Vol.118 Stevie Salas / February 2021

Stevie Salas


Photo by Framus

B’zの稲葉浩志とのプロジェクト INABA/SALAS により日本の音楽ファンの間にも広く知られているスティーヴィー・サラスの書籍「スティーヴィー・サラス自伝 ギター弾きの最低で最高な人生」(リットーミュージック刊) が発売された。この本は、米国で2014年に出版されている「When We Were the Boys: Coming of Age on Rod Stewart’s Out of Order Tour」が和訳されたものであり、オーディションからツアーといったロッド・スチュワートとの活動時代についてスティーヴィー・サラスが詳細を語っており、サラスのファンにとってはもちろん、ロッド・スチュワートやロックファンにとっても興味深い内容となっている。
発売された書籍「スティーヴィー・サラス自伝 ギター弾きの最低で最高な人生」についてはもちろん、普段における曲作りのこと、日本国内にも素晴らしい楽曲を持つ優れたミュージシャン達がいるにも関わらず、ロックミュージックにおいては世界中の音楽ファンに知られる存在はまだ出てきていないように見受けられる状況についてどう感じるか・・など、スティヴィー・サラスに訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura


Photo by Framus

Muse On Muse (以下MM) : 相変らずコロナが世界中で猛威を振るっている昨今ですが、如何お過ごしでしょうか。
Stevie Salas (以下SS) : 俺と家族は元気にやってるよ。多分コロナには2020年の1月NAMM Showでライブした時にかかったんじゃないかと思ってる。日本には2019年の12月に1回、2020年に入って1月に2回、2月に1回、Koshiとレコーディングするために3月に1回とかなり高い頻度で来ていて、日本の人々がコロナウイルスに対して素晴らしい対応をしていたのに感銘を受けた。日本にいる時はとても安全だなと感じたよ。でも、チケットもソールドアウトになっていたINABA/SALASのMaximum Huavoツアーをキャンセルしなければならなかったのは、本当に辛かったね。

MM : 世界中を忙しく飛び回っていたあなたですからこの状況はかなりストレスに感じるのではないでしょうか。
SS : 俺も歳をとったし、ツアーに出れない事に関してや、そのストレスについてはそんなに心配してない。これは地球規模の問題だからどんな形でも良いから俺が何か協力できればと思っているよ。
残念だったのはINABA/SALASのツアーのチケットを買ってくれた9万人のファンがショーを見れなかったって事で、Koshiと日本をロックできなかったのは悲しいよ。彼とは曲を作るのもショーをやるのも本当に楽しいからね。

MM : 2014年に米国で出版されていたあなたの自伝「When We Were the Boys: Coming of Age on Rod Stewart’s Out of Order Tour」(邦題:スティーヴィー・サラス自伝 ギター弾きの最低で最高な人生)が日本でも発売されます。日本で発売されることとなった経緯についてお聞かせ下さい。
SS : これは自伝ではないんだ。自分の人生が大きく変わった1年についての本なんだ。1988年の当時、俺は通っていたサンディエゴ高校でのバンド THIS KIDSでしかバンド経験がなかったんだけど1年でロッド・スチュワートとスタジアムで演奏するところまで上り詰めた。1人の少年が音楽ビジネスでいきなり大きな事を成し遂げたんだよ。

MM : この本を通してどのようなことを読者に伝えたいですか?
SS : この本を書いている時に学んだ事は、人生のどんな問題も心配する必要ないって事だね。例えば俺が家無しになったって問題が起きた、でも家が無くてハリウッドのBaby Oスタジオのソファーに寝泊まりしてなければ俺がジョージ・クリントンに出会ってブレイクする事はなかったんだ。宿無しになったのは良い事ではなかったけど、俺の人生を変えてくれたんだ。

MM : あなたはロッド・スチュワートやミック・ジャガーといったロック界のレジェンド達の活動に参加してきました。今振り返ってみて、彼等に選ばれたいと願いそれに伴う実力を持つミュージシャンが数多くいた中、あなたが選ばれた理由は何だと思いますか?
SS : (笑) テレンス・トレント・ダービーやKoshi、スティーヴン・タイラー、バーナード・ファウラー、ミック・ジャガー、マイケル・ハッチェンス、ペリー・ファレル、ロッド・スチュワート達のような世界でも最高のミュージシャンやシンガーと一緒に仕事するのは大好きだよ。彼らがなぜ俺を選んでくれたかは彼らに聞いてほしいな。スティーヴン・タイラーは、ロッドとミックが俺と一緒に仕事したいのは俺のネイティブ・アメリカン・アパッチインディアンの力が欲しいからなんだって言ってたよ!!ロッドは俺が経験の少なさの代わりに若いエネルギーをバンドに持ち込んだのを気に入ってくれたんだと思う。それとロッドはBilly Idolのスティーヴ・スティーヴンスのような近代的なギタリストを求めていたっていうのも聞いたことがある。だからOut of OrderツアーではDuran Duranのアンディー・テイラーを招いたんだと思うな。俺のスタイルもそんな感じだったからね。面白いのはアンディー・テイラーがDuran Duranを去るとき俺をギタリストとして雇ってくれたんだけどその後、俺の事をクビにしたんだ。それでロッド・スチュワートが俺のことを知ったんだけどね。1987年にアンディー・テイラーにバンドをクビになった事によってロッド・スチュワートと一緒に仕事をするっていう、すごく大きいなチャンスに繋がったんだ。悪い出来事っていうのも人生の大きいな旅の一部なんだよ。

MM : あなた自身、ミュージシャンとしてオリジナリティを持った独自の存在であるために、曲作りやギタープレイといった部分ではどのように考え、取り組んできたのでしょうか?
SS : (スターウォーズの) ジェダイのようにフォースを使うんだ。考えるというよりも自分の中で音や曲を映像化する。そして自分のエネルギーを解放させるんだ。


Photo by Marc Mennigmann

MM : あなたは曲作りにおいて思いついたアイデアや曲はどのようにストックしているのでしょうか?
SS : スマホのアプリでちょっとしたアイデアや歌を録音するよ。アイデアはKoshiにも伝える。そしてKoshiと会った時に録音したアイデアを2人で聴いて、Koshiが気に入ったら曲を書くんだ。俺が若い時はカセットレコーダーをいつも持ち歩いていて、アイデアを録音していたよ。非常に重要なのはアイデアを留めておくためのデバイスをベッドの近くに置いておく事なんだ。寝ている時や起きた時が一番アイデアが浮かぶ時で、録音しておかないとすぐ忘れてしまうからね。

MM : コロナ以前には、あなたはいつも忙しく世界中を飛び回っていましたが、ライヴでのツアーやレコーディング以外においてギターをプレイする時間は確保できていたのでしょうか?
SS : たくさんギターを弾く日もあれば全く弾かない日もあるんだ。テレビや映画のための作曲でとても忙しいからね。他のミュージシャンと一緒に演奏するのが好きだから、自分1人で弾くのが楽しくない時もある。1人で弾く時は大体曲を書く時だね。

MM : 日本国内にも素晴らしい楽曲を持つ優れたミュージシャン達がいますが、ロックミュージックにおいては世界中の音楽ファンに知られる存在はまだ出てきていないように見受けられます。もちろん、コアな音楽層に名前を知られているミュージシャン達はいますが、一般の人々にもその名を知られている存在はまだいない、といった意味ですが。この点についてあなたはどのようにお考えでしょうか?
SS : うーん、世界規模での音楽ビジネスはシンガー中心になっていて、英語以外の言語で歌った曲は世界のマーケットで響かないっていうのが理由だと思う。ほとんどの人がインターナショナルな言語である英語の歌い手を聴くからね。INABA/SALASでも俺たちのクールな曲をいつか英語の歌詞でできたらいいね。Koshiはスピーカーから飛び出すような素晴らしい声の持ち主で、俺たちの作曲のやり方は世界に通用するやり方だからね。Koshiは日本語で歌っているにも関わらず、ヨーロッパのファンもOverdrive等の曲が大好きだって言ってくれるんだ。

MM : 最近のミュージシャンの中であなたの興味を引くような人はいますか?
SS : ギタリストのPhil Xは大好きだね。俺が最近プロデュースしたイタリアのローマの女性アーティスト、アナイス・ノワールと彼女のバンド、Poison Gardenも凄く良いね。彼女は日本でもビッグになると思うよ。

MM : 近年は、INABA/SALASのユニットでのアルバム制作などで音楽活動をされていますが、あなた自身のソロアルバムの制作からは遠ざかっています。再びソロとしてのアルバム作りは考えていますか?
SS : 何か伝えたい事がある時に新しいソロのアルバムを作る事になる。ワーナーとワールドワイドの新しい契約にサインしたから2021年にクールな作品を出せるかもしれないね。KoshiとINABA/SALASとして曲作りをするのは大好きだから今の所はこの活動がグルーブとメロディーのインスピレーションになっているね。落ち着いた時に俺のトリオでまた大きなフェスティバルでライブもしたい。

MM : ファンへのメッセージをお願いします。
SS : 日本を愛してるよ!日本のファンは俺をファミリーとして受け入れてくれる気がするんだ。

Stevie Salas official site  http://www.steviesalas.com/


スティーヴィー・サラス自伝〜ギター弾きの最低で最高な人生〜
リットーミュージック刊