Take the Long Way Home」のバージョンは、ロサンゼルスにあるAlva’s Showroomという小さな劇場で録音したものなんだ。ここでは僕がライブで使っている機材をそのまま聴くことができる。歪み側にはダンブルと1969年製の100ワットのマーシャルを使っている。
そしてA/Bスイッチを使ってクリーン側に切り替えることもできるんだ。こちらは1975年製の100ワットのハイワットと、1966年製のフェンダー・ショーマンという組み合わせだよ。
LSLのシグネチャー・ストラトキャスターも多くのパートで使っていて、「Promised Future」や「Every 20 Seconds」のギターソロもそのギターで演奏した。
「Light Shine」のソロでは1954年製のレスポール・ゴールドトップを使い、きらびやかな響きのソロにはダンエレクトロのギターを使用したよ。
「Dark Angels」では、アラン・ホールズワースから譲り受けたカスタムメイドのバリトンギターを演奏している。
現代のギタープレイやレコーディングにおいて、最も重要な表現のひとつは「テクスチャー」だと思う。僕はさまざまなトーンを組み合わせることが大好きなんだ!
MM : 近年、ギター機材のテクノロジーは大きく進化し、デジタルモデラーやコンパクトなオールインワン機器によって、従来のアンプやペダルを多数使用しなくても多彩なサウンドを作り出せるようになりました。こうした進化をどのように捉えていますか? また、ギタリストが自身のサウンドを作り上げるうえで、デジタル技術はどのような役割を果たすべきだと考えていますか?
CV : 僕はケンパーを持ってヴァン・ヘイレンの最初の2枚のアルバムがレコーディングされたSunset Soundのスタジオ2に行き、自分が所有する28台のアンプをプロファイリングしたんだ。それぞれのアンプについて、5種類の異なるマイクを使って収録したよ。「Carl Verheyen Vintage Amp Collection」としてSweetwaterから販売されていて、僕自身も特にデモ音源を制作するときなどに使っているんだ。ただ、最も重要なギターパートには、ある程度の「空気感」が必要だと今でも考えている。つまり、音響の素晴らしい部屋でマイクを使って録音することだね。どんなデジタルモデラーでも、音響的に調整されたスタジオ環境の中で生まれる音の変化や響きを再現することはできないと思うよ。
MM : 今後数か月の活動予定について教えてください。Carl Verheyen Bandとしての活動をはじめ、その他の音楽活動についてもお聞かせいただけますか?
CV : 11月は、別のアーティストのプロデュースをするためにスタジオに入る予定なんだ。お気に入りのスタジオのひとつであるSunset Soundのスタジオ2を使うので、その機会に自分の新曲のベースとドラムも録音しておこうと思っているよ。今のところ、新しいアルバムを制作する予定はないけれど、インスピレーションが湧いたときには、形にして残しておくのがいいからね。今はドイツのハンブルクにいて、ツアー中なんだ。フランスからスタートして、オランダ、ベルギー、イタリアを回り、来週は再びフランスに戻る予定だよ。
MM : 最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
CV : 僕たちは本当に日本に行きたいと思っているし、そのことについてはいつも話しているんだ! いつか必ず実現するよ。約束する!

Carl Verheyen Band / Promised Future
1. Every 20 Seconds
2. Promised Future
3. Shallow Harbor
4. Survive
5. Take the Long Way Home
6. Hippie Wedding
7. Hippie Reception
8. Dark Angels
9. Light Shine

