Vol.104 Kris Barras / December 2019

Kris Barras


Photo by Rob Blackham

総合格闘技の世界で闘っていた男が、子供の頃から抱いていたもう一つの夢をつかむべく、ブルース・ロック音楽の世界に闘いの場を移し情熱を注いでいる。元総合格闘家のKris Barras(クリス・バラス)が渾身のブルース・ロック作品「Light It Up」をリリース。クリス・バラスのミュージシャンとしての実力は、あのブルース・ロックのスーパー・プロジェクトであるSupersonic Blues Machine にてフロントマンとしてギターとボーカルを担い、ビリー・ギボンズ、スティーヴ・ルカサー、エリック・ゲイルズやウォーレン・ヘインズといった錚々たるミュージシャン達と共演し、堂々と渡り合っていることからも明らかである。今回の作品でも、シンガー、ギタリストとしての魅力はもちろん、作曲面におけるメロディ・メーカーとしてもその才能を存分に披露。アルバムは、ボーカルのメロディの豊かさ、ブルースフィーリングを持ちながらも決して古臭くはなっていない洗練されたアレンジ、そしてリアルなギタープレイ、歌声が発揮された会心作となっている。最新作「Light It Up」についてクリス・バラスに訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura


Photo by Rob Blackham

Muse On Muse (以下MM) : このインタビューであなたを初めて知った音楽ファンの人々に向けてあなたの簡単なプロフィール、そしてあなたがギターを始めたきっかけやその当時に影響を受けていたミュージシャン、ギタリストについて教えて下さい。
Kris Barras (以下KB) : ギターを始めたのは5歳の時だ。俺の親父がギタリストで最初のギターの先生だったね。初めて好きになったギタリストはゲイリー・ムーアで、影響を受けたアーティストやバンドは、ローリング・ストーンズからディープ・パープル、スティーヴ・ヴァイ、リッチー・コッツェン、ジョー・サトリアーニ、その他にも無数にいるよ。

MM : ギタリストとしては勿論、ボーカリスト、そしてソングライターとしても素晴らしい魅力をお持ちですが、ボーカリストやソングライターとして影響を受けたミュージシャンはいますか?
KB : Whitesnakeのデイヴィッド・カヴァデールやFreeのポール・ロジャースは昔からずっと好きなボーカリストだ。イギリスのロックバンドThunderのダニー・ボウズもだね。Thunderのライブは初めて見た本格的なライブで、彼の歌声は最高だったよ。

MM : プロのミュージシャンであるあなたですが、総合格闘家としても活動していたそうですね。
KB : そうなんだよ。ムエタイの選手だった。デビュー戦は2005年だったかな。その後シンガポールやタイでも何試合かして、2014年にファイターとしては引退したけど、その後もコーチとして他のファイターを指導していた。でも今は音楽だけで忙しすぎるからやってないんだ。

MM : Fabrizio Grossi(ファブリツィオ・グロッシー)、Kenny Aronoff(ケニー・アロノフ)とのプロジェクトであるSupersonic Blues Machineに加入することとなった経緯についてお聞かせ下さい。Supersonic Blues Machineではビリー・ギボンズやスティーヴ・ルカサーなどギター・レジェンドともステージで共演していますが如何でしたか?
KB : そうだね。彼らと一緒に仕事をするのは自分の夢が叶ったようだったよ。元々Supersonic Blues Machineの大ファンで、彼らのロンドン公演の前座をやったんだ。その時は彼らがシンガーとギタリストを探しているとは知らなかったんだけど、彼らが俺の映像を見て仕事のオファーをくれたんだ!彼らとの仕事から多くのインスピレーションを受けたよ。


Photo by Rob Blackham

MM : それでは最新作「Light It Up」についてお聞かせ下さい。アルバムは、ボーカルのメロディの豊かさ、ブルースフィーリングを持ちながらも決して古臭くはなっていない洗練されたアレンジ、そしてあなたのリアルなギタープレイ、歌声が発揮されている会心作となっています。
KB : このアルバムは一つのジャンルに収まるような作品にしたくなかったんだ。前のアルバムからの継続性も感じられるようにしたかったけど、ブルースのアルバムに拘る必要はなかったからね。前のアルバムよりもライブの要素が大きく反映されているから、収録曲の何曲かはヘヴィーな感じの曲に仕上がったね。録音は楽しかったしアルバムの出来上がりには自信を持っているよ。

MM : アルバムの曲作りはどのように進められたのでしょうか?
KB : 曲は俺のホームスタジオで録ったデモから生まれる。そのデモをバンドメンバーに送って、みんなで集まってジャムするっていうパターンが多いね。各メンバーが自分の色を各パートに与えていくんだ。このアルバムではそういったプリプロをしっかり行ったから、いざスタジオに入ってレコーディングする時はみな準備万全だった。レコーディングに要した時間は約4週間で、スムーズに終了した。前作のレコーディングよりも時間をかけて、ギターやアンプの種類を色々と試して、適した音作りをうまくする事ができた。

MM : アルバムではリアルなミュージシャンによる素晴らしい演奏、サウンドを聴くことができます。
KB : そうなんだよ。全ての曲は同じ部屋でメンバーが同時にプレイすることによって生まれた。そこからオーバーダブやレイヤーを重ねる作業をしたんだ。俺はバンドっていうのはライブでパフォーマンスする事によって生命が宿ると思っていて、そこが好きなんだ。だからそのライブのエネルギーを投影させたかったんだ。

MM : ミュージックビデオとしても公開されている”What You Get”、”Ignite (Light It Up)”、”Vegas Son”をはじめ、アルバムに収録されている曲の全てがブルース・ロックに基盤を置きつつもキャッチーで豊かなボーカルのメロディラインを持っており、コアなブルースファンのみならず、幅広いロック・ポップスの音楽ファンにもアピールする素晴らしいオリジナリティを備えています。
KB : 俺もそう思うよ。俺は純粋なブルースの人間じゃないからね。今までに影響を受けた全てのジャンルの音楽が好きなんだ!

MM : アルバムを通してバンド・サウンドに女性コーラス隊が加わることでより楽曲を華やかなものに惹き立てています。
KB : 彼女達はグレイトだよ。アレックス・ハート、フィービ・ジェーン、ジョアンナ・クックの3人を招いたんだけど、同じ部屋で録音したから、ゴスペルの聖歌隊のようなサウンドになったんだ。今進行中のツアーでもアレックスとフィービに帯同してもらっている。彼女たちによってライブのサウンドの輝きが増すんだ。

MM : 温かみのある曲 “Rain”は心に染み入ります。
KB : ただの典型的なラブソングだよ。今までこういう曲を書いた事はなかったんだけど、今ではアルバムの中のお気に入りの一つになったよ。カントリー・ロックのバラードのような雰囲気を持った曲で、この曲で使われているハモンドオルガンの音が俺のお気に入りだね。

MM : “Not Fading”におけるクールなギターリフとエモーショナルでスリリングなギターソロはギタリストとしてのあなたの魅力を際立たせています。
KB : そうだね。今アルバムの中で一番ヘビーな曲で、この曲をライブでやるのは最高なんだ。リフにはクロマティック・スケールを使っていて、ベースとキーボードの音とシンクロして一つの音になるんだ。
ソロにかんしては、目の前に突きつけるような強烈なギターソロを目指した。この曲のスタイルやテーマに合ったソロになったと思うよ。

MM : あなたのギタープレイでは、ブルース・ロックを基盤に置いたエモーショナルな歌心あるプレイはもちろん、”6am”の曲中のギターソロで聴けるような伝統的ブルース・ロックのスタイルに留まらない現代的なクレバーな部分も融合させているところに他のブルース・ロックのギタリストとは違うオリジナリティを感じました。
KB : そうだね。初めの質問でも答えたように、スティーヴ・ヴァイ、リッチー・コッツェン、ジョー・サトリアーニやもっとジャズ/フュージョン寄りのグレッグ・ハウなんかを聴いて育った。彼らのようなインスト・ギターの魔術師たちの大ファンだったから、少年時代は彼らのプレイから多くの事を学んだ。今回の”6am”のソロでは少し異なる要素を入れたかったから、シンコペーションを用いたリズムで、タッピングで弾くっていう今までの作品でやったことがない弾き方を思い付いたんだ。

MM : ボーカリストでもあるあなたにとっては聴き手に伝える歌詞も非常に重要な役割を果たしますが、歌詞のアイディアはどのようにしてインスピレーションを得ているのでしょうか?
KB : どこからでもインスピレーションを受ける事ができる。多くの曲の歌詞は自分が今まで経験してきた事に関連している。友人が経験した出来事やニュースで呼んだ出来事からインスパイアされて物語を作る場合もあるね。

MM : アルバムで使用したギター、アンプ、ペダル類を教えて下さい。
KB : Kemperのプロファイラーを殆どのギターの音に使っている。ナッシュビルでセッションプレイヤーをしているマイケル・ブリットが作ったプロファイル(プリセット)を使っていて、その音が凄く良いんだ。ギターはカスタムのSeth Baccus、FenderテレキャスターのUSA custom shop relicとGibsonのES335を使い分けている。

MM : ファンへのメッセージをお願いします。
KB : みんなの事が大好きだよ!すぐに日本でライブできれば最高だね!

Kris Barras official site  https://www.krisbarrasband.com/


Kris Barras Band / Light It Up

01. What You Get
02. Broken Teeth
03. Vegas Son
04. Ignite (Light It Up)
05. 6AM
06. Rain
07. Counterfeit People
08. Let The River Run
09. Bullet
10. Wound Up
11. What A Way To Go
12. Not Fading
13. Pride Is Forever