Vol.154 Simon McBride / September 2026

Simon McBride

2022年にディープ・パープルへ正式加入して以来、バンドの新たなギタリストとして独自の存在感を放っているサイモン・マクブライド。バンドは2024年に発表されたスタジオ・アルバム『=1』に続き、2026年には2作目となる『SPLAT!』をリリース。
『SPLAT!』では、イアン・ギラン、イアン・ペイス、ロジャー・グローヴァー、ドン・エイリー、サイモン・マクブライドの5人がスタジオでともに演奏し、直接アイデアを交わしながら楽曲が形にされており、ディープ・パープルならではの独特のケミストリーがより強く感じられる。また、このアルバムには、サイモンのギターとドン・エイリーのキーボードによるスリリングな掛け合いが楽しめる「Arrogant Boy」、Keith Urbanがゲスト参加した「Diablo」、キャッチーなリフと印象的でメロディアスなギター・ソロが魅力の「The Only Horse In Town」など、多彩な楽曲が収録されている。

今回のインタビューでサイモン・マクブライドは、『SPLAT!』の制作過程や各楽曲の背景、プロデューサーを務めたボブ・エズリンの役割、キース・アーバンとのコラボレーションについて語っている。また、スティーヴ・ルカサーやゲイリー・ムーアから受けた自身のプレイへの影響、自分自身の音楽的な「声」をどのように確立してきたのか、そして長く輝かしい歴史を持つディープ・パープルというバンドの一員として、いかに自分自身の個性やアイデンティティを音楽に反映させているのかについても語ってくれた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama

Muse On Muse (以下MM) : (2026年)4月にはディープ・パープルとしては17回目、あなたにとっては2回目となる来日公演が行われました。今回の来日で特に印象に残った出来事や思い出についてお聞かせください。
Simon McBride (以下SM) : 僕はいつも日本を楽しんでいるよ。日本の人々はとても親切だし、何事も効率的だよね。食べ物も大好きだ。それに、今回は日本の首相にも会ったんだ。彼女もディープ・パープルのファンだから、すごく嬉しかったよ。

MM : それではあなたがバンドに加入してから2作目となるスタジオアルバム『SPLAT!』についてお話しさせてください。『=1』で築かれたバンドのケミストリーが、今作ではさらに深まったように感じます。今回のアルバムでバンドとして目指したものについて教えてください。
SM : 実はこのアルバムについて何か明確な目標を設定していたわけではないんだ。「今回はヘヴィなアルバムを作ろう」とか、「こういうタイプのアルバムにしよう」なんていう会議をしたわけでもない。ただ部屋に集まって、昔ながらのやり方で、あるべきように演奏し始めたんだ。
5人が一つの部屋に集まって一緒に演奏すると、そこには独特のケミストリーが生まれる。お互いに一緒に演奏する時間が長くなればなるほど、相手に対してリラックスして演奏できるようになる。それが僕たちがアイデアをもう少し大胆に試せることにつながっているんだと思う。

MM : アルバムタイトルを『SPLAT!』とした理由を教えてください。
SM : もっと正確な答えが欲しいなら、イアン・ギランに聞いたほうがいいね。これは彼のアイデアだから。基本的には、ハエが車のフロントガラスにぶつかって「ベチャッ」と潰れるところを想像してみてほしい。それで、そのハエの現在の現実はそこで終わる。でも、その次に何が起こるのか? もっと良いことが起こるのか、それとも悪いことなのか。それは誰にも分からないよね。

MM : アルバムのジャケットやブックレットに描かれたアートワークについてはどのような意味が込められ、表現されているのでしょうか?
SM : 正直に言うと、グラフィック関連はすべて担当してくれるアート・イラストレーション会社があるんだ。彼らは歌詞からインスピレーションを得て作品を作っている。僕自身は、そういう部分にはあまり深く関わっていないんだ。

MM : アルバム収録曲は全てバンドのメンバー全員がソングライターとしてクレジットされています。今作も前作同様、ジャムセッションを出発点に曲の形にまとめ上げていったのでしょうか?
SM : そうだね。音楽というものは、すべてジャム・セッションから始まるんだ。そこから少しずつ手を加えたり、変化させたりして、最終的に1曲の形になっていく。

MM : 今作でもプロデューサーはボブ・エイズリンが手掛けており、前作『=1』に関するMUSE ON MUSEへのインタビューにおいてあなたは「彼が僕たちのアイディアを取り入れて、スタジオで音楽に息を吹き込む方法を見るのは本当に勉強になった。」と話してくれました。今作における彼の貢献についてお聞かせください。
SM :特定の曲については思い出せないんだけど、僕たちは軍隊のようなもので、ボブが将軍なんだ。彼は僕たちをちゃんと一つにまとめてくれるし、どういうわけか僕たちの狂気を理解して形にしてくれる。彼は素晴らしいプロデューサーだし、一緒に仕事をするのも本当に楽しいよ。

MM : 「Arrogant Boy」では、ドン・エイリーのキーボードとあなたのギターによる素晴らしい掛け合いが聴けます。この曲が最初のアイデアから完成したレコーディングへと、どのように発展していったのか教えてください。
SM : この曲は、僕がライヴでやっているギター・ソロのパートから始まったんだ。速いオルタネイト・ピッキングを使ったフレーズがあるんだけど、それがきっかけだった。だから、みんなで演奏し始めたら、すごく早く曲の形になったんだ。それぞれのパートも簡単に出てきた。曲というのは、時には本当にあっという間にできるものなんだよ。最初は、この曲がシングルになるなんてまったく思っていなかった。でもギランがボーカルを入れたら、シングルにするのは簡単な決断だったね。

MM : 「Diablo」にはキース・アーバンがギターでゲスト参加しています。彼がこの曲に参加することになった経緯を教えてください。
SM : キースが僕たちのレコーディング・スタジオを所有しているんだ。それでボブと僕で話をして、「キースにどれか1曲で演奏してもらったら面白いんじゃないか」と考えた。彼は素晴らしいプレイヤーだからね。だったら、ぜひやってもらおうということになったんだ。

MM : 「Diablo」のソロ・パートは、ドン・エイリーからあなた、そしてあなたからキース・アーバンへとソロを受け渡していく構成になっています。これは最初から意図していたアレンジだったのでしょうか?
SM : そうだよ。スティーヴ・ルカサーの最初のソロ・アルバムで、スティーヴ・ルカサーとスティーヴ・スティーヴンス、そしてヤン・ハマーの3人によるソロの掛け合いがあったのを覚えている。それを聴いて、「これは面白いアイデアだな」と思ったんだ。そして実際にやってみたら、すごくうまくいったよ。

MM : 今回のキース・アーバンとの共演で印象に残っていることを教えてください。
SM : キースは本当にいい人だよ。とても一緒に仕事がしやすいし、ユーモアのセンスも素晴らしかったね。

MM : 「The Only Horse In Town」は、ギターとキーボードによるキャッチーなリフ、そしてコンパクトながら非常にメロディアスなギター・ソロが印象的です。この曲について教えてください。
SM : 最初にイアン・ペイスがドンのところへ歩いていって、「1位になる曲を書いてくれよ」と冗談半分に言ったんだ。するとドンがすぐにあのフレーズを弾き始めた。それをもとに曲としてまとめていったんだ。ソロの部分はドンが弾いていたフレーズに僕が合わせて演奏したんだけど、そこからさらに発展させていったんだ。

MM : 「Third Call」、「Jessica’s Bra」、「The Rider」といった曲のギター・ソロでは、とても表現力豊かなフレージングが聴けます。以前のインタビューでは、スティーヴ・ルカサーやゲイリー・ムーアからの影響について語っていました。現在では独自のスタイルを確立されていますが、自らの「音楽的な声」をどのように見つけ、育ててきたのでしょうか?
SM : それは、僕にはなかなか答えられない質問だね。どんなミュージシャンも、自分がどうやって自分自身のスタイルを身につけたのかを説明することはできないと思う。僕たちはみんな、長年にわたって受けてきた影響や経験によって形作られた存在なんだよ。

MM : 「Guilt Trippin’」、「SPLAT!」、「The Lunatic」などは、力強くグルーヴ感のあるリフが印象的です。ディープ・パープルではギター、キーボード、ベースがそれぞれ重要な役割を担ってリフを作り上げています。あなた自身はどのようにリフを作っていくのでしょうか。
SM : 僕が最高のリフを思いつくのは、たいていギターを手に取った瞬間なんだ。最初に弾いたものが、そのまま最高のリフになることが多い。大切なのは、何かを書こうとして考えすぎないこと。ただ演奏するんだ。そして新しいことを試すのを恐れないこと。失敗することも怖がってはいけない。なぜなら、たいていの場合、その「失敗」から生まれたものが最高のリフになるからね。

MM : 今回のアルバムでメインに使用したギター、アンプ、ペダルについて教えてください。
SM : シンプルだよ。レコーディングでもライヴと同じ機材を使っている。Englのカスタム・ヘッドと4×12キャビネットをステレオで使っているんだ。ペダルもいくつか使っているけど、このアルバムではそれほど多くない。主にリバーブとディレイで、そこにOctaviaファズやフェイザーなどを少し加えている。ギターはアルバム全体を通して1本だけ使った。PRS Guitarsのプロトタイプで、ネックにトラスロッドが入っていないモデルなんだ。これが音色とサステインに大きな違いをもたらしている。

MM : ディープ・パープルは非常に長い歴史と偉大なレガシーを持つバンドです。そのギタリストとして、そうした歴史を尊重しながら、自分自身の音楽的な個性やパーソナリティをバンドのサウンドにどのように取り入れていますか?
SM : ライヴで演奏する曲の中には、当然ながら必ず演奏しなければならない部分がある。一方で、少し自分らしく変えられる部分もある。でも、全体として僕のサウンドはそこにしっかり出ているよ。僕はいつだって自分らしい音になる。自分自身でいなければ、うまくいかないからね。

MM : バンドの今後の予定について教えてください。日本のファンは、今作『SPLAT!』を携えた再来日を楽しみにしています。
SM : 今年はツアーで非常に忙しいんだ。来年については、まだ分からない。おそらくもう少しツアーをすると思うけど、それほど多くはないだろうね。もし2028年あたりに日本へ戻ってくる機会があれば、もちろん行くよ。

MM : あなたは長年にわたり第一線で活躍されていますが、現在のギタープレイにおいて最も大切にしていることは何でしょうか。また、若いギタリストへ伝えたいことがあれば教えてください。
SM : 僕のプレイで最も大切なのは、メロディだと思う。いつも、歌手のようにメロディックに弾くことを心掛けている。その中に少しだけ派手な要素を入れるんだ。あまりにもテクニカルで派手なことばかり弾いてしまうと、オーディエンスには伝わらない。ギタリストへのアドバイスは、常に「曲」を第一に考えること。そして自分自身にこう問いかけてほしい。「この曲にソロは必要なのか?」と。もし必要なら、「100万音符も弾く必要があるのか、それとも2音で十分なのか?」と考えてみるといい。


Deep Purple / Splat!

01.Arrogant Boy
02.Diablo
03.The Rider
04.The Lunatic
05.The Only Horse In Town
06.Sacred Land
07.The Beating Of Wings
08.Guilt Trippin’
09.Scriblin’ Gib’rish
10.Jessica’s Bra
11.Third Call
12.My New Movie
13.Splat!