Vol.138 TODAY WAS YESTERDAY / March 2024

TODAY WAS YESTERDAY

The Doors 21st Centuryのバンドメンバーとして共に活動していたアンジェロ・バルベラとタイ・デニスが音楽ユニットTODAY WAS YESTERDAY を結成し、セルフタイトルのデビューアルバム『TODAY WAS YESTERDAY』をリリースした。このアルバムには全10曲が収録されており、収録曲中の6曲にロックの殿堂入りを果たしたラッシュのアレックス・ライフソン、1曲にザ・ドアーズのロビー・クリーガーがゲストギタリストとして参加している。アルバムでは、ジャパン、ジェネシス、ティアーズ・フォー・フィアーズなど芸術的で美しく陰影のある音楽やレッド・ツエッペリン、ラッシュなどの実験的な音楽からの影響を彼等独自の音楽として昇華させているとともに、その一方で複雑でありながらも馴染みやすいキャッチーさを持ち合わせることに成功している。アンジェロ・バルベラ[ボーカル、ベース、ギター、キーボ-ド]とタイ・デニス[ドラム、パーカッション、プログラミング]にユニットの結成経緯やデビューアルバム『TODAY WAS YESTERDAY』について聞いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura


L) Ty Dennis  R) Angelo Barbera

Muse On Muse (以下MM) : まずはあなたたちの自己紹介も兼ねてこれまでの音楽キャリアをお聞かせ下さい。
Angelo Barbera (以下AB) : はじめまして皆さん、アンジェロ・バルベラです。25年以上にわたりタイ・デニスと共にツアーとスタジオでベーシスト/ソングライターとして活動してきたよ。
Ty Dennis (以下TD) : 皆さん、タイ・デニスです。ロサンゼルスを拠点に活動するスタジオ/ライブドラマーで、世界中で演奏し、たくさんの素晴らしい音楽をレコーディングする機会に恵まれました。僕のキャリアのハイライトは、アンジェロと共に創り上げたこの「Today Was Yesterday」のレコードだね。

MM : Today was Yesterdayを結成しデビューに至った経緯を教えて下さい。
TD :  このバンドは当初レコーディング・プロジェクトとしてスタートした。アンジェロも僕も録音された曲が大好きで、そのプロジェクトでアレックス・ライフソンやロビー・クリーガーのような素晴らしい才能と繋がることができた。彼らのおかげで僕たちのサウンドが形成され、その結果、1stアルバムとして実現させることがでたよ。

MM : ユニット名を “Today was Yesterday” としたのはなぜでしょうか。
TD : このグループ名はアンジェロと僕が約30年にわたり音楽を通じて歩んできた個人的な歴史を表している。昔から変わらない創作に対しての意欲、そして僕が愛する昔のクラシックアルバムからの影響も感じさせる名前にしたよ。

MM : デビュー作品である『Today was Yesterday』は実験的でアート的な要素を持ちながらも決して一部のマニア向けの音楽ではなく、リアルな音楽を愛する音楽ファンに広く受け入れられる要素を持ち合わせた楽曲が揃ったとても素晴らしい作品です。
AB : ありがとう。僕はいつもメロディ、リズムと即興性を重んじる音楽に魅力を感じていて、レッド・ツェッペリン、ジェネシス、ザ・フー、スティーリー・ダンなど、偉大なミュージシャンたちからの影響を受けているよ。
TD : そう言ってくれると嬉しいよ。私たちは自分たちが聞きたいと思う音楽を作ったんだ。皆さんにもそれが伝わればと思っているよ。

MM : アルバムのプロデュースには、あなた達とクラーク・スーターがクレジットされています。それぞれの役割について教えて下さい。
TD : アンジェロが主なソングライターで、歌とベース、キーボード、一部のギターを担当しているよ。僕はドラムとパーカッションを演奏し、曲作りにも協力している。僕らとクラーク・スーターが共同でプロデュースしていて、音楽に対する共通のビジョンを持って制作したよ。クラークは素晴らしい音楽的な直感を持っていて、彼の力を借りてこのアルバムを完成させることができた。

MM : 収録されている楽曲は全てAngeloとTyの共同作曲となっていますが、2人での曲作りはどのように行われているのでしょうか。
AB : 曲作りはいつもメロディから始めるよ。そのメロディが骨格となり、その上にリズムやハーモニーを加えて構成していくんだ。それが完成形になるまで作曲を進めていくという流れだね。
TD : アンジェロが作った曲の骨組みを聞いて、その上にドラムパートを構築していく。曲のニュアンスやボーカルメロディに合わせて、曲にフィットするドラムアレンジを心がけているよ。

MM : アルバムには6曲でRushのアレックス・ライフソンが参加しています。彼が参加することとなった経緯についてお聞かせ下さい。
TD : アレックスとはDoorsのロビー・クリーガーを通じて出会ったんだよ。ロサンゼルスで開催されチャリティーショーで彼と何度か共演して、その後「Today Was Yesterday」の曲の当時のテイクをいくつか彼に聴かせた。アレックスはそれを気に入ってくれて、ギターを弾いてくれることになった。本当に光栄だと思っているよ。

MM : 彼はRUSHで確固たるスタイルを確立しているギタリストですが、Today was Yesterdayの楽曲でプレイしてもらうにあたって彼等にはどのようなことを求めましたか。
TD : 実は彼にどんな感じで弾いてほしいといった具体的なリクエストをしたことは一度もないんだ。彼は完璧なパートを演奏してくれた。彼の素晴らしいパートが僕たちの曲に与えてくれた影響はパーフェクトだったね。

MM : 哀愁あるjazzyな雰囲気が魅力を放つ “If I Fall (Silly Games)” では、The Doorsのロビー・クリーガーが実に曲にマッチしたなギタープレイを聴かせてくれます。
AB : この曲を作るときに、ある特定のグルーヴが頭にあったんだ。それを基に作曲したんだけど何度も作り直したよ。音楽的にはとてもジャジーで、歌詞の内容は人生でチャンスを掴むことを恐れることについてという内容、でも詰まる所全てが「Silly Games」つまり馬鹿げたお遊びだってことだね。ロビーはそのメロディと感情的な部分を完璧に表現してくれたよ。

MM : アレックス・ライフソンやロビー・クリーガーが参加している楽曲ではギターパートは全て彼等が担っているのでしょうか。それともベーシックな部分はアンジェロによるものでしょうか。
AB : 作曲時は僕がギターパートを作っていたんだけど、アレックスとロビーが加わることになった時に、彼らのパートが際立つように私のパートを控えめな演奏にしたんだ。アレックスとロビーのパートは彼らの独自のアイデアでやってくれたね。

MM : “I Take All”、”Rukes”、”Borrowed”ではクレジットを見る限りゲストミュージシャンが招かれていない楽曲ですが、ゲストがなくてもToday was Yesterdayの独自の世界感があることを認識できるオリジナリティが感じられます。
AB : 実はこの3曲には2人以上のゲストが参加しているんだ。”I Take All”、”Rukus”、”Borrowed”の3トラックにはマイク・ミッシェルが、”Rukus”にはマックス・ルッソがサックスで、”I Take All”にはエド・ロスがRhodesピアノとハモンドB3オルガンで参加しているよ。

MM : アルバムに収録されているそれぞれの曲について、曲が生まれるまでの経緯やエピソード等をお聞かせ下さい。
AB :
“GRACE (feat. Alex Lifeson)”
この曲は、現在アメリカを含む世界中で問題となっている楽物、フェンタニルの流行について書いているよ。

“A Louder Silence (feat. Alex Lifeson)”
この曲は、事実よりも個人の意見やストーリーが優先される現代の状況を、歌詞と音楽で表現している。

“On My Own (feat. Alex Lifeson)”
比喩やメタファーを使って離婚について歌った曲だよ。

“I Take All”
この曲「I Take All」は他人のマインドを操ろうとする人々についての曲だね。

“My Dog Is My God (feat. Alex Lifeson)”
犬を愛する人なら誰もが経験するような、犬との生活の始まりから終わりまで、良い時代から悪い時代まで全ての段階について書かれた曲だね。

“Faceless Faraway Song (feat. Alex Lifeson)”
恋愛についての歌なのか別れについての歌なのか、僕もはっきりわかっていないような比喩的な曲だね。

“If I Fall (Silly Games) (feat. Robby Krieger)”
僕たちが人生の上でよく出会うような、自信のなさや恐怖のために才能を活かせずにいる人々についての曲だね。

“Rukus”
この曲は基本的に、世界で起きている出来事と僕らの未来の不確実性に対して僕たちの見解を歌った曲だ。

“Borrowed”
この曲はナルシシズムやクソみたいなやり方、生き方について比喩を用いて書いた曲だね。

“My New Low (feat. Alex Lifeson)”
コロナ渦でのロックダウンと、その中でもポジティブなものを見出そうとする試みについての曲だね。このアルバムの制作はパンデミック中にスタートしたんだけど間違いなくポジティブな出来事だったね。

MM : 今作品では70年代や80年代といったRockがまだまだ進化の余地を持っていた良き時代のエッセンスを現代的に復刻することに成功しています。あなた達にとっての70年代~80年代の音楽はどうでしたか。そして現在の音楽シーンについてはどのように感じていますか。
AB : 僕にとっての黄金時代は、The Who、Zeppelin、Genesis達のアルバムがリリースされるのを楽しみに待つ子供時代だったね。80年代にはTears for Fears、Level 42、Peter Gabrielといったバンドがお気に入りで、それが僕の青春時代の輝きだったよ。現代は流行のサイクルが早い時代になってしまった。それでも音楽がよりアクセスしやすくなった点などポジティブな面も感じているよ。
TD : 僕のお気に入りの音楽は今でも70年代と80年代の音楽だね。自分が若くて色々な音楽をスポンジのように吸収していた時に突き動かされた素晴らしいバンドやクラシックなレコードと今でも繋がっている。僕にとって最近の音楽は完璧を目指しすぎるあまり魂や人間らしさを失っているように思う。不完全性は時として魔法を起こすことがあるからね。完璧じゃなくてもいいんだよ!

MM : Today was Yesterdayとしての今後の展望をお聞かせ下さい。
TD : 僕たちのウェブサイト https://www.todaywasyesterday.com/ で僕達の活動のインフォを更新しているので興味のある皆さんにはチェックして欲しい。物販も行うよ!

MM : あなた達の音楽と巡り合った音楽ファンへのメッセージをお願いします。

AB : 皆さんのサポートに感謝してします。愛しているよ!
TD : 僕達の音楽を聴いてくれてありがとう、本当に感謝しているよ!

TODAY WAS YESTERDAY official website https://www.todaywasyesterday.com/


TODAY WAS YESTERDAY / TODAY WAS YESTERDAY (FEAT. ALEX LIFESON)
1. GRACE (feat. Alex Lifeson)
2. A Louder Silence (feat. Alex Lifeson)
3. On My Own (feat. Alex Lifeson)
4. I Take All
5. My Dog Is My God (feat. Alex Lifeson)
6. Faceless Faraway Song (feat. Alex Lifeson)
7. If I Fall (Silly Games) (feat. Robby Krieger)
8. Rukus
9. Borrowed
10. My New Low (feat. Alex Lifeson)