Vol.44 Eric Johnson & Mike Stern / February 2015

Eric Johnson & Mike Stern


Photo by Max Crace

Eric Johnson (エリック・ジョンソン) と Mike Stern (マイク・スターン) は多くのギタリスト達が羨望するであろうその音楽的な才能とオリジナリティを有するトップ・アーティストである。そんな二人が創り上げたアルバム「ECLECTIC」に多くの音楽ファンが魅了されている。この作品では彼等二人のトップ・ギタリストとしてのプレイ面における充実度はいうまでもなく、彼等が創り出してきた素晴らしい楽曲の数々にアーティストとしての総合力の凄さをあらためて実感させられる。エリックとマイクにアルバム「ECLECTIC」について訊いた。


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Interview / Text  Mamoru Moriyama

Translation         Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)

 

Muse On Muse (以下MM) : 「ECLECTIC」はギターファンのみならず、幅広い音楽ファンに受け入れられる聴いていてとても心地良い曲が揃った素晴らしい作品ですが、今作品を作る上でコンセプトはありましたか?
Mike Stern (以下MS) : 2人で集まってお互いの音楽を演奏しようというのがコンセプトだった。自分の楽曲とEricの楽曲を一緒に演奏するということだ。この2人が集まってプレイするだけで、既にeclectic(様々な異なる要素を含んでいる)だと思ったので、そのままタイトルに使った訳だ。アルバムを作る作業はとても楽しかったよ。
Eric Johnson (以下EJ) : ともかく自由に、そして自然発生的なプレイをするというのがコンセプトだった。参加しているミュージシャン全員にクリエイティブなスペースを与えたかった。その中でライヴなパフォーマンスを残したかった。

MM : 会場でライヴの様子を収録するライヴ盤のアルバムや映像のリリースは考えなかったのでしょうか?
EJ : 現時点で予定は無いよ。
MS : 現時点で予定は無いが、どうなるかは分からないね。

MM : アルバムにはお二人の既存の楽曲とカヴァー曲、そして新曲が加えられた構成となっていますが収録曲はどのような観点で選定したのでしょうか?
MS : お互いに本能だけを頼りに色々なことを試し、その結果上手くいったという感じだ。
EJ : まずは時間が許す限りなるべく多くの新曲を書けるように頑張ったよ。新たに作った新曲以外にアルバムの雰囲気に合いそうな古い楽曲をいくつかセレクトしてアレンジし直した。

MM : レコーディングは3日間で行われたそうですが、どのように進められたのでしょうか?レコーディングプロセスについて詳しくお聞かせ下さい。
MS : 以前、(Ericと)一緒にツアーをしているし、初めて共演するという訳でもなかったので、なるべく二人のサウンドをライヴな形で残し、最小限の加工処理で収めたかったことから、短時間でレコーディングを行うことにした。楽曲はある程度事前にレコーディングを済ませた状態にしておいて、リズム・パート等を後から足すようにした。部分的に直したりしたら次の曲の作業へと移る。とてもスピーディで自然発生的な作業だったよ。
EJ : レコーディングはテキサス州オースティンで行われた。ひとつの大きな部屋でレコーディング作業を全て行った。必要な部分だけを直し、オーバーダヴも必要最低限におさえるやり方で作品を仕上げた。

MM : 自らの作品の制作でレコーディングする場合と今回「ECLECTIC」を共同で制作する場合とでは何か違いはありましたか?
MS : 様々な意味でも、レコーディング自体は自分の今までの作品と非常に似ていたと言える。ただ、ここ最近の自分の作品では多くのゲストが参加していた。それに対して、今回のレコーディングはひとつのバンドでレコーディングを行ったところが大きな違いと言える。
EJ : いつもとは異なるスタイルやアイデアを受け入れるスペースが必要になるのは普段の自分のレコーディングとは違う部分だね。そういった異なる要素が作り出すエネルギーやパフォーマンスを自分のプレイと融合させることによって、普段自分の作品を作る時とは別の着地点へと導いてもらえる。

MM : マイクのアルバム「Who Let the Cats Out」に収録されている”ROLL WITH IT”が新たにボーカルが入った形で今回収録されています。元々からボーカルソングであったかのように自然でクールな仕上がりとなっていますが、曲にボーカルを入れようと思った背景についてお聞かせ下さい。
MS : まさにその通りなんだ!ボーカルソングにぴったりの曲だから今回はこのように新しくレコーディングし直したのさ。初めてアルバムに入る曲の歌詞を書いたよ。Malford Milliganも素晴らしいパフォーマンスを聴かせてくれている。

MM : “WHENEVER YOU GO”ではミステリアスな雰囲気のイントロ、その後に続く曲の美しさが秀逸ですがこの曲が出来た経緯について教えて下さい。
MS : だいぶ前に書いた曲で、ずっとレコーディングする機会がなかったんだ。今回のアルバム・レコーディングがこの曲を録音するいい機会になると思ってやってみたのさ。


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MM : “SOMETIMES”でもマイクが創った心安らぐような曲にエリックの美しいギターが絡んだ絶妙のコンビネーションを聴くことが出来ます。この曲について説明を頂けますか?
MS : この曲はEricを念頭に置きながら書いた一曲だ。ともかくEricの全てを思い浮かべながら書いた。彼はともかく素晴らしいミュージシャンなんだ。彼にはソロを弾く能力だけでなく、どんなジャンルであっても楽曲を引き立たせるセンスを持ち合わせている。

MM : “Benny Man’s Blues”は軽快なスウィング感が印象的な曲ですね。
EJ : アルバム用にアップテンポのブルース曲が欲しいと思っていたんだ。1930年代〜40年代のBenny Goodman Sextetを彷彿とされるようなスウィング系のブルースがアルバムにマッチすると思ってね。

MM : “Hullabaloo”では曲が持つキャッチーなメロディーとホーンセクションが印象的です。
EJ : 60年代のテレビ番組のテーマ曲のような雰囲気を持った楽しい曲だ。ベーシストのChris Mareshがホーンセクションのパートを書いて、そしてアレンジしてくれた。

MM : あなた達は曲において多彩なコードワークを聴かせてくれます。お互いが一緒に曲をプレイする上でバッキングにおいて二人のプレイが被らないようにする為にどういった点に配慮していますか? ギターのサウンド面やコード中のノートの選択、リズム面での工夫などをお聞かせ下さい。
MS : 時には耳で本能的に(相手の)音を聴くこともあったよ。Ericはどういった音や音符を選ぶか、そしていつどのようにしてそれを弾くかというセンスにとても優れているプレイヤーだ。
EJ : ともかく音をよく聴かないといけない。相手のソロ奏者が演奏している時はそのプレイヤーをサポートすることに徹しないといけない。時には静かにプレイして相手の邪魔にならないようにしないといけない。相手の音の選び方に注意を払うのも重要だ。

MM : ライヴやアルバム制作において自分が作った曲に対して相手がギターソロやバッキングを弾くのを聴いて、そのアプローチ方法やフレーズライン等に対してどのように感じましたか? 新しい発見等はありましたか?
EJ : 勿論、あるさ!Mikeは楽曲にとてもディープで面白いアイデアを加えてくれる。いつも勉強になるよ。
MS : こういった作業はいつも楽しいと思っているよ。でも、相手がEricとなると特別に楽しいね。

MM : あなた達はトップギタリストであると共に優れたソングライターでもあります。ソングライティングの観点で影響を受けたアーティストを教えて下さい。彼等からはどのような点で影響を受けましたか?
EJ : ソングライターとして影響を受けたのはJoni Mitchell, Simon & Garfunkel, Beatles, Stevie Wonder, Jimi Hendrix, Aaron Copeland等だ。
MS : 数多くのアーティストから影響を受けているので、説明するのは難しいけど・・・今、パッと思いつくのは、ビーバッブ系ではCharlie Parker、ソウル系だったらCurtis Mayfield、クラシックならバッハだね。ともかく沢山の音楽家や音楽に影響を受けた。Ericの楽曲も大好きだ。彼の曲は記憶に残る曲が多い。一度聴いただけで頭に残る曲は大好きだよ。

MM : あなた達の曲作りにおいてその曲のKeyを決める場合、歌が入る曲では声域に合わせたKeyの曲になると思いますが声域といった制約が無いインストゥルメンタルの曲でのKeyはどういった基準で決めているのでしょうか? 例えば、同じマイナーの曲でも、EmやAmやGm・・といった様々な候補の中からどのように選んでいるのでしょうか?
MS : いい質問だね!何故なら、私にはその答えが分からないからだ!場合によって、ある特定のKeyでメロディーを弾いた方がギターが良く聴こえることもある。他の楽器の曲を書いている時は、その楽器のレンジのことも考えないといけない。
EJ : それぞれのKeyには異なる雰囲気がある。それに、ギター構造の機械的要素や物理的要素によって影響されることもある。


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MM : 曲作りにおいて思いついたアイデアや曲はどのようにストックしているのでしょうか?(テープ、譜面、DAWなど)普段どのようにして曲作りしているのか詳しくお聞かせ下さい。
MS : いつもは譜面を書いているよ。鉛筆と消しゴムを使って昔ながらのやり方でやっているよ。
EJ : 普段はメモ書きをしたり、譜面を書いたり、デモをレコーディングするといった方法でやっている。

MM : 今回の作品で使用したギター、アンプ、ペダル類について教えて下さい。
MS : コーラス・サウンドにはYAMAHA SPX 90を使っている。それにBOSSのスーパー・オーバードライブとディレイも使っている。アンプはFender Twin Reverb 65 Reissue Blackfaceを使った。
EJ : クリーン・トーン用にDeluxe Reverb、クランチ系のリズム・ギターにはFulton Webb 18W、リードにはMarshall 50W、その他にFuzz Face、TC Chorus、BK Tube Driverも使っている。アルバムの全ての曲を1950年式ストラトキャスターとシグネイチャー・ストラトキャスターを使ってレコーディングした。ただし、”Tidal”ではES175、”Red House”ではES335をそれぞれ使っている。

MM : あなた達は既にオリジナリティに溢れたギターサウンドが確立していますが、今でもアンプやペダル類の新しい製品を試したりしていますか? 最近は高度にアンプがモデリングされた機材も出ていますが、それらについてはどう感じていますか?
EJ : 僕は使わないよ。Rolandから出ている最新のBlues Cubeは低価格でも質が良く、ギターを学んでいる初心者等には良いアンプだと思うね。
MS : 時々、新しいペダルを試すことはあるよ。でも、極力シンプルなままでやるようにしている。BOSSのペダルは大好きだね。もう何年も使っているよ。

MM : ツアーやアルバム制作を通じて間近でエリックを見続けているあなたからエリックの音楽、プレイスタイル、そして彼のギターサウンドについて紹介して頂けますか?
MS : Ericは素晴らしいサウンドの持ち主で、心の中からプレイをする素晴らしいプレイヤーだ。とてもソウルフルだね。ロック系も最高だし、ブルースも素晴らしい。でも、どんなジャンルを弾いても非常に繊細なミュージシャンだ。

MM : ツアーやアルバム制作を通じて間近でマイクを見続けているあなたからマイクの音楽、プレイスタイル、そして彼のギターサウンドについて紹介して頂けますか?
EJ : 彼はとてもダイナミックなプレイヤーだ。魂と感情に満ちたプレイをしてくれる。ハーモニーに関する知識も豊富で素晴らしいリズムの持ち主だ。素晴らしいソングライターでもある。

MM : 今後の予定をお聞かせ下さい。
EJ : 1月と2月にアメリカ西海岸のツアーをすることになっているよ。

MM : あなた達のように優れたアーティストになることを目指している人達へアドバイスをお願いします。
MS : 自分の経験からしか言うことはできないけど、自分はともかく沢山練習をして今でもそれを続けている。常に新しいことを学ぼうとしている。音楽は美しくも限界が無い。一番大切なのは心からプレイをすることだ。
EJ : コツコツと練習をしながら、自分に喜びと熱烈な興味を与えてくれる音楽スタイルを見つけることだ。自分を熱心にさせてくれる音楽、インスピレーションや喜びを与えてくれる音楽スタイルへと自分の軌道を向けて進み続ける努力をするのも重要だ。

Eric Johnson official site : http://www.ericjohnson.com/
Eric Johnson official Facebook : https://www.facebook.com/OfficialEricJohnson

Mike Stern official site : http://www.mikestern.org/
Mike Stern official Facebook : https://www.facebook.com/mikestern0

 


Eric Johnson Mike Stern / Eclectic

01 Roll With It
02 Remember
03 Benny Man’s Blues
04 Wishing Well
05 Big Foot (with Intro)
06 Tidal
07 You Never Know
08 Dry Ice
09 Sometimes
10 Hullabaloo
11 Wherever You Go (with Intro)
12 Red House
http://www.concordmusicgroup.com/