Corrado Rustici

イタリアン・プログレ黄金期の伝説、Cervelloがついに帰還、1973年の唯一作『Melos』で神話的名声を刻み、解散後も世界中のリスナーに愛され続けてきた彼らが、50年ぶりとなる新作『Chaire』をリリースした。Cervelloは1970年代初頭、イタリアのナポリで結成され、Premiata Forneria Marconi (PFM)、Banco del Mutuo Soccorsoと並び、イタリアン・プログレッシブ・ロック黄金期に独自の存在感を放っていた。1973年発表のデビュー作であり唯一のスタジオ作品である『Melos』は、いまなおイタリアン・プログレ屈指の名盤として語り継がれている。コラード・ルスティーチのプロデュースによる50年ぶりとなる本作は、1974〜83年に書かれた楽曲をオリジナル・メンバーが4年をかけて録音。さらに、2005年に他界したヴォーカリスト、ジャンルイジ・ディ・フランコの貴重な音源を最新技術で蘇らせ、その歌声を現代に再び響かせている。新作『Chaire』についてコラード・ルスティーチが語る。
Interview / Text Mamoru Moriyama
Translation Hiroshi Takakura
Muse On Muse (以下MM) : Cervelloとしてはデビューアルバムにして唯一のスタジオ・アルバム『Melos』からおよそ50年ぶりとなるスタジオ・アルバム『Chaire』がリリースされました。50年ぶりとなるこのタイミングでスタジオ・アルバムを制作することになった経緯をお聞かせ下さい。
Corrado Rustici (以下CR) : 2017年に東京で再集結して演奏したあと、僕がMelosの直後にジャンルイジと作っていた古い録音があるって事をメンバーに伝えたんだ。あれは本来次のアルバム用のアイデア群になるはずだった。そこから全てが動き出したって形だね。その録音を全部集めて肉付けしながら整理していった。聴き直してみるとアルバムとして成立するだけの良い素材が十分あると感じたし、以前に作ったアイデア達がようやく日の目を見ることになる良い機会だと思った。そもそも世に出るべきものだったからね。
MM : この作品のコンセプトについて教えて下さい。
CR : 考古学みたいに埋もれていたアイデアを発掘する、その発見自体がアルバムを作るのに十分な理由だった。ただこのアルバムは楽曲達を一本のコンセプトで統一しているわけではないんだ。
MM : 今作は1974年〜1983年に書かれた楽曲をもとに、オリジナル・メンバーが過去4年間をかけて丁寧にアレンジ・録音した作品とのことですが、2005年に他界したGianluigi Di Francoもリード・シンガーとしてこの作品の中で見事にその歌声を響かせ輝きを放っています。彼の歌声をどのようにして今作品に融合させたのでしょうか。
CR : 2年をかけてアイデアを再整理し、形を与えることでしっかりした音楽的な流れができた。次にぶつかったのが「誰がヴォーカルを歌うのか」という問題だった。このアルバムに関してラッキーだった点が主に二つあるんだ。一つ目は実際の作曲が1974〜83年に行われていて、素材の多くが1974年という早い段階から、いろんなフォーマットで録音されていたこと。ジャンルイジと僕は幾つかのアイデアをもう一度掘り起こし、メロディやハーモニーを変えながら録り直してもいた。これがすごく大きかった。今の自分には当時と同じやり方で曲を書くなんて想像できないからね。ミュージシャンとして僕は変わった。プロデューサーとしてもアレンジャーとしても今の方がずっと良くなったと思うし、昔と同じ型ではもう書けない。
二つ目は、ここ数年のテクノロジーの進歩だ。ジャンルイジのパフォーマンスを取り出して、声を再構築し、厚みを与え、ベーシック・トラックとほとんど同列に聴こえるところまで持っていけた。結果には本当に満足しているよ。
MM : 曲のアレンジやレコーディングはどのように進められたのでしょうか。1974年〜1983年に書かれた曲を現代にリリースするにあたり、心がけたこと等はありましたか。
CR : 特別に“これ”というのはないんだけど、オリジナルのアイデアが持っていた純度をなるべく保ちながら、正しい音像の中に置いてあげること。それだけを考えたよ。
MM : アルバムに収録されている各曲について解説をお願い出来るでしょうか?曲が生まれるまでの経緯や曲に込められた思い等をお聞かせ下さい。
CR :
Chaire – Hallo
この曲は元々、尺の長い一曲の中の一部分だった。後に二つに分けて片方はアルバムのオープニング、もう片方はクロージングになった。どちらも、ジャンルイジが僕のために書いたポエムの一部なんだ。歌詞はとても夢幻的でシュールで、イメージを通して自己表現する彼の好みがよく出ている。
僕がその長い詩に曲を付けて、アントニオとジウリオの助けも借りながら、美しい音楽を作り上げた。この曲に関しては2つに分割した方が活きると感じてそうしたんだ。
Templi Acherontei
この曲は最初からメロディと歌詞がかなり明確だった。最初のパートは当時のデモ録音の時点でほぼ出来上がっていたね。二つ目のパートはもう少しアレンジの工夫が必要で、手元に残っていたのは、あくまでも後でバンドメンバーとアイデアを広げていくためのメモとして録っておいたギターリフだけだった。それを実際に広げたのは約50年後になってしまったね。
La Seduzione di Chiaro Ulivo
これも大半は1974年に書かれた曲だね。追加でアレンジしたのは曲中のインストの中間部だけで、それは元々は別の曲として書いたパートだった。でも結果的にこの曲と完璧に噛み合ったんだ。
Reina de Roca
これはルイージが彼の故郷のカプリ島について書いた曲だ。島への愛が語られていて、子どもの頃の記憶、島を走り回り、魔法みたいに美しい場所を楽しみ成長した日々が描かれている。この曲は歌詞もメロディもいくつかのバージョンがあった。全て使うと曲が長くなりすぎてしまうから、どの歌詞を残すか選ばなきゃいけなかったけど、すごく良い形に収まったと思う。Luigiの島への愛情がしっかり伝わってくる。タイトルは、ジャンルイジが愛していた、パブロ・ネルーダによる島の呼び名がヒントになったんじゃないかな。
Movalaide
これも初期に録った作品の一つで、アイデアを発展させてさらにジャンルイジの別のメロディとミックスさせたんだ。最後は「Trasfigurazione」で締める。これは特に大胆な曲で主にアントニオのアイデアを元に全員でアレンジしたよ。
La Danza dei Guardiani
この曲は特に面白くて、元のアイデアは1973年のPomigliano D’Arcoでのライヴ中の即興から生まれたんだ。そのライブでは、オリジナルドラマーのレミジオ・エスポジトが演奏中にスネアのヘッドを破ってしまって、交換する間、僕らは観客を飽きさせないように演奏を続ける必要があった。その10〜15分の即興演奏からすごく魅力的なコード進行が出てきて、僕らはそのアイデアを気に入って仮に「Bolero」と呼ぶようになって、のちに新作のためにしっかり肉付けをすることになった。『Chaire』の中でも特にお気に入りの一曲だね。
Chaire – Farewell
Chaire – Halloについての説明で話したとおりだ。
MM : Cervelloの作品と自身のソロ作品、それぞれについて曲に対するギターのアプローチはどのようにお考えでしょうか。
CR : まったく別物だよ。50年以上の間にギタリストとしても、ミュージシャンとしても、人間としても大きく変わった。2017年の東京公演のために『Melos』のパートを練習し直した時、それを痛感したね。あの弾き方をするのは本当に久々だったから。1973年の僕は17歳で情熱はあったけど知識は限られていた。でも当時の自分の演奏を聴くのは好きなんだ。音楽的な問題に対していろんな創造的アプローチをしているのを感じることができる。とはいえ、今の僕は17歳の時と同じようには書かないし弾かない。少しは成長してるといいけどね。
MM : 今作で使用しているギター、アンプ、エフェクター、ペダルについて教えて下さい。
CR : 今作ではできるだけシンプルでベーシックなセットアップを試したんだ。『Melos』の自然な続編として成立するようにね。そしてギター・パートにおいて正しい音色を使いたかった。自分の記憶が正しければオリジナルのMesa Boogie Mark II、Ibanezのダブルネック・ギターを使って、ディレイとリヴァーブは主にプラグインだね。あと「Reina de Roca」のソロでは、自分のシグネチャー・ギターと、シグネチャーのSophiaペダルも使った。

Photo by Michele Piazza
MM : アルバムには『LIVE AT POMIGLIANO D’ARCO 1973』も収録されています。このライブについて教えて下さい。
CR : そう、これは『Melos』ツアー中に残された唯一のライヴ録音だね。演奏自体はかなり即興的で、フロントのサウンドエンジニアを手伝ってくれていた友人が2トラック・レコーダーも持っていて、ミキサーのアウトから直でレコーダーに録ったんだ(どのミキサーだったかは覚えてないけど)。その時はサウンドチェックもなかったね。
90年代にブートレグ化されてオンラインで馬鹿みたいな値段で売られていたらしい。€6,000とで売られているのを見たこともあるよ。今回ファンの人たちに、1973年の僕らの音楽がどう響いていたのかを感じてもらいたかった。そして長年追いかけてくれた人たちへのギフトとして、できる限り良い音に仕上げた。その公演はソールドアウトで、Rovescio della Medagliaとの共同ヘッドライナーだった。観客に向けて『Melos』の曲を演奏して、最高に楽しかったのを覚えているよ。
MM : 1973年のデビューアルバム『Melos』の最新リマスター盤も発売されます。この作品はイタリアン・プログレの名盤として今でも熱心なファンから強く支持されています。このことについてはどのように感じていますか。
CR : この50年間受けてきたサポートには本当に感謝しているし、皆が長く指示してくれて驚いてるよ。それが『Melos』をもう一度リマスターして出したかった一番の理由だよ。ファンのみんなへの贈り物としてね。
MM : 今後の予定について教えてください。
CR : 先のことはまだ分からないね。このアルバムに使わなかったアイデアも残っていて、いつか息を吹き返すのを待っている。ツアーや次のリリースを望む声もたくさん届いているしこれからどうなるか楽しみだよ。
MM : ファンへのメッセージをお願いします。
CR : ずっとサポートしてくれて、そして興味をずっと持ってくれて本当にありがとう。僕らはナポリの5人の子供で、何か違うことをやりたくて、世界で活躍すること、ずっと不可能と思ってた夢を追いかけたんだ。みんなの優しさがそれを可能にしてくれた。感謝してもしきれないよ。『Chaire』を楽しんでくれたら嬉しいし、SNSで感想も聞かせてほしい。ありがとう。

CERVELLO / Chaire + Live at Pomigliano D’Arco 1973
CHAIRE:
Chaire – Hallo
Templi Acherontei
La Seduzione di Chiaro Ulivo
Reina de Roca
Movalaide incl. Trasfigurazione
La Danza dei Guardiani
Chaire – Farewell
LIVE AT POMIGLIANO D’ARCO 1973:
Intro
Canto del Capro
Scinsione (T.R.M.)
Euterpe
Melos
Progressivo Remoto
Corrado Rustici – guitar, keyboards, vocals
Antonio Spagnolo – bass, acoustic guitar, recorder, vocals
Giulio D’Ambrosio – flute, saxophone, vocals
Gianluigi Di Franco – lead vocals
With Roberto Porta on drums.

