Vol.115 Reb Beach / November 2020

Reb Beach


Photo by Brian Kaldorf Photography

1988年にWINGERにてデビューするやいなや、それまでの数多くの有名アーティストとのスタジオワークで培ったセンス溢れるギターリフ、テクニカルかつ起承転結のあるクレバーなフレーズ構築にて楽曲に華を添えるギタープレイで一躍、次世代ギターヒーロの一人として注目を集めたレブ・ビーチ。その後のDOKKENへの参加、WHITESNAKEのメンバーとしての活躍と共に母体であるWINGERにおいても活動を続けているレブ・ビーチが、フュージョン・ロックのインストゥルメンタル・ソロアルバム「View From The Inside」をリリースした。今作は、聴き手の心に残る印象的なメロディを持つ曲から70年代のフュージョンなどインストゥルメンタル・バンドで聴かれたインプロヴァイズの魅力を持つ曲にいたるまで、ファンの期待に応える素晴らしい作品となっており、レブ・ビーチが持つ音楽力、ギタリストとしての魅力を大いに楽しめる。珠玉のフュージョン・ロック作品「View From The Inside」についてレブ・ビーチに語ってもらった。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura


Photo by Brian Kaldorf Photography

Muse On Muse (以下MM) : ファン待望のソロ・アルバム「A View From The Inside」が遂にリリースされます。何年も前からソロ・アルバムを制作するといった話はありましたが、ここまで時間がかかった理由を教えて下さい。
Reb Beach (以下RB) : そうだね。個人的なサイドプロジェクトとして少しづつやっていたからね。Wingerが1993年に解散し、ジョー・サトリアーニのようにインダストリアルな音楽のデモを作っていこうと思ったんだ。レーベルとは契約することができなかったから、自分のウェブサイトで販売したんだけど、それがすごく売れた。色々な人が俺の今までの作品の中でもお気に入りだと言ってくれたこともあって、しっかりとしたレコードを作りたいと思っていた。でもずっとWingerやWhitesnake、Black Swanの為の作曲という締切のある仕事をしていて、さらにコンスタントにツアーもしていたから、ソロのプロジェクトはどんどん後回しになっていた。コロナウイルスによるパンデミックが始まって、俺は何をすべきなのかってキップ・ウィンガーに話した時に、「そう言えばずっとやってるフュージョンの作品はどうなったんだ?」と訊かれた。そこで、「それだ!そう言えばずっとハードディスクの中に完成した曲が眠ってるよ!」となったんだ。キップには感謝しているよ!

MM : アルバムは、聴き手の心に残る印象的なメロディを持つ曲から70年代のフュージョンなどインストゥルメンタル・バンドで聴かれたインプロヴァイズの魅力を持つ曲にいたるまで、ファンの期待に応える素晴らしいインストゥルメンタル作品となっています。
RB : 嬉しいコメントをありがとう!それが俺がこの作品で目指していた事だよ (笑) シュレッドなギターがノンストップで入っているような音楽性に深みがない典型的なハードロック作品にはしたくなかったからね。シュレッドのギターはたくさん入ってるけど、耳に残るような気持ちいいメロディーを作って、同じような曲ばかりにならないようにしたよ。

MM : BLACK MAGICやCUTTING LOOSEなどは、あなたを象徴するロック・インスト曲でありファンの間でずっと根強い人気を誇ってきました。今回、再レコーディングした経緯をお聞かせ下さい。
RB : 再レコーディングした理由は音がすごく悪いからだね。8トラックのカセットレコーダーで録音した曲で、ドラムなんかはAlesisのSR-16ってドラムマシーンで録った。ちなみに今でも大阪の野球チームが”Black Magic”を使用しているから日本から印税が入ってくるよ!新しく録ったヴァージョンも送ってみるけど、こっちのほうを気に入ってくれるかな?(笑)
“Cutting Loose”に関しては、俺がインストラクターをやってるVHSに収録されている以外では正式にリリースされていないんだ。でも「あの1989年に出たギターレクチャーのビデオの最初の曲は何の曲?最高の曲だよ!」ってみんなに聞かれるんだ。あの曲には名前はなくて、ビデオの為にジャムしてるのを撮っただけさ、って今まで答えてきた。メロディーが無かったからあの曲にメロディーを付けて、クオリディーは80億倍良くなったよ!曲のタイトルもそのVHSのタイトルと同じ”Cutting Loose’にしたんだ (笑)

MM : その他のアルバムに収録されている曲については、曲作りはどのように進められたのでしょうか?
RB : 全曲同じ方法で書いたよ。まず俺がドラムをプログラムで入れて、他の全ての楽器を録音する、次にそのデモをベーシストとキーボード奏者に送って、俺が録ったパートを置き換えてもらう。さらにそのトラックをピッツバーグの小さな教会にあるレコーディング・スタジオでスロックにドラムを録音してもらって、それをデトロイトの素晴らしいエンジニア、スティーブ・ランジェリーに送ってミックスとマスタリングをしてもらうといった流れさ。

MM : ボーカルによる歌や歌詞が入らないインストゥルメンタル作品をファンに楽しんでもらう上で心掛けたことについてお聞かせ下さい。
RB : インストのヒット曲は実は驚くほど多くあるんだ。ジョージ・ベンソンの”Breezin’”、チャック・マンジョーネの”Feels so Good”、 オールマン・ブラザーズの”Jessica”、エリック・ジョンソンの”Cliffs Of Dover”、エドガー・ウィンターの”Frankenstein”など数え切れないほどある。これらの曲には共通項があって、まずリズムセクション自体がフックになるような存在感があること。そして耳に残る良いメロディー、全てのセクションがフックになり得るんだ。後はワールドクラス且つやり過ぎじゃ無いソロが入ってるって事だね。

MM : アルバムの参加メンバーや彼等が参加することとなった経緯についてお聞かせ下さい。
RB : デイブ・スロックモートンは、俺のお気に入りのドラマーで、彼と一緒にプレイする為にReb Beach Projectって地元のバンドを結成したくらいさ。2003年にリリースした俺のソロ“Masquerade”でもドラムを叩いてもらっていて、このレコードを更に上のレベルへと引き上げてくれたんだ。
ポール・ブラウンはファンクのキーボード奏者でキップのナッシュビルの友達だね。彼がこのレコードに完璧だったのは、ハモンドのB3やClavinet等の本物の楽器を演奏するプレイヤーだからさ。70年代のキーボードの音が大好きだからね。
さらにファンキーなベーシストを探していた時、友達が「スティーヴ・ヴァイのベーシストをチェックしなよ」と言ってくれたんだ。それで Youtube で見てみたのが、フィリップ・バイノーで、彼は完璧だったね。このプロジェクトで彼にベースを弾いてもらうのは凄く楽しみだったよ。Reb Beach Projectでベースを弾いているジョン・ホールにも何曲かベースを弾いてもらった。
ちなみに”Infinito 1122” では俺がベースを弾いている。自分が作ったベースラインに恋をしてしまったからね。ギタリストがベースを弾いている感じになったから、本当はジョンかフィリップに弾き直してもらうべきだったんだけど、Youtubeのコメントを見ていると「この曲ではベーシストがレブ・ビーチを輝かせている。」ってコメントがあったんだ!俺が俺を一層輝かせたっていう事になるよね (笑) ”The Way Home”ではWingerのステージマネージャーのロバート・ランジェリーが彼の自宅でドラムを録音してくれた。日本盤のボーナストラックを用意するのを忘れていたところを、ロバートが助けてくれたんだ。すごく太いドラムの音を送ってくれたよ。

MM : 彼等とのレコーディングはどのように進められたのでしょうか?
RB : デモを送って彼らのパートを録音してもらう形だったね。送ってもらったパートで好きな部分、そうでない部分を伝えて、再度レコーディングして送ってもらうっていう流れだったよ。例外は”Aurora Borealis”で、Whitesnakeのメンバーとツアーしている時、デトロイトの教会にピアノを持っている人がいるって人づてに聞いて、ツアーの休日にその教会に行って、ミシェル・ルッペがこの曲のピアノを弾いてノートパソコンで録音したんだ。

MM : アルバムのリリースに先行して”INFINITO 1122″のミュージックビデオが公開されました。この曲について教えて下さい。
RB : スロックとReb Beach Projectのジョン・ホールがビデオに出ているね。場所はドラムをレコーディングしたピッツバーグの教会だよ。リックが先に浮かんだ曲で、曲を通して一つの指が一つのフレットにかかっている形でそれ以外はオープンだ。悲しいんだけど希望が残されている様なムードが曲全体に漂っている。Googleで検索してみたら分かるんだけど1122はエンジェルのナンバーで、人生をもう一度やり直すって意味なんだ。その数字は色々な場所で見かけるよ。

MM : 癖になるような独得なメロディを持つ”Little Robots”、とても親しみやすいキャッチーなメロディを持った曲 “Aurora Borealis”などは聴き手をあなたの世界に惹き込みます。
RB : “ Little Robots”は1986年に書いた曲で初めてフュージョンを作った曲なんだ。このアルバムの中でも特に気に入っていて、凄くシンプルなんだけど、効果的な曲だ。大好きなものがインストの中に詰まっていて、アウトロのソロも非常に良い。良いソロで終わっていく曲が大好きなんだ (笑)

“Aurora Borealis”はアイルランド風のイントロのリックから思い浮かんで、そのリックからインスパイアされて曲全体を書いた。アコースティックなピアノとエレキギターのコンビネーションがが大好きだから、曲の残りはピアノで作曲して、そのトラックの上でジャムして作ったよ。初めは”Finnigan’s Wake”ってダサいタイトルだったけど (笑)、ロッド・モーゲンシュタインにどんな曲名が良いかって聞いたら”Aurora Borealis!”ってカッコいい名前を付けてくれたよ!歌詞のない曲だからどんなタイトルでも付ける事ができるからね。


Photo by Brian Kaldorf Photography

MM : “Attack Of The Massive”、”The Way Home”などは、あなたならではのロック・フュージョン曲であり、クールなリズムギター、クレバーかつセンスに溢れたソロのフレージングなど聴きどころ満載です。
RB : “Attack of the massive”は一番難しい曲だったね。速く強力なジャムで、ライブを盛り上げる曲にしたかったんだ。ピーター・フランプトンの”Do you feel like I do”のようなブレイクを入れて、ソロが始まる時は音数を抑えて、ギターが十分に響き渡るスペースを与えている。ダイナミクスがしっかりしている曲でもある。リスナーに1曲を通して聴かすには重要な要素だからね。ライブ用の曲としてクールな曲になったから、偽のオーディエンスの歓声を入れようと思ったけど、台無しになりそうだからやめることにした (笑)
“The Way Home” はアルバムの中では2番目に好きな曲で、最後に出来上がった曲だね。初めは日本盤用のボーナストラックにしようと思っていたけど、好きすぎて世界中で聴いて欲しいから本編に収録したよ。俺が大好きなインストのアーティスト、ジャン=リュック・ポンティ的な雰囲気があるんだ。この曲もシンプルな曲なんだけど、シンプル・イズ・ベストって事だね。リズムトラックがずっと反復しているんだけど、永遠にループして欲しいって思うくらい飽きがこなくてクセになるんだよ。

MM : “Sea Of Tranquility”は、アルバムの最後を飾るに相応しい美しいメロディを持った曲です。
RB : ピアノで作曲した曲で、ギターのメロディーは弾き始めて5分で出来上がったよ。Whitesnakeのアルバムで言うと”Forevermore”や”Sands of time”、Wingerのアルバムだと”Headed for a heartbreak”や”Witness”のようにバラードでアルバムを終えるのが好きなんだ。良い感じのソロでアルバムが終わっていくのはクールだからね。自分のキャリアの中でベストのソロはWingerのアルバム”Kharma”に収録されている”Witness”で凄く良い曲だ。でも一番気に入っているのはソロアルバム「The Fusion Demos」に収録されている”Duxbury Bay”で、今まで作ったバラードの中でも最高の曲だね。もし次のインストアルバムを作るなら再レコーディングしてラストチューンとしてアルバムに入れるよ。

MM : 今回のアルバムの中で使用したギター、アンプ、エフェクター、ペダル類を教えて下さい。
RB : 同じような質問に代わり映えしない同じ答えを30年間続けてきたのでつまらないね。 Koa SuhrのギターにEMGのピックアップ、ジョン・サーによって改造されたMarshallのアンプと同じくサーのヘッドを付けている。ソロのパートには長年使っているSuhr GuitarsのShiba Driveでオーバードライブをかけているよ。ディレイはその後にかけている。

MM : ところで、昨今では動画サイト等でアーティスト本人がネック上のどのポジションでどのようにフレージングしているのかも丁寧に解説しており、自分の耳に頼らずとも以前よりも容易に奏法などの情報を得られます。このような昨今ですが、あなたからギターに取り組んでいる人々に対してのアドバイスをお願いいたします。
RB : そうだね。俺が初めてエレキギターを習ったのは、家の壁にペンキを塗りにきた業者の人からだったね。ペンタトニックのスケールや、アコースティック・ギターには出せない歪みをかけた状態で基本的なコードをどう上手く弾くのかを教わったよ。次にレコードからどうやってソロを弾くかを耳で学んだ。モーリー・ハッチャーが最初の一枚だね。1ポジションでAのソロを弾くのがペンタトニックでは一番基本的なソロなんだけど、フレーズを上手く使えば全てのソロが凄く良くなるんだ。他にもありとあらゆるテクニックを学んだよ。レーナード・スキナードのソロを真似するのは難しすぎたね (笑) リズムギターをタイトに演奏できるように練習するのがいいね。それに作曲やアレンジを学ぶ事が大切で、そのことによって良い曲を書く事ができる。ギタリストとしては優れていても作る曲は全然ダメって人もいるからね。もちろん誰か作曲できる人がいるバンドに所属するのも一つの手だけど、作曲したメンバーにお金が入っていくだけだよ。

MM : WINGERやWHITESNAKEも含め今後の予定を教えて下さい。
RB : Kipの為の曲作りで忙しいね。全てのバンドがツアーをストップして新しいアルバムをレコーディングしている時期だから、最高のアルバムを作るには完璧な時だね。今の所10曲作ったけどアルバムに収録されるのは5曲、だから完成までやっと半分きたくらいだね!すでに前作よりも良いアルバムになるって確信してるよ。俺たちは、全曲が誰にも文句を言わせないぐらい良い曲で、キャッチーで、最高のジャムになってるアルバムを作りたいんだ。できれば5月頃にはアルバムを出して、ツアーに出たいと思っているよ。Whitesnakeに関しては、デイヴィッドといつも連絡を取り合っている。毎日面白いジョークのメッセージが送られてくるよ。でも今の所プランは無いね。ライブハウスや会場が利益を出すために十分な数の観客を入れる事ができる状態になればバンドもファンもライブに戻ってくると思うけど、もし今の状態が長く続けばライブハウスは無くなってしまうだろうね。

MM : ファンへのメッセージをお願いします。
RB : このアルバムを作ろうと考えたときに日本のファンの事が思い浮かんだんだ。日本人の生徒はたくさんいるし、彼らは繊細で心地いい良い音楽が好きで、とにかくギターを愛しているね。日本とイタリアはお気に入りの国なんだ。その国の文化が好きだし、何よりも伝統的な食事が最高だね (笑)! 日本には最高のファンがいるから、このレコードを日本でリリースできることに興奮しているよ。日本の美しい人々に愛を!

Reb Beach official site  http://www.rebbeach.com/


Reb Beach / View From The Inside

01. BLACK MAGIC
02. LITTLE ROBOTS
03. AURORA BOREALIS
04. INFINITO 1122
05. ATTACK OF THE MASSIVE
06. THE WAY HOME
07. WHIPLASH
08. HAWKDANCE
09. CUTTING LOOSE
10. SEA OF TRANQUILITY
11. HOBOKEN (JAPANESE BONUS TRACK)