Vol.108 Trevor Rabin / April 2020

Trevor Rabin

トレヴァー・ラビンがこれまでの音楽キャリアで創り出したソロ・アルバムやイエス時代に制作した初期のデモ、未発表のライヴ音源やサウンドトラックなどをまとめたボックスセット「Changes」をリリースする。YESのメンバーとしてYES最大のヒット作「90125」を生み出し、その後も自身のソロ活動や映画音楽のコンポーザーとしてブルース・ウィルス主演の「アルマゲドン」やアーノルド・シュワルツェネッガー主演の「シックス・デイ」をはじめとした数々の大ヒット映画のサウンドトラックを手掛けるなどトレヴァー・ラビンが創り出した珠玉のメロディは世界中の多くの人々に届けられ、その耳に残り続けている。

今回リリースされるボックスセットには、トレヴァーがこれまでにリリースしたソロアルバムや未発表のライヴ、そして、映画「Jack Frost」のサウンドトラックのデモやYES時代のデモも収録されており、トレヴァーの音楽の進化の過程を聴くことができるなど、ファンにはとても嬉しい内容となっている。ボックスセット「Changes」についてトレヴァーに訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura

Muse On Muse (以下MM) : 今回10枚組となるボックスセットをリリースすることとなった経緯について教えて下さい。
Trevor Rabin (以下TR) : 簡単に言うとロブ(注:ロビン・アイリング、VoiceprintレーベルのCEO)のアイデアだね。僕の今までのキャリアをドキュメントとして残したいんだって言われたんだ。どの作品を選ぶかは本当に大変な作業だった。特に僕が制作した80時間にも及ぶ映画音楽は、別々のレコード会社からリリースされてきたから今回のボックスに入れる事はできなかった。自分のサウンドトラックの仕事の中でも特に、オーケストラとやった作品については誇りに思っているよ。スコアはほとんどオーケストラを使ったね。今回のボックスにも映画音楽は少しだけ入っている。自分のレコーディング・アーティストのキャリアの中でも重要な部分を占めているからね。

MM : 2012年の作品”JACARANDA”もボックスセットに含まれていません。
TR : 「Jacaranda」も違うレーベルからリリースされたからね。とても気に入ってる作品なんだけどね。ジャンルとしてはジャズにあたるこのアルバムは、今でも認知を広げている作品だと思う。ロックと比べてジャズのアルバムはゆっくり動くし、人々の耳に届くのも時間がかかるからね。

MM : “Beginnings”、”Face To Face”、”Wolf”は、あなたのソロとしてのキャリアの初期の作品ではありながら、ボーカル、ギター、ベース、キーボードをマルチに操るミュージシャンとしてのあなたの実力、そして卓越した作曲・編曲能力が発揮されている作品です。当時のエピソードも踏まえそれぞれのアルバムを振り返って頂けますか?
TR : 自分の作品を批評するのは難しいから少しだけにしておくよ。「Beginnings」は僕のバンドRabbittで素晴らしい時間を過ごした後に作った作品だ。南アフリカからロンドンへ引っ越してきて、全く違う雰囲気だったから新しい気分で創り上げた。「Face to Face」の時はもうロンドンに住んでいたんだけど、南アフリカで仕上げた作品で自分にとって難しい時代だった。アルバムの中で自分が好きな部分とそうでない部分があるんだけど、ロブと相談した結果、自分が通ってきた道筋を示すべきだって結論になり今回のボックスに収録したんだ。「Wolf」は素晴らしいミュージシャンを招いて作った作品だから凄く楽しかったよ。スティービー(・ラング)とクリス・トンプソンは最高のシンガーだったし、マンフレッド・マンのソロ・シンセは凄かった。ラビット(ジョン“ラビット”バンドリック)は味のあるハモンド・オルガンの音色を残してくれて、ベースはジャック・ブルースとモー・フォスター、ドラムはサイモン・フィリップスっていう素晴らしい面子だった。

MM : “Wolf”はドラムにサイモン・フィリップス、ベースにジャック・ブルースが参加するなどよりライブ感が増した素晴らしいロックアルバムですが当時、彼等を招くこととなった経緯を教えて下さい。
TR : サイモンをプロジェクトに誘ったら彼は乗り気で、サイモンからジャックに声をかけてくれて、ジャックも喜んでプロジェクトに加わってくれた。彼らとのレコーディングはすごくエキサイティングで君の言うようにライブのフィーリングを与えてくれたね。

MM : “Lost Soundtracks. Vol 1. Jack Frost”、”Lost Soundtracks. Vol 2. Film Music”について教えて下さい。
TR : 簡単に言うと映画のために書いたデモ曲をまとめたって事だね。

MM : TVドラマや映画のサウンドトラックの仕事を手掛けるようになったきっかけを教えて下さい。
TR : 14年間Yesとして活動している間、ずっとオーケストラ用の曲を作曲したいと渇望していたんだ。アルバム「Big Generator」ではオーケストラを招いたんだけどね。本人に頼まれて、俳優のスティーヴン・セガールへギターを教える機会があった際に、2時間のレッスンの後、彼から何かお返しできることはないかと聞かれたんだ。ちょうどYesを脱退した時だったから、映画音楽の仕事を探していて、誰か映画音楽の作曲家のエージェントを知らないかって聞いた。彼はさりげない形で当時彼が作っていた「グリマーマン」の仕事をオファーしてくれたんだ。それが初めての映画音楽の仕事になったね。ジェリー・ブラッカイマーがそれをチェックしてくれて、その後に彼の映画12-13作品の音楽を担当した。あっという間にすごく深い地点まで到達したね。

MM : 映画音楽では8小節のメインテーマのメロディーが映画のイメージを決定づけるほどに重要な役割を果たします。テーマとなるメロディを創り出す中で葛藤はありますか。
TR : 幸いにも僕の場合はメロディーとテーマを付けるのが得意だから、その事が映画音楽家としての成功を導いたのだと思う。

MM : ロックミュージックと映画音楽、それぞれ作曲する際でのアプローチの違いについてお聞かせ下さい。
TR : ロックは全く違うものだね。Yesや他に所属したどのバンドにおいても楽譜をしっかり読む事はなかった。ロックでも楽譜を使う事もあるが、ほとんどは耳や頭を使って作っていくものだからね。自分にとっての映画音楽はオーケストラの要素が強い。いくつかの映画についてはシンセサイザーなどの非オーケストラで制作される事もあるが、殆どはオーケストラによる演奏で作る。そこに関しては古い人間だからね。大事なのはオーケストラの楽譜を理解する事と、それぞれの楽器について、その楽器に何ができるか、どう重ねるか等について深く分析と理解をする事。僕のオーケストラセッションに来るようなトップクラスの演奏家は、どんなに技術的に難しい演奏であっても楽譜を見ただけですぐに演奏・録音ができてしまうんだ。時間という要素はいつも大事だからね。最高の演奏スキルがあってかつ曲を理解できるミュージシャン抜きには映画音楽の制作は不可能だ。僕のオーケストラによる映画音楽は慎重に賢く作られた作品だよ。

MM : “90124”を聴くと、YES史上で最も多くの音楽ファンに知られているであろうアルバム”90125″に収録されている曲のデモからはあなたが音楽的アイデアや作曲の中心であり、”90125″は、あなたがYESに加入したのではなく、あなたのプロジェクトにYESのメンバーが参加し作られていることが理解できます。
TR : そうだね。90125になって変わった事はクリス(・スクワイア)とアラン(・ホワイト)が演奏した事とジョン(・アンダーソン)がヴォーカルを入れた事により厚みが加わった事。プロダクション的には僕が思った通りの結果になった。ちょうどアルバム「Wolf」を作った時にジャック(・ブルース)とサイモン(・フィリップス)が加わった時と似ているね。

MM : “CAN’T LOOK AWAY”は壮大でドラマティックかつ耳に残る素晴らしい楽曲揃いの傑作ですが、あなた自身の中ではこの作品はキャリアの中でどのような位置づけられるのでしょうか?
TR : 僕にとってお気に入りのソロアルバムだね。プロデューサーのボブ・エズリンと非常に良い時間を過ごす事ができた。プロデューサーから自分の作品に影響を受けたのはそれが初めてだったからね。

MM : アルバム”CAN’T LOOK AWAY”の収録曲がプレイされたライヴは以前にライヴ作品”LIVE IN LA”としてリリースされていましたが、今回のボックスセットに入っているライヴ作品”Cry Lonely Wolf”について教えて下さい。

TR : これはロブが考え付いたアイデアなんだけど、彼から聞いた時「Cry Lonely Wolf」はボックスセットの中で良いアクセントになると思ったんだ。もちろん「Live in LA」のアルバムは観客が創り出した素晴らしい雰囲気を閉じ込めるようにミックスした作品だから。今でも凄く気にいっているよ。

MM : あなたが作曲やレコーディングなどの音楽制作時に使用している機材(DAW, Keybords, Guitar, Amp, pedal etc.) を教えて下さい。
TR : キーボードはソフトもハードも色々な種類のものを使っている。7フィート2インチ(約2.2m)のYoung Changのピアノを所有していて僕のお気に入りのギターと同じくらい気に入っているよ。アンプとしてはFRACTAL Audio Systemユニットを使ってる。スタジオでは古いアンプを持ってるけどツアーに出る時はこれが最適だからFRACTALしか持って行かない。ギターは信頼できる60年代のStratをまだ使っているよ。今のStratは全く違う見た目になってしまったね。他のStratも何本か持っているけどそれを使うのは弦が切れた時やチューニングが違う時だけだ。トム・プレスリーがデザインした僕のモデルのPanteraも使っているよ。トムの仕事は最高の出来だからね。スタジオではWashburnの僕のモデルのギターもよく使っている。

MM : そのWashburnのあなたのシグネチャーギターであるPARALLAXE M20-TREVOR RABINについて教えて下さい。
TR : WashburnのTrevor Rabinモデルは素晴らしい仕上がりで誇りに感じているよ。この素晴らしいギターの開発には深くかかわっていて、サウンドも感触も驚くべきクオリティなんだ。

MM : 今後の予定について教えて下さい。”YES FEATURING JON ANDERSON, TREVOR RABIN, RICK WAKEMAN”としての活動はどうなるのでしょうか?
TR : 今は新しいアルバムの制作に集中している。「Can’t Look Away」を突き詰めたような内容で、血と汗と涙を注いでいる。今はアルバムの60%ができた段階だね。もちろん映画の音楽も作っているよ。YESとARWの活動に関してはおそらく終了だろうね。リユニオンのツアーのハイライトはまずリック・ウェイクマンの存在だろう。リックとまた一緒に働くと約束したんだ。2016年から2018年に行ったARWのツアーで一緒に演奏したり、彼と一緒に過ごせた事は最高だったね。今でも常に連絡を取り合っているよ。YESとARWのツアーでは全公演でファンが素晴らしい雰囲気を作ってくれた。あの愛にあふれたツアーの事は忘れられないよ。

Trevor Rabin official website  https://www.trevorrabinmusic.com/
Trevor Rabin official store    https://www.musicglue.com/trevor-rabin/


Trevor Rabin / “Changes” 10 Disc Box Set, signed and numbered
Trevor Rabin official store    https://www.musicglue.com/trevor-rabin/

Disc 1 Beginnings
Disc 2 Face to Face
Disc 3 Wolf
Disc 4 Can’t Look Away.
Disc 5 Can’t Look Away bonus tracks
Disc 6 90124
Disc 7 Live in Boston 1989 part 1
Disc 8 Live in Boston 1989 part 2
Disc 9 Lost Soundtracks Vol. 1 – Jack Frost.
Disc 10 Lost Soundtracks Vol. 2

Signed and numbered certificate 24 page A4 photo book, “The Making of Wolf” 24 page A4 photo / scrap book A3 Poster 4 x 10” x 8” reproduction Promotional Photos