Vol.145 Pete Lesperance / May 2025

Pete Lesperance


Photo by Kevin Vyse Photography

HAREM SCAREMが5年ぶりとなるニューアルバム『CHASING EUPHORIA』をリリースした。珠玉のメロディック・ハードロックにて根強くファンかの支持を集めるHAREM SCAREMであるが、本作品でもハリー・ヘスの歌声によるキャッチーでメロディックな旋律とそれを支えるコーラスワーク、そしてピート・レスペランスによる曲を牽引するフックのあるギター・リフやクレバーでセンスあるツボを押さえたギター・ソロ等、聴きどころが満載。ファンの期待に十二分に応える作品となっている。ニューアルバム『CHASING EUPHORIA』についてピート・レスペランスに訊いた。


Photo by Kevin Vyse Photography

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura

Muse On Muse (以下MM) : 今回の作品に取り掛かるに際して、その方向性についてメンバーとはどのようなことを話しましたか?
Pete Lesperance (以下PL) : ハリーと俺が曲を書き始める時はいつも「とにかく最高の曲を作る」ってことを中心に考えてるよ。音楽が形になってきて初めて自然とアルバムの方向性が見えてくる感じだね。

MM : 前作のインタビューにおいてあなたは「一番重要で難しいパートはソングライティングで、急がずに時間をかけて取り組んだ」と話していました。新作におけるプロセスについて教えて下さい。
PL : 作曲に一番時間がかかるのは間違いないね。今回のアルバム全体で、曲作りからレコーディングまでだいたい7ヶ月ぐらいはかかったよ。ハリー、クレイトン、俺の3人で、それぞれのホームスタジオで曲を書きながら同時に録っていった。これまで何度も一緒にやってきてるからレコーディングはもう完全に自然な流れになってるね。

MM : 新作でもアルバムジャケットのイラストがミステリアスで印象的です。前作までと同様にアンドレ・ブレックマークが手掛けているのでしょうか?
PL : そう今回もアンドレにお願いしたんだ。彼のコンセプトはとても緻密で、細部へのこだわりが本当にすごい。「Chasing Euphoria」のビデオでも彼のアートが活きていて、俺たちの音楽との相性が抜群なんだ。

MM : アルバムはメロディックかつ力強い、とてもハーレム・スキャーレムらしい楽曲 “Chasing Euphoria” で幕を開けます。アルバムのタイトルにもなっているこの曲について教えて下さい。
PL : “Chasing Euphoria” は、幸福をずっと追求していく事がテーマだね。人生の中で次から次へとスリルや刺激を探し続ける。そんな感覚を表現してるんだ。

MM : 続く2曲目の”Slow Burn”やエンディング曲である”Wasted Years”が持つ疾走感は聴き手を高揚させます。
PL : 今回のアルバムは、とにかくアップテンポでエネルギッシュな作品にしたいと思っていた。だからこの2曲のリフのアイディアは、その方向性にぴったりだった。そう感じてもらえて嬉しいよ。

MM : ミディアムテンポの中で導入から感動的なテーマに向かって曲が展開していく”Better The Devil You Know”、”In A Bad Way”、”Reliving History” といった曲でも真にハーレム・スキャーレムといったフォーマットが聴き手を惹きつけます。
PL : “Better The Devil You Know”は元々アルバム”Change The World”用に書いた曲だったんだけど、そのときはしっくりこなかったから一度外して、今回のアルバムで復活させた。“In A Bad Way”は、最初のデモではハリーが歌ってた。でもダレンの声の方が合うと思って、ボーカルを録り直したんだ。“Reliving History”は、今アルバムの最初のシングルとしてリリースした曲で、リリックビデオも同時公開した。日本盤に収録されてるアコースティック・バージョンも最高なんだ。

MM : “Gotta Keep Your Head Up”、”A Falling Knife”、そして”Understand It All”では冒頭からのフックのあるギターのリフが聴き手を曲に惹きこみます。
PL : ありがとう!俺がいつも目指してるのは”Crazy Train”や”Ain’t Talkin’ ‘Bout Love”みたいに、ギタリストが思わず弾いてみたくなるようなリフ。そんなクールで印象的なリフを作れたらと思ってるよ。


Photo by Al Piazza

MM : あなたは今作でもハリーとのソングライティング、そしてギターワークで魅力ある最高のメロディック・ハードロックを創り出すことに成功しています。先の質問で新作におけるソングライティングのプロセスについてはお聞きしましたが、ソングライティング後のギターリフのアレンジ方法やギターソロへのアプローチ方法についてお聞かせ下さい。
PL : リフを書くときは、若いギタリストだった自分がインスパイアされて弾きたくなるようなリフを意識している。テクニックを入れつつも、彼らが弾けるようなリフだね。16作もアルバムを作っていると、どうやって同じことの繰り返しをせずに新鮮さを保つかが最大の課題だね。ソロに関していつもやっているやり方は、まずそのセクションに合わせて即興で弾いてみて、良いと思うフレーズが出てきたら、そこを起点にして組み立てていく。すべてのソロはしっかり書かれたもので、ライブでもレコーディング通りに弾いているよ。

MM : 今作でも楽曲を彩るギターサウンドが素晴らしいですが使用しているギター、アンプ、エフェクター、ペダルについて教えて下さい。
PL : 今回のアルバムはほぼ全編、Evertuneブリッジを搭載したLes Paul Studioで録音したんだ。“World On Fire”のソロだけは、Floyd Rose付きのCharvelを使った。アンプは使ってなくて、Neural DSP Quad Cortexを通してUniversal Audioの Apolloにダイレクトで録った。

MM : あなたはハーレム・スキャーレムとは別にSmoke and Ashesでも活動していますが、Smoke and Ashesについて教えていただけますか?
PL : Smoke & Ashesは、友人のアーロン・アレンとコロナ渦の時に始めたカントリーロック・プロジェクトだね。最初は俺のソロ用に”High On Sunday”を一緒に書いたんだけど、作業がすごく楽しかったから続けてやっていこうって話になって正式にデュオを組むことにした。その後7週間で7曲書き上げて、2021年からシングルとして順にリリースしてる。最新曲の”The Great Unknown”も出たばかりで、今リリックビデオを制作中だよ。

MM : 今後の予定について教えて下さい。
PL : 4〜5月にヨーロッパツアーを予定してる。残念ながら、今のところ日本公演の予定はない。今のところはね。

MM : ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
PL : 長い間ずっと聴いてくれて本当にありがとう。『CHASING EUPHORIA』も楽しんでくれたら嬉しい。また近いうちに日本でプレイできることを願っているよ!

 


Harem Scarem / Chasing Euphoria

1.Chasing Euphoria
2.Better The Devil You Know
3.Slow Burn
4.Gotta Keep Your Head Up
5.World On Fire
6.Bad Way
7.Reliving History
8.A Falling Knife
9.Understand It All
10.Wasted Years

Line Up:
Harry Hess – Lead & Backing Vocals, Keyboards
Pete Lesperance – Guitars and Bass
Creighton Doane – Drums
Darren Smith – Lead and Backing Vocals