Keith Scott (キース・スコット) コラム issue #1 正しい機材選び

80年代から数々のヒット曲を放ってきたブライアン・アダムスをロック・スピリット溢れるギターでレコーディングやツアーで支え続けてきたキース・スコット。 誰もが耳にしたことがあるであろうブライアン・アダムスの数多くのヒット曲では必ずキースの歌心溢れる印象的なギターを聴くことが出来る。キースは今回のコラムで「正しい機材選び」について自らのエピソードを語ってくれた。

正しい機材選び・・・そして逃してしまったチャンス

レコーディング等のセッション仕事を始めた頃、僕は限られた機材しかスタジオに持参しなかった。当時のメイン・ギターはメイプルのネックが付いた76年式FENDERストラトキャスター。既にかなり使い込んだ状態の物だった。メイン・アンプは100WのHIWATTのスタックを使っていた。サブとして同じ年代のストラトをもう一本、それにOVATIONのボウルバック型アコースティックギターを持ち込んでいた。それが当時所有していた楽器の殆どだった。お粗末と言っていいほど多様性に欠けているのが分かる。でも、若い頃はそういった要素を見落としがちなのも事実だ。

忙しい時期を過ごしていた数年後、少しは気にしていたのかアメリカをツアーしている間に64年式のFENDERストラトキャスターを手に入れた。アンプも何台か購入し、中でも買いだったのが12インチのスピーカーが2つ搭載されていた70年代のMARSHALL 50Wコンボ・アンプだった。だいぶ年期が入ったアンプだったし、マスター・ヴォリュームのノブがファンキーなものに変えられていて、更に中のスピーカー2つが別々のメーカーのものだったけど、ともかく音は素晴らしかった!その後はレコーディングでもこのアンプを使ってし、何年かツアーでも使った。80年代に入ってから、僕は状態の良いオールド系の機材を探すようになった。これは以前とは異なるサウンド設定に自分のスタイルが変わっていたことに対応しなければならなかったからだ。ブライアン・アダムスの『Reckless』のレコーディング時には65年式キャンディアップルレッドのFENDERストラトを借りて録音を行った。色んな意味でとても大切なレコーディングだったんだ。それに、この頃から様々なサウンドや様々な機材を使って色んなアイディアを試すという手法を覚えるようになった。赤いストラトはレコーディング後にケース付きで800ドルという値段で買わないかというオファーがあったが、我々は愚かにもそれを断った。すぐにこういったギターの価値が高騰するということがその時には予測できなかった。別の機会にまた手に入るだろうと軽く考えていた訳だ。数年後に同じギターが売りに出されたことを知ったブライアンは、その時はすぐに買っていたよ。彼は今もそのギターを所有している。ストラトのオファーがあったのと同じ時期にリフィニッシュされた57年式ゴールドトップのレスポールを同じ値段でオファーされたのも断ったんだ。PAFピックアップが付いていて、殆どのパーツがオリジナルのパーツだった。赤いストラトとは異なり、数年後に二度目のチャンスは訪れることはなかった。当時はまたすぐに別の物が売りに出されるだろうと高をくくっていたのさ。

数年後にはこれらのギターの値が高騰した。欲しいと思った機材には多額のお金を使った。若い頃に所有していたギターを今でも持っていたら・・・と、思うこともあるよ。実際に演奏するためにではなく、思い出のためにね。それでも、我々は先へと進まないといけない訳だ。地平線の先には何が待っているのだろうか。また素晴らしい音を奏でる宝石が待っているかもしれないね!

キース・スコット

Translation by Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)