Vol.63 Carl Verheyen / August 2016

Carl Verheyen

英国ロック・グループ SUPERTRAMPでの活動や数多くの有名アーティストのアルバム、そして映画・TVドラマ等のサントラへの参加などLAのスタジオシーンで活躍中のギタリスト、 ミュージシャンであるCarl Verheyen (カール・ヴァーヘイエン)がオリジナル・スタジオ・アルバム「THE GRAND DESIGN」をリリースした。
アルバムはカールの優しくクリアーな歌声による良質なヴォーカル・ソングが揃っており、幅広い音楽ファンにアピールする魅力的な作品となっている。カールのギタープレイを楽しみにしていたファンも心配は無用・・・この作品においても、カールがスタジオ・ワークで培った楽曲の魅力を最大限に惹き出す多彩なアレンジワーク、ダイナミクス溢れる極上なギタートーン、そしてセンス溢れるフレージングに至るまで匠が持つ素晴らしいギター・プレイを満喫できる。新作「THE GRAND DESIGN」についてカールに訊いた。


Interview / Text  Mamoru Moriyama

Translation         Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)

 

Muse On Muse (以下MM) : 新作「THE GRAND DESIGN」はあなたの歌とギターの魅力が存分に発揮された素晴らしい作品となっています。今作のコンセプトを教えて下さい。
Carl Verheyen (以下CV) : 優れた楽曲による作品を作り上げるという考えが最初からあった。ただ自分のソロ演奏を披露するためだけの作品を発表するギタリストがとても多いからね。そういったアルバムを聴いてみるのも良いけど、決して何度も繰り返し聴けるようなものではない。何度も同じ作品を繰り返し聴く気持ちになれるのは、優れた楽曲を持った作品だけだ。

MM : ギタリスト、ミュージシャン志向のリスナーは勿論、それ以外の幅広いリスナーも楽しめる優れたヴォーカル曲が揃っています。
CV : 今回のアルバムにはインストゥルメンタルが1曲しか収録されていない。それ以外は全てヴォーカル入りの楽曲だ。その代わり、演奏部分ではギターをふんだんに使っているし、アコースティックやエレクトリックを含めた様々な楽器を使って色んなテキスチャーを重ねている。

MM : アルバムに参加しているミュージシャンについて紹介下さい。
CV : Dave Marotta(ベース)とJohn Mader(ドラム)は私のツアー・バンドのメンバーでもあり、この作品の核となっている。アメリカをはじめ、カナダやヨーロッパで多くのコンサートを共に経験し、そこで培ったケミストリーをこの作品で形にしたかった。古くからの友人でもあるJim Coxにキーボートを弾いてもらった。彼はCarl Verheyen Bandの「名誉メンバー」だ。更に、Stuart Hammが1曲ベースを弾いてくれて、Chester Thompsonも別の曲でドラムを叩いてくれた。二人とも素晴らしい演奏をしてくれた。

MM : 今作用の曲作りはどのようして進められたのでしょうか?
CV : 作曲方法は曲によって異なる。例えば”Warrior”やいくつかの楽曲は歌詞先行で作られている。共通して言えるのは、どの曲も日常的に音楽の練習に取り組んでいる中から突発的に生まれてくるアイディアを元に作られているということだ。こういった音楽的アイディアは「フレーズ集」のようなメモに書き留めてある。多くの曲はこういったフレーズをインプロヴァイズしている中から生まれている。例えば、自分と家族が最も多くの時間を過ごす家を題材にした”Live My Days”は、このような形で素晴らしい曲に仕上がっていった。

MM : 歌詞も重要な役割を果たしていますが、歌詞の元となるアイディアはどのようにして得ているのでしょうか?
CV : 伝えたいことが無い限り、意味のある良い歌詞を書くことはできないということを随分前に学んだよ。”Beyond My Reach”は妻についての曲だ。”Closing Time Blues”は両親についての曲。何かを歌うのであれば、意味のあることでなければいけない。”Candy Fame”は現代のポップ・カルチャーにおける音楽的才能の欠落についての曲だ。

MM : 曲作りにおいて浮かんだアイディアや曲はどのようにストックしているのでしょうか?(テープ、譜面、DAWなど)普段どのようにして曲作りしているのか詳しくお聞かせ下さい。
CV : 基本的にアイディアは譜面を書いている。譜面の読み書きができるので、それが自分にとって一番手っ取り早い。最近はProToolsがあるので、自宅スタジオでそれを使ってアイディアをストックしているけど、それまでは譜面でストックすることしかしていなかったよ。今でも、最初は必ず譜面にしている。

MM : “TIMES THEY ARE A – CHANGIN'”では美しくクリーンで澄んだリズムパート、旨味があり表情豊かなリードギターとあなたの歌声が見事にブレンドされておりアルバムへの期待が一気に高めることに成功したオープニング曲となっています。
CV : ありがとう!Bob Dylanはこの曲を60年代に書いているものの、歌詞の内容は現代にもマッチしていることもあって、前々からこの曲には魅力を感じていた。オープニングのリズム・ギターはLsL CV Specialシグネイチャー・ギターで弾いている音だ。ソロもいくつかこのギターを使って弾いているよ。

MM : “CLOSING TIME BLUES”はファンクなリズム・ギターが印象的です。
CV : ありがとう!1969年製の古いシンライン・テレキャスターで弾いているパートだ。James Brown BandのJimmy Nolanが使っていたようなホロウボディのファンキーなテレキャスターだ。

MM : “DISTRACTED GIRL”ではサニー・ランドレスが参加していますが、彼との共演は如何でしたか?
CV : 素晴らしいコラボだったよ!一緒にスタジオでプレイして、曲のパートやアイディアを一緒に作った。ドイツのフェスティバルに出演した時に、本番中に最前列の女性がずっとスマホを見ていたのさ!そのことをテーマにした曲だ。このアルバムにおけるSonnyの演奏はともかく最高だ。

MM : “WARRIOR”はメッセージ性のある曲となっています。
CV : 私は銃に反対の考えを持っている。今のアメリカにおける銃の状況は行き過ぎているね。個人的にはとても無意味に思っている。銃を支持する友人もいるので、何人か敵に回してしまうかもしれないけど、これが自分の素直な気持ちさ。

MM : “ANGELS”や”CANDY FAME”をはじめ、アルバムを通して女性コーラスがとても曲にフィットし色彩を与えているように感じられました。
CV : 今回のアルバムのレコーディングはインディアナ州フォートウェインのSweetwater Studioで行ったのだが、そこにKat Bowserという素晴らしい女性シンガーがいて、彼女の素晴らしい歌声を活用させて頂いたという訳だ。

MM : “INTANGIBLES COLLIDE”は今作の中で唯一のインストゥルメンタル曲となっています。
CV : この曲はバリトン・ギターを使って作曲した。何年も前にAlan Holdsworthからプレゼントとして頂いたギターだ。

MM : アルバムに収録されている各曲についてあなた自身による解説をお願い出来るでしょうか?
CV :
“TIMES THEY ARE A – CHANGIN'”
Bob Dylanの名曲だ。この曲の歌詞や6/8のリズムをとても気に入っている。オープニングの音はLsLを使ってライヴ用のラックのクリーン・チャンネルを通して鳴らしている。ラックに入っているアンプヘッドはヴィンテージのFender Showmanと1976製のHiWattだ。どちらも大音量のクリーンサウンドを出してくれる。

“CLOSING TIME BLUES”
DaveとJohnはファンクをとても上手に演奏するミュージシャンたちなので、彼らがグルーヴできる曲を書く必要があった!

“DISTRACTED GIRL”
オープニングは1960製のテレキャスター・カスタムを使った。同じフレーズをSonny Landrethが1オクターブ高いところでスライド・ギターを使って弾いている!ともかく素晴らしいパフォーマンスだ!

“BEYOND MY REACH”
この曲では低いEの弦をCにチューニングし、5弦をGにしている。更に5フレットにカポを付けている。Richard Thompsonから学んだナイスなチューニングだ。

“ANGELS”
ブリッジの短いフレットレス・ベースのソロが終わるところのドラム・フィルをとても気に入っている。凄まじい意気込みを感じるね!

“WARRIOR”
この曲におけるダイナミクスのレンジにはとても満足している。更にミックスがそれを見事に引き出してくれている。囁きから大音量のロック・アンセムへと曲が変わっていく。ヴァースやサビ毎に勢いが増していく感じだ。

“LIVE MY DAYS”
ここ何年かの間に飛行機を何度も乗ったことでインスパイされた曲だ。地上30,000フィートの高さから窓の外を見ていると、自分が普段住み慣れている場所を違った観点から見ることができる。

“ADELINE”
ギターのフレーズをステレオでダブらせて、更にLowreyオルガンとVoxのエレキ・ギターを重ねている。ソロは1958製のPAFピックアップが搭載された1972製レスポール・デラックスを弾いている。

“INTANGIBLES COLLIDE”
始まりは美しい雰囲気だが、サビはとてもヘヴィで忙しい感じになり、更にソロに入るとスカのビートへと変わっていく。様々な異なる要素がぶつかり合うような曲だが、結果とても上手くいっている!

“CANDY FAME”
Jimmy Pageがどのようにしてハーモニーのあるリフを作り上げるか、この曲のブリッジのインストゥルメンタル部分を書いている時に気づいたのさ。彼はメジャーのペンタトニック・スケールを使ってマイナーのペンタトニック・リフにハーモニーを加えている。それは彼独特のサウンドだ。

MM : アルバムでは相変わらずの素晴らしい極上のギターサウンドを聴くことが出来ますが、使用したギター、アンプ、エフェクター、ペダル類を教えて下さい。
CV : この質問に答えようと思ったら何時間もかかるし、回答が何ページになるか分からないほど沢山使ったよ。「THE GRAND DESIGN」のスペシャル・エディションがSweetwater.comで販売されていて、使用したギターやペダル、アンプ等のリストが記載されたPDFが付いている。更に各楽曲のギター演奏の解説やミックス指導を収めた短い動画も収録されている。また、この動画の高画質映像のダウンロード先も記載されている。それとは別にアルバム制作のドキュメンタリー(約1時間)を観ることができる。
詳しくはこちらのリンクから:http://www.sweetwater.com/events/2016/grand-designs-album/

MM : あなたのギタープレイはダイナミクスがあり、繊細なニュアンスからパワフルな音まで自由自在の素晴らしい表現力を持っています。それらを得るための練習時の取り組みで意識すべきことなどを教えて頂けますか?
CV : どんな楽器でも同じことだけど、その楽器の全ての要素を学ぶためには様々な音楽スタイルを学ぶ必要がある。まずは練習時間をあまり区分化しないこと。むしろ、ロックやカントリー、ジャズ、ブルーグラス、メタル、ブルース、フュージョン等、様々な音楽スタイルに取り組むことが重要だ。それぞれのスタイルには異なるテクニックが必要だ。練習用のエクササイズ等に取り組むよりも、このように多くのスタイルを習得することの方が効果的だと私は思っているよ。

MM : 今後の活動予定について教えて下さい。
CV : 今はアメリカ東海岸をツアー中だ。その後は西海岸をツアーして、秋には長期のヨーロッパ・ツアーが予定されている。日本にも行きたいと思っているので、それも早々に実現できればいいね。素晴らしいインタビューをありがとう!

Carl Verheyen official site : http://www.carlverheyen.com/
Carl Verheyen facebook : https://www.facebook.com/pages/Carl-Verheyen-Official/157574464276259/

 


THE GRAND DESIGN / Carl Verheyen
http://www.carlverheyen.com/store-cds/

1.The Times They are A-Changin’
2.Closing Time Blues
3.Distracted Girl
4.Beyond My Reach
5.Angels
6.Warrior
7.Live My Days
8.Adeline
9.Intangibles Collide
10.Candy Fame