Vol.10 Joey Tempest (EUROPE) / April 2012

Joey Tempest (EUROPE)


Photo by Fredrik Etoall

前作「LAST LOOK EDEN」から2年半振りのスタジオ・アルバム「BAG OF BONES」を完成させたスウェーデン出身のハード・ロック・バンドEUROPE。バンド通算9作目(再結成以降4作目)となる今作では従来のEUROPEの作品から更に新しい音楽の領域に踏み込んだ感もある素晴らしい作品に仕上がっている。バンドのシンガーでありメインソングライターであるジョーイ・テンペストに「BAG OF BONES」について語って貰った。


Photo by Patric Ullaeus

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)

80年代に活躍していたロックバンドの中には、解散や活動停止を経て再結成といった過程を辿るバンドも少なくない。しかし、再結成といっても過去に人気を博していた頃の選曲中心のライヴ・ツアーのための再結成であったり、アルバムを発表するもののファンが期待する絶頂期であった過去の音楽性と自分たちが持つ今の音楽性の狭間で葛藤するバンドが多く存在しているのも事実。
そのような状況の中、EUROPEは2004年の再結成時から過去の音楽性を振り返ることなく新生EUROPEとしての新しい音楽性をファンに提示し続けている。最初は戸惑いを見せていた80年代からのファンにも今ではすっかり現在のEUROPEの音楽が受け入られているとともに、新しいファン層への広がりも見せている。今回更に新しい音楽領域に踏み込んだ感もあるEUROPEの新作「BAG OF BONES」についてバンドのシンガーであり、メインソングライターであるジョーイに語って貰った。

Muse On Muse (以下M) : 前回のインタビュー時にあなたは「次作はよりストレートでハードなロックアルバムかつ今までとは違ったものになる」と語っていました。今回出来上がったアルバムを聴いてみると、以前よりもよりハード、かつアグレッシヴであるとともにいずれの楽曲も作品として奥が深い、聴きごたえのある素晴らしいアルバムだと感じました。実際にアルバムが完成した今のあなたの気持ちをお聞かせ下さい。
Joey Tempest (以下JT) : 表現力や音楽的姿勢、少しブルースの味も入ったスタイル等、今までにない領域まで自分たちの音楽を持っていくことができたと思う。一線を越えてしまった感じだね。もう、戻ることはできないよ・・・でも、とても誇りに思っているんだ。

MM : 今回のアルバムのコンセプトについてお聞かせ下さい。
JT : 今までに自分たちが受けた影響や経験して来たことを元に、ともかくバンドの持っている魂に忠実な作品を作ること。今までのアルバムと比べて違うのは、今回のアルバムでは自分たちの最も古いルーツまでさかのぼっていることだ。ツェッペリンやパープルまでね!

MM : アルバムのジャケットからは呪術的な雰囲気も感じさせられましたが、このジャケットにはどのような意味が込められているのでしょうか?今までのあなた達のアルバムとはかなり異なる雰囲気を持つジャケットだと感じましたが。
JT : 僕たちはこのジャケットの絵を「呪いの机」と呼んでいる。そこに描かれている男がどんな人生経験をして来たか、神のみぞ知る。男は寝ているのか、死んでいるのか・・・見れば見るほど発見の多いアルバム・ジャケットでとても気に入っているんだ。実はGRAVEYARDSの最新アルバム『Hissingen Blues』のジャケットを見てこのアーティストと仕事をしたいと思ったのさ。仕事を依頼したら喜んで引き受けてくれたよ。素晴らしいアルバム・ジャケットだと思うね。今までの中でベストだ!

MM : 今作のプロデューサーであるKevin Shirley (ケヴィン・シャーリー) との仕事は如何でしたか?
JT : とても楽しかったよ! 60年代や70年代からの古い機材しか置いていないスタジオをストックホルム(Atlantis)で彼のために見つけて来たよ。彼は素晴らしい環境を作ってくれたし、暖かいクラシック・ロック系の音に2012年のパンチを加えた作品を作ってくれた。彼のレコーディングの手法をとても気に入った。これからもずっとこの手法でやりたいと思っているよ。

MM : 今作でのレコーディングはライヴ形式でのレコーディングだったそうですが、実際にその方法を試してみた感想は如何でしたか?
JT : 今までもずっとライヴ形式のレコーディングをやっていたよ。ただし、今までと違ったのは、今回は全員ヘッドホンをした状態で同じ部屋の中でレコーディングをしたということだよ。今まではブースやコンソール・ルームに別れて録音していることが多かったんだ。
でも、最も異なる点は一曲ずつレコーディングを進めたこと。一曲丸々完成させるまで次の曲の録音を始めなかったということなんだ。だから、メンバー全員がレコーディングの初日から最終日までずっとスタジオにいた。そうすることによってメンバー全員がレコーディングにおける様々な作業に常に携わっていたことになる。素晴らしいレコーディング方法だと思ったね。最初の一週間の間にドラムとベースを録り終えてから上モノをオヴァーダブするやり方にはもう絶対に戻らないよ。イアンとレヴィンはいつも5、6日で終わっていたからね・・・。

MM : ライヴ形式のレコーディングはあなた方のようにライヴで鍛え抜かれた実力派バンドでなければ難しい気がします。昨今の音楽シーンでは生の演奏によるリアルな音が収録される作品が少なくなってきているように感じますが、あなたはどのように感じていますか?
JT : 自分たちの楽曲を書いて、なおかつツアーを沢山やるバンドにとって、このやり方が最も適していると思う。ただし、自信がないとできないかもしれないね。


Photo by Fredrik Etoall

MM : アルバムの冒頭を飾る”Riches To Rage”ではJohn Norumのアグレッシブなギタープレイを聴くことができます。今回はアルバム全体を通してあなたの歌は勿論のこと、Johnのギタープレイもアクセル全開ですね。
JT : “Riches To Rage”はアルバムの中でも特に気に入っている曲のひとつだ。曲のアティチュードもいいし、歌詞も面白い。この曲の歌詞を書いている時に、前に進むためには過去を破壊しないといけないという感情があったんだ。だから、このような強い歌詞が生まれたのさ。
『Bag Of Bones』におけるジョン・ノーラムのプレイは素晴らしいね。今回はあまりギター・ソロを作り込みたくないと本人は言っていた。むしろその場でソロを弾くことを今回は望んでいた。ともかく彼の音、そしてトーンが好きだね。非凡なギタリストだよ!
自分にとっては初めて何の制限ない状態で、自分を自由に表現することができたと作品だと思っている。歌や歌詞が自然に流れ出た感じだ。もうスウェーデン語から英語に言葉を訳すこともなくなったしね。今では会話をする時も、考える時も、夢の中でも全て英語なんだ。自分の心や魂の中で感じていることをよりストレートに表現することができるようになったね。

MM : “Not Supposed To Sing The Blues”では曲の良さは勿論ですが、ハードなサウンドと共に効果的に鳴っているパーカッションのサウンドも印象的でした。今回のアルバムではあなた方の今までの作品とは違ったサウンドも狙っていたのでしょうか?
JT : このアルバムは結果的にクラシック・ロックに対するトリビュートのような作品に仕上がっているかもしれないね。自分たちの中で狙っている音があって、それをケヴィンがその方向へと導いてくれた。個人的には”Not Supposed To Sing The Blues”をとても誇りに思っているよ。やっと、こういう曲を書いて、レコーディングすることができたんだ。

MM : “Fire Box”では曲の冒頭から激しいギターとベースのリフ、そしてドラムにキーボードの幻想的な音が絡み合うとてもドラマチックな曲ですね。 曲の中間部もとても幻想的であり、あなたの歌を見事にサポートしています。
今作に収録された曲はどれも以前にも増して曲の細かい部分の隅々まで聴きどころが満載ですね!
JT : “Fire Box”はまさに花火のような曲だよ。リスナーを決して飽きさせない作りになっているね。元々、ミックがリフのアイディアを送って来て、それをベースに曲を作り上げていった。とても壮大な曲だ。早くライヴで演奏してみたいね!

MM : “Bag Of Bones”はLAST LOOK AT EDENツアーで疲れきったあなた自身のことが例えられているそうですが、この曲が作られた背景についてお聞かせ下さい。
JT : ツアー後(”Doghouse”以外に)書いた最初の歌詞だ。少しダーグな自分を表現している時、ちょうどロンドンの暴動も同じ時期に起こった。でも、それが自分にとっての出発点だった。自分の精神状態を歌詞にするのも初めで苦労もあった。でも、そこで止めずに作業を続けたら上手くいったのさ。その後、”Riches To Rage”や”Not Supposed To Sing The Blues”が割とスムーズに完成した。

MM : この曲ではジョー・ボナマッサがアコースティックギターで味のあるスライドプレイを披露していますがジョーが参加した経緯をお聞かせ下さい。
JT : ジョーと会ったのは2011年の夏。ストックホルムのライヴで彼はゲストとして参加し”Doghouse”を一緒に演奏してくれたんだ。レコーディング中、ケヴィンに頼んで、ジョーがアルバムに参加してくれるかどうかを確認してもらったら、彼は快く引き受けてくれた。メンバー全員、彼の音楽が大好きだったから参加してもらえてとても光栄に思っているよ。

MM : 5曲目にインストルメンタル小曲の”Requiem”が収録されていますが、この曲はアルバムの中でどういった位置づけ、効果を狙ったものなのでしょうか?
JT : ”My Woman My Friend”を録音中にミックが突然この暗いピアノ曲を弾きはじめたんだ。その場で録音しようと決めてアルバムに入れたのさ。元々は”Requiem For The 80s”というタイトルだった。

MM : “My Woman My Friend”ではあなたのボーカルスタイルに良い意味で枯れたブルージーな雰囲気が感じられました。作品を出すごとにあなたのボーカルもより味わい深くなっていますね。
JT : バンドメンバーやスタッフにはここ2年の間に声が変わったという意見があったのは事実だ。より深く、そして少しハスキーな声に変わったね。自分ではどうすることもできないんだけどね。でも、より深い声で歌うことによって歌詞や曲の持つ意味をより強調して歌えることができるのは確かだ。

MM : “Drink And A Smile”は今までのEUROPEでは聴くことが出来なかった新たな部分を聴かせる曲だと思いました。あなた自身はどのように感じていますか?
JT : これはレコーディングが終わる直前、ギリギリで書いた曲なんだ。70年代風のストレートな曲が欲しかったんだ。ちょっとしたお楽しみ的な曲だね。


Photo by Michael Johansson

MM : “Doghouse”や”Mercy You Mercy Me”はライヴで盛り上がりそうな勢いのある曲ですね。
JT : ”Doghouse”はライヴでもいい感じだよ。既に何回もライヴで演奏しているよ。”Mercy You Mercy Me”は典型的なジョーイ・テンペスト&ジョン・ノーラムが書くヘヴィロックな曲だ。ライヴでもきっと盛り上がるだろうね。

MM : アルバムのラストを飾る”Bring It All Home”はあなたらしさが出ている非常に美しく、そして温かいメロディを持ったナンバーですね。
JT : アルバムだけでなく、全てのエンディングに最も相応しい曲だ。2年後になるのか、20年後になるのかは分からないが、このバンドは最後にこの曲を演奏して最後のステージを降りていきたいと思っている。この曲の歌詞のアイディアはマーティン・スコセッシ監督の『ラスト・ワルツ』から得たものだ。曲自体は90年代に『Prisoners In Paradise』を書いている時にミックとジャムしてできたアイディアから作られている。

MM : 日本盤に収録されているボーナストラック”Beautiful Disaster”について教えて下さい。
JT : ストレートなロック・ソングだ。日本のファンにこのようなボーナストラックを聴かせることができるのはとても喜ばしいことだよ。

MM : ところでKee MarcelloがEUROPE在籍時代の曲を彼自身が歌い再レコーディングしたアルバム「REDUX:EUROPE」を発表しましたが、もう聴きましたか?
JT : いや、アルバムは聴いていないよ。どんなサウンドなのか分からないね。

MM : 今後の予定を教えて下さい。来日公演はいつ頃になりそうですか?
JT : 夏はイギリスのDownload Festivalをはじめとするヨーロッパのフェスティバルに出る。秋は北欧、イギリス、ヨーロッパ・ツアー。日本を含めたその他のエリアへのツアーは2013年に行われる予定だ。

MM : 日本のファンへメッセージをお願いします。
JT : 日本のみんなはファースト・アルバムからずっと応援をしてくれていた。他の国よりもずっと先にね。長い間、僕たちの友達でいてくれただけでなく、ずっとバンドを見捨てないでいてくれた。本当に感謝しているよ。きっと『Bag Of Bones』を気に入ってもらえると思っているよ。
元気でね!


BAG OF BONES / EUROPE
ビクターエンタテインメント
VICP-65047  ¥2,625(税込) / ¥2,500(税抜) 2012.4.18発売

01.RICHES TO RAGS 
02.NOT SUPPOSED TO SING THE BLUES 
03.FIREBOX 
04.BAG OF BONES 
05.REQUIEM 
06.MY WOMAN MY FRIEND 
07.DEMON HEAD 
08.DRINK AND A SMILE 
09.DOGHOUSE 
10.MERCY YOU MERCY ME 
11.BRING IT ALL HOME 
12.BEAUTIFUL DISASTER