Vol.147 Stevie Salas / September 2025

Stevie Salas

自由奔放かつ野性味があり、魂の宿った独自の音楽スタイルで多くのロックファンに衝撃を与え、今でも根強い人気を誇るプロデューサー、コンポーザー、シンガー、ギタリストであるスティーヴィー・サラスは、ジョージ・クリントン、ミック・ジャガー、ロッド・スチュアート、ジャスティン・ティンバーレイク、ビル・ラズウェルなど数多くのアーティストのツアーやレコーディングに参加するなどロック界において大きな実績を築いている。そんなスティーヴィー・サラスが1995年にスティーヴィー・サラス・カラーコード名義でリリースしたリアルなロック作品『バック・フロム・ザ・リビング』の30周年記念盤をリリースする。
1995年のリリース当時は国によって異なるジャケットと曲構成が採用されていた『バック・フロム・ザ・リビング』であるが、今回リリースされる30周年記念盤では1995年リリース時に国によって異なっていた収録曲をまとめたデラックスなコレクションとなっている。あらためて『バック・フロム・ザ・リビング』を聴くと30年を経た今聴いても普遍的なロックのカッコ良さを放つその音楽、ギタープレイ、サウンドに魅了される。時代の流行に媚びることなく、自分の音楽を貫く、魂が宿った作品『バック・フロム・ザ・リビング』についてスティーヴィー・サラスに訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura

Muse On Muse (以下MM) : あなたの作品『Back From The Living』が1995年リリースから30周年を記念してのデラックス・エディションとして発売されます。あなたの音楽キャリアの中でこの作品はどのように位置づけられますか?
Stevie Salas (以下SS) : 『Back From The Living』は自分のソロキャリアにおいて最も重要な作品だと思う。完成までに4年かかったけど、自分の人生はこのリリースによって大きく変わったよ。

MM : デラックスエディションではCDが全18曲、2枚組レコードは全20曲が収録されています。今回のデラックスエディションで追加されている楽曲について教えて下さい。
SS : この作品は中国を含むいくつかの国でリリースされたんだけど、国ごとにボーナストラックが異なっていたんだ。そこでレーベルがそれらのトラックを全て探し出して、今回のデラックスエディションにそれら全てを収録したんだ。

MM : 「Tell Your Story Walkin’」は30年を経た今聴いても普遍的なカッコ良さを放っています。あらためてこの曲の誕生に至るまでの物語をお聞かせ下さい。
SS : 「Tell Your Story Walkin’」を完成させた時、自分にしかできないサウンドを作り上げたと感じたよ。他の誰でもない自分の音。ロックやオルタナティヴに深く傾倒しつつ、同時にファンクやジェームス・ブラウンにも夢中だった。最初に取り掛かったベースラインがブーツィ・コリンズが弾くジェームス・ブラウンの「Soul Power」や「Sex Machine」的なリフに聴こえたんだ。そこにクリーンなロックギターと自分スタイルのギターを重ねた。さらにAC/DCのようなパワーコードがフィットすると思ってそれを乗せて完成したんだ。今でも若い世代からすごい曲を発見したとメッセージが届くのが嬉しいよ。最初はドラマーにブライアン・ティッシー、ベースに24/7 Spyzのリック・スカトーレを迎えて録音したけど、その1年後に再びブライアンとT.M.スティーヴンスと一緒に録音したテイクが魔法のように素晴らしかった。その後、使わなかった最初の録音をスローなテンポに編集して「Much Ado About Buttin’」という曲に生まれ変わったんだ。

MM : この作品におけるあなたのギターについても同様に今聴いても素晴らしい音を放っています。ギターの音作りといった部分であなたが大切にしていることや秘訣について教えて下さい。
SS : まず自分の手が動き出して音を作り出すんだ、サウンドに関してはヴィンテージスタイルの出力の低いピックアップや、古いマーシャル、65年製フェンダー・デラックス・リバーブが大好きなだよ。多くのギターを使ったけれど、何を弾いても結局は自分の音になってしまうね。

MM : この作品では「Tell Your Story Walkin’」や「Crack Killed Applejack」、「The Lying Truth」などT.M.スティーヴンスがベースで参加している曲も入っています。彼の生前においてバンドでプレイした際の印象的な想い出やあなたの楽曲における彼の貢献についてお聞かせ下さい。
SS : T.M.スティーヴンスのエネルギーは人間離れしていた。彼の笑顔は場を一瞬で明るくするし、演奏はそのままテープに焼き付くようなパワーがあった。本物のプロフェッショナルであり、大切な友人だった。とても惜しまれる人間だよ。

MM : この作品はあなたのギタープレイとバンドのリズム隊が生みだすグルーヴが最高ですが、あなた自身が楽曲におけるギタープレイについて意識していることはどういったことでしょうか。
SS : すべてはドラムとグルーヴから始まるんだ。今でもINABA/SALASの曲を書く時は同じやり方をしている。まずギターが入る隙間を見つけて埋めていく。でも全部は埋めずに“間”を残す。音と沈黙のバランスこそがサウンドを大きく響かせるんだ。

MM : それではベースやドラムに対してはどのようなことを求めていますか。あなたがバンドにベーシストやドラマーを迎え入れる際にどのようなことを基準にしているのか教えて下さい。
SS : ドラムは難しいね。トニー・トンプソン、ブライアン・ティッシー、デイヴ・アブラジーズ、ウィンストン・A・ワトソンJr、マット・ソーラム、チャド・スミス、デイヴ・グロールといったドラマーがお気に入りだよ。ハードにドラムを叩けること、オルタナロックにパンク的なエネルギーを注ぎ込める事、両手のフラム・フィルを駆使できる事、ファンクを理解して爆音でプレイできること。ベーシストは曲によっていろいろ使い分けているよ。デヴィッド・ボウイのように流れるラインが必要な曲もあれば、ジェームス・ブラウン的な強烈なファンクが必要な曲もある。だけど自分にとって一番大事なのはやはりドラムだ。

MM : この作品から30年を経た現在、あなたはよりトータルな音楽的視野を持つプロデューサーとしても活躍しています。あなたから見て当時と現在ではミュージックビジネスやそこに携わるミュージシャンの在り方はどのように変わりましたか。
SS : 自分は今でも映画音楽を手がけたり、MC5やINABA/SALASのような大好きなバンドと作品を作れるていて幸運だと思う。でも音楽ビジネス自体は今は厳しい状況で、若いミュージシャンが成長段階でサポートを受けられないのは本当に気の毒に思うよ。自分自身キャリアはもう終わったと思ったことも何度もあったけど、そのたびにミック・ジャガーや稲葉浩志から連絡が来て、再び現場に戻ってこれたんだ。

MM : 多くの人達に自らが創り出す音楽を届け、楽しんでもらいたいと音楽に真剣に取り組んでいる今の新しい世代の人達にあなたはどのようなアドバイスを送りますか。
SS : 自分が愛する音楽を作り続けること。そして決して諦めないこと。いつどこでチャンスが巡ってくるかは分からないんだ。

MM : Stevie Salas Colorcodeとして新たな作品の制作やライヴ活動の構想などはありますか。
SS : もしかしたら何かリリースするかもしれない。皆には知られていないけど古い曲の中に良いミックスがたくさんあって、それを形にする事ができるだろう。日本にもトリオでツアーに行きたいけど、それにはプロモーターの存在が必要だね。

MM : ファンへのメッセージをお願いします。
SS : 長い間自分に優しく接してくれたファンに心から感謝している。今年はINABA/SALASで大規模なツアーを行って、たくさんの旧友に会うことができた。ファンのみんなへ伝えたいのは感謝の気持ちだよ。ありがとう!

 


https://www.dekoentertainment.com/stevie-salas

<CD>
TRACKLIST (6-PANEL DIGIPAK)
1. Tell Your Story Walkin’
2. Crack Killed Apple Jack
3. I Once Was There
4. Wonderin’
5. Start Again
6. Born To Mack
7. The Lying Truth
8. Without Love
9. Amelia
10. God I’m Going Down
11. Much Ado About Buttin’ [Suckermangrubby Mouth Mix]
12. I Need You
13. I Think You Need To Think
14. Shake This Town
15. Show Me Some Emotion
16. A Journey Into The Middle Ages
17. Tell Your Story Walkin’ [Mug Masher Remix]
18. Crack Killed Apple Jack [Gravy Booty Remix]

<LP>
TRACKLIST (DOUBLE ALBUM – GATEFOLD)
1. Tell Your Story Walkin’
2. Crack Killed Apple Jack
3. I Once Was There
4. Wonderin’
5. Start Again
6. Born To Mack
7. The Lying Truth
8. Without Love
9. Amelia
10. God I’m Going Down
11. Much Ado About Buttin’ [Suckermangrubby Mouth Mix]
12. I Need You
13. I Think You Need To Think
14. Shake This Town
15. Show Me Some Emotion
16. A Journey Into The Middle Ages
17. Tell Your Story Walkin’ [Mug Masher Remix]
18. Crack Killed Apple Jack [Gravy Booty Remix]
19. Start Again [Live]
20. The Walls Came Down [Live]