Vol.76 Vivian Campbell / August 2017

Vivian Campbell

ヘヴィ・メタル、ハードロック界の伝説であるDIO、WHITESNAKEにおいてギター・ヒーローとしての輝かしいキャリアを培い、そして現在は世界的な人気バンド Def Leppardのメンバーであるギタリスト、ヴィヴィアン・キャンベルが参加しているRiverdogsが6年ぶり4作目のスタジオ・アルバム「California」をリリースした。
洗練されたハードロックとブルースのスタイルが絶妙に融合したRiverdogsのデビュー作品「Riverdogs」は名盤として今でもファンに根強く支持されている。当時のレコーディングメンバーが再び集った今作「California」もヴィヴィアンによるエモーショナルかつドライヴィングなギターとロブ・ラモスのソウルフルな歌声によるフックの効いた良質な楽曲揃いの充実したロック・アルバムとなっている。
最新作「California」のことや今後のプランについてヴィヴィアンに訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)

Muse On Muse (以下MM) : 新作「CALIFORNIA」は、あなたのエモーショナルかつドライヴィングなギターとロブのソウルフルな歌声による充実した楽曲揃いの素晴らしいアルバムとなっています。再び1stアルバムのレコーディングメンバーが集い今作を制作することに至った経緯を教えて下さい。
Vivian Campbell (以下VC) : 2016年にLast In Lineのアルバム「Heavy Crown」をリリースした数ヶ月後にFrontiers Recordsから連絡があって新しいRiverdogsの作品を出してみないかという打診をされたんだ。1990年にリリースされたRiverdogsのデビュー・アルバムと同じようなスピリットやスタイルの作品にするという話で合意した。ロブ、ニック、マークとはRiverdogs以降もずっと仲良くしていたので、また一緒にアルバムを作れるということに対してみんな喜んでいたよ。

MM : このアルバムではどういったことを目指しましたか?
VC : デビュー・アルバムの音やスタイルになるべく忠実な作品を作ることが目標だった。当時と同じレコーディング機材を使う等、目標を達成するためにありとあらゆることをしたよ。でも、最も力を入れたのはやはり曲作りと実際のパフォーマンスだ。デビュー当時と同じ方法で作品を作るという考え方を念頭に置くことで、レコーディングにおける勢いや集中力、姿勢を保つことができた。

MM : アルバムのタイトルを「CALIFORNIA」とした背景をお聞かせ下さい。
VC : 「California」で使われている歌詞の多くはデビュー作の歌詞や物語の延長線上にあると考えてもらっていいだろう。そういった意味で「California」はコンセプト・アルバムでもある訳だ。勿論、それだけではない。1988〜1990年に南カリフォルニアでメンバー同士が出会った頃の話にも触れているので、実際に地理的な重要性の意味合いも含まれている。メンバー4人が南カリフォルニアで人生の大半を過ごしていたり、働いていたりしているので、我々にとってはとても大きな意味を持つ場所なんだ。

MM : 曲作りのプロセスについて教えて下さい。
VC : アルバム制作にかける予算があまりなかったので、作曲もレコーディングも急いで行わないといけない状況だった。自分とマークは今もロサンゼルスに住んでいるが、ロブとニックはもうロスには住んでいない。2人にはロスに来てもらい、曲作りを短時間で仕上げた。6日で12曲を書き上げたよ。今までバンドとして共にしてきた様々な経験、そして明確な方向性を最初から持って取り組んだことが短時間での作曲作業を可能にしてくれたと思っている。

MM : 今作ではNick Brophyがプロデュースやミックス等のエンジニアリングを手掛けていますが、彼に依頼することになった経緯をお聞かせ下さい。
VC : Nick Brophyは優れたエンジニア、そしてプロデューサーとして長年の経験を誇っている。彼以上にRiverdogsのサウンドを完璧に作れる人物は存在しない。彼はこのアルバムを作るために多くの時間と労力を費やしてくれた。

MM : “Revolution Stars Tonight”や”American Dream”ではZander Lamotheが共同作曲者にクレジットされています。
VC : ロブの子供たちはとても優秀なミュージシャンたちだ。作曲作業を行う際に事前に考えてあった曲のアイディアもあって、この2曲のアイディアはロブと彼の息子のザンダーが考えたものだ。残念ながらメンバーで行った作曲作業にザンダーは参加できなかったけどね。

MM : ギタリストが二人いるデフ・レパードではフィルとあなたできっちりと役割分担されていますが、ギタリストが一人であるRiverdogsにおける今作では自由奔放にギターを歌わせ、弾き倒しているあなたの魅力が全開です。あなた自身はどのように感じているのでしょうか?
VC : Def Leppardでは自分のギタリストとしての役割がかなり限られている。そもそもバンドもアグレッシヴに弾き倒すギター・プレイに重点をあまり置いていない。更にフィルとギターパートを分けているからね。でもRiverdogsやLast In Lineではギタリストが自分1人しかいないので、ナチュラルに弾き倒す余地もある訳だ。Def Leppardのメンバーとして最も苦労しているのはむしろヴォーカル・パートだ。バンドの特徴でもあるヴォーカル・サウンドやスタイルを実現するためにメンバーはかなり努力している。一方、ギター・プレイに関してはRiverdogsやLast In Lineに比べて控え目だ。

MM : 最初にも述べましたが、アルバムでは全編に渡ってあなたのフックが効いたエモーショナルなギターや疾走感溢れるドライヴィングなギターを聴くことができます。どの曲も素晴らしい中、選び出すのは難しいとは思いますが、あなたにとって特に印象深い曲を挙げていただけますか?
VC : アルバム全体の出来に関してとても満足しているし、自分のギター・プレイにも満足しているよ。だから印象的な曲を選ぶのは難しいね。”The Heart Is A Mindless Bird”や”Searching For A Signal”はプレイ・スタイルの幅を広げることができたという意味ではギタリストとしてよかったと思っている。あと、”I Don’t Know Anything”のようなロブの歌声と歌詞がとても美しい楽曲でギターを弾けるのも同様に嬉しいよ。

MM : 楽曲の魅力を引き出す上でのギターの音作り、プレイ面であなたが心掛けて取り組んでいることについて詳しく教えて下さい。
VC : 「California」をレコーディングするにあたり、明確な方向性があった。忠実にオリジナルのRiverdogsのサウンドを作り出すことだ。これを実現するために当時と同じギターやアンプを使うようにした。でも、機材以上に大切なのはパフォーマンスの裏に存在する意図だ。今までに多くの偉大なギタリストから様々なことを学んだが、最も影響力があったのはゲイリー・ムーアだろう。彼の素晴らしいところは、全ての音符を100%の勢いと信念を持って弾いていたところだ。自分も同じような気持ちを全ての音符に込めようと努力している。ギター・プレイというのは機械的な運動以上にとても奥が深い。真のミュージシャンになるためにはエモーショナルな部分を追求する必要もある。

MM : アルバムで使用したギター、アンプ、ペダル類について教えて下さい。
VC : Riverdogsのデビュー・アルバムで使った時と同じアンプやギターを使用した。ただ、1990年当時はエンドースの関係でTom Andersonのカスタム・ストラトキャスターだけを使っていた。今はLes Paulをエンドースしているので、「California」は9割レスポールで弾いて、音に変化を出したい時だけTom Andersonを弾いた。その他にはYamahaのホロウボディ(D1500)を何ヶ所かで使ったのと、1966年製のテレキャスも使った。アンプ類に関してはカスタムのSoldano、Randallのチューブ・アンプ、Matchless Clubman 35、それとBognorにモディファイしたMarshall JCM800を使った。このJCM800はSweet Savageや初期Dioで使用していたものだ。使用したペダル類はDunlopのJimi Hendrix Wahのみだ。

MM : ホワイトスネイク脱退後にあなたが手掛けたRiverdogsの1stアルバムは、洗練されたハード・ロックにブルース・テイストが融合した名盤であり、いまだにファンから根強く支持されている作品です。このアルバムを制作していた当時の心境や今振り返ってみたこのアルバムの印象をお聞かせ下さい。
VC : 当時、メンバーは全員アルバムをとても誇りに思っていた。しかし、リリースと同時にレーベルから発売以降はサポートしないという通告を受けて胸が張り裂けそうになったね。あの判断の裏にあった政治的な理由については今も理解することができないけど、あれから何年も経って今も世界中で多くのファンに支持されたことで報われた感はあるよね。あの頃の自分たちが作れるベストの作品を作ったという自負はあるし、商業的に成功しなかったことが芸術的な価値に比例していないと信じている。

MM : あなたはDIOでのデビュー以来、ギターヒーローとしてギターキッズの憧れでもあり続けました。昨今のギタリストには奏法上のテクニック的には超絶を極める人達が数多くいますが、ギターヒーローはなかなか現れていないように見受けられます。この点についてあなたはどのように考えますか?
VC : 楽器をマスターするということは、テクニックを学ぶことだけでなく、いかに楽器を通じて自分自信を映し出すかというところも重要だ。自分のギター・スタイルは自らの欠点によって形が出来上がっていったと思っているよ。僕は元々独学でギターを学んだこともあって、弾けるようになるためにはギターという楽器の様々な要素を分解してひとつひとつ覚える必要があった。このプロセスがあったからこそ、プレイヤーがいかに楽器を通じて自分自身を映し出して個性的なサウンドを奏でるかが理解できるようになったのさ。

MM : デフ・レパードでは通算4作目「HYSTERIA」の30周年記念盤がリリースされます。「HYSTERIA」、そしてスティーヴ・クラークに対するあなたの想いをお聞かせ下さい。
VC : スティーヴに関しては、彼が生前に活動していた頃から憧れの存在だった。自分がDef Leppardに加入してから25年が経ち、彼に対するリスペクトの気持ちは更に大きくなっていった。スティーヴは素晴らしいリフを沢山作ったし、とても独創的でクリエイティヴなギタリストだった。彼のリード・ギターも楽曲の重要なテーマを担っていた。「Hysteria」は今でもDef Leppardのショウにおいて最も重要な部分となっている。それは、「Hysteria」がいかに奥が深くてクオリティが高かったかという証拠でもある。「Hysteria」という作品はバンドの歴史の中で最も重要な作品であり、スティーヴがその作品に提供したものは計り知れないよ。

MM : 今後の予定について教えて下さい。
VC : 9月にはDef Leppardと南米をツアーする。その前にLast In Lineとアメリカやヨーロッパの夏フェスに出演する予定だ。9月にはLast In Lineのセカンド・アルバムの制作を開始する。2018年の春にはリリースしたいと思っているよ。Riverdogsに関しては12月に南カリフォルニアでライヴを行う話を進めているところだが、それ以降はRiverdogsのツアーは予定していない。

MM : ファンへのメッセージをお願いします。
VC : Riverdogsをはじめ、Last In Line、Def Leppard、そして僕が参加した様々なプロジェクトをずっと信じて応援し続けてくれて本当にありがとう。日本という場所、そして日本の人々は自分にとっていつまでも特別な存在だよ!

Riverdogs official site : http://www.riverdogsmusic.com/
Riverdogs facebook : https://www.facebook.com/riverdogsband/
Riverdogs twitter : https://twitter.com/RiverdogsBand/
Riverdogs instagram : https://www.instagram.com/riverdogsofficial/


Riverdogs / California
CD GQCS-90368 / ¥2,700 (税込) WARD RECORDS
日本盤限定ボーナストラック収録 /日本語解説書封入/歌詞対訳付き

01. American Dream
02. The RevoluQon Starts Tonight
03. Something Inside
04. Golden Glow
05. You’re Too Rock And Roll
06. The Heart Is A Mindless Bird
07. Searching For A Signal
08. Welcome To The New Disaster
09. Ten Thousand Reasons
10. Catalina
11. I Don’t Know Anything
12. When The Mic Drops (Japanese Exclusive Bonus Track)