Vol.112 Michael Landau / August 2020

Michael Landau


Photo by Austin Hargrave

マイケル・ランドウが、ロサンゼルスの歴史ある老舗ジャズ・クラブであるBaked Potato Jazz Clubにて、2019年11月に行ったライヴパフォーマンスを収録した作品「Liquid Quartet Live」をリリース。マイケル・ランドウ(ギター)、エイブ・ラボリエル・ジュニア(ドラム)、ジミー・ジョンソン(ベース)、デヴィッド・フレイジー(ギター&ヴォーカル)・・このアルバムは、本物のミュージシャン達による臨場感あふれる白熱したリアルな音楽を堪能できる素晴らしいライヴ作品となっている。ダイナミクスに溢れた最高峰の表現力を誇るギタープレイ、そして極上のギターサウンド、多くのギタリストからリスペクトを受けると共にリアル志向なコアな音楽ファンからも絶大な支持を得ているミュージシャン、マイケル・ランドウに「Liquid Quartet Live」について訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura


Photo by Austin Hargrave

Muse On Muse (以下MM) : 「Liquid Quartet Live」では本物のミュージシャンによる臨場感あふれる白熱した音楽を堪能できる素晴らしいライヴ作品となっています。
Michael Landau (以下ML) : ありがとう。昨年末にBaked Potato Clubを二夜にわたって押さえる事ができたから、ライブの録音を僕のお気に入りのエンジニアであるジョン・パターノに頼んだんだ。1公演は75分間行われ、二日間のライブ・レコーディングの中でベストなパフォーマンスをチョイスして作品にまとめている。録音はジョンのリモート録音のセットアップを使用したよ。すごくクオリティの高いマイクプリやアナログ/デジタルコンバーターなんかもあったね。ジョンは録音だけじゃなくミックスとマスタリングも担当してくれた。全体的なサウンドの質はすごく高く、とても美しい作品にしてくれたと思ってるよ。

MM : あなたのソロ名義では、これまでに「Michael Landau Live 2000」や「The Michael Landau Group-Live」がリリースされていますが、今回、新たなライヴ作品をリリースすることになった経緯について教えて下さい。
ML : ポール・マッカートニーとツアー中のドラマー、エイブ・ラボリエル・ジュニアのスケジュールの中に空ができたんだ。僕にとって、エイブ、ジミー・ジョンソン、デヴィッド・フレイジーと一緒にプレイできる時はいつでも特別な機会なんだ。デヴィッドとは「Rock Bottom」に続く次のスタジオアルバムを制作している途中なんだけど、エイブがライブに参加できるってことになったから、ショーをライブ録音することに決めたんだ。とてもスペシャルな面子だから本当にやれてよかったと思ってるよ。

MM : セットリストには、あなたのソロ作品「Rock Bottom」からの選曲の他にも、Burning WaterやRenegade Creationからの曲が入っていますが、これらはどのような理由で選曲されたのでしょうか?
ML : これまでの間、ずっと多くのバンドに曲を提供してきたから、公演でプレイできる曲数は十分にあったんだ。ライブで演る時は色々な曲を混ぜるてライブするのが好きだから色々なアルバムからの曲を演奏する事にした。デヴィッドとやる事で、彼とカルロス・ヴェガ、僕の弟のベーシストのテディー・ランドウと僕の4人で、90年代前半に活動していたBurning Waterの曲を演奏する事もできたんだ。このバンドに対しては、すごくノスタルジックな気持ちを持っているよ。一つのライブの中で、アルバム「Rock Bottom」からの曲 ”Bad Friend” のような荒々しい曲から、Burning Water時代の” Killing Time” のようなバラードにシフトチェンジするのも好きなんだ。色々な曲を混ぜる事でフレッシュなライブになるからね。

MM : 今作では、新曲 “Well Let’s Just See”、”Can’t Walk Away From It Now”も披露されています。これら曲について教えて下さい。
ML : この二曲はデヴィッドと昨年に書いた曲で、昨年の中頃くらいからライブでも演奏してきた。このライブアルバムを新鮮で面白くする為に入れたんだ。デヴィッドが書いた ”Can’t Walk Away From It Now” の歌詞はシンプルなんだけど、核心を突いているので大好きなんだ。

MM : “Bad Friend”、”One Tear Away”などをはじめ、どの曲もライヴならではのよりロック度が増した熱いプレイが炸裂しています。
ML : 僕は典型的な双子座で、荒々しくてパンク・ロックのような性格を持つ一方、落ち着いて静かな一面もあるから、雰囲気を落ち着かせるような静かで美しい曲も演奏して、ライブ全体のバランスを取るようにするんだ。自分の音楽の中にアップダウンがあるのが好きだね。全体のバランスが大事なんだ。

MM : “Tunnel 88″では、美しいサウンドに始まり、曲の後半にはアグレッシヴで圧巻なギタープレイが聴けます。
ML : 新しいインストの曲だね。この曲も激しく強度の強いパートと、静かで美しいパートが曲の中にあって、僕の双子座のキャラクターを表している。曲を通じて旅に出るように、その曲の世界へ持っていかれる音楽が好きなんだ。長い旅の間にはトラブルや困難も付きまとう。音楽にもそういった旅のアップダウン的な部分が反映されるんだ。2年前、香港でライブした時、かなり酔っ払っていた二人組の女の子と楽屋で話したんだけど、彼女たちは悪い意味じゃなく凄く楽しんでいて、その時に彼女たちが飲んでいた酒がトンネル88という酒だった。そこからインスパイアされて曲のタイトルにしたんだ。

MM : あなたはライヴにおいてもダイナミクスに溢れた極上のギターサウンドを創り出しています。極上のサウンドを創り出す上で、精神面、テクニック面、機材面のそれぞれにおけるあなたのアプローチ方法をお聞かせ下さい。
ML : ヴォリューム・ペダルの前にVoodoo-1とMaxon SD9という二種類のディストーション・ペダルをかましていて、どちらかのディストーションは必ずオンになっている。このテクニックを使うとどんな大音量であってもクリーンな音と歪んだ音を瞬間的に混ぜて作り出すことができる。それによって音楽にダイナミクスが生まれるんだ。その他にもピックを使わず指で弾く事により、様々な音色を奏でることができるんだよ。

MM : 今作のライヴで使用したギター、アンプ、ペダル類を教えて下さい。
ML : ギターはフェンダーのカスタム・ショップのストラトキャスターにLollar Imperialのハムバッカーを付けて使用している。2つのアンプはDumbleの50ワットのSlidewinderとKerry Wrightの4×12キャビネットにヴィンテージのCelestion G12-65スピーカーを搭載して使用しているよ。セカンドアンプにはフェンダーのHot Rod Deville ML 212を使用している。
[ペダル類についてはマイケル本人提供の以下の画像を参照]

ドライ・ペダルボード

ウェット・ペダルボード

MM : 他のミュージシャンの曲のレコーディングで聴けるあなたのクレバーなギタープレイは、とても魅力的ですが、あなた自身のライヴにおける、制約から解き放たれた自由奔放にインプロバイズし、ロックするあなたは更に魅力的であり、多くのギタープレイヤーや聴き手を虜にします。あなた自身はスタジオワーク、ライヴのそれぞれについてどのように考えていますか?
ML : もともとセッションミュージシャンを目指していたわけではないからね。10才の時からビートルズに入りたいって思っていて、今でもそう思っているよ(笑)。自分のバンドで演奏する音楽は、ビートルズ、Cream、Jimi HendrixやLed Zeppelinなんかの小さい時から聴いてきた全ての音楽の影響を受けているんだ。僕の祖父はDorsey BrothersやBenny Goodmanの時代に、スウィング・ジャズのアルトサックス奏者兼アレンジャーをやっていた人だったから、小さい時からジャズの影響も受けているんだ。だから僕の中にはそういった音楽が混在しているよ。セッションミュージシャンとして参加した音楽は、自分が本当に好きな音楽とはかなり違うからね。ただし、Joni Mitchell、Pink Floyd、B.B KingやJames Taylorといった人達との仕事は例外だね。でも全ての音楽をリスペクトしているし、全ての仕事に対して誠実に取り組んできたよ。

MM : あなたはこれまでに数多くのミュージシャンのアルバムに参加し、その曲を印象付ける数々の名演と称えられるギターソロも残しています。”A Whole New World”のギターソロもその1つですが、こういった曲のソロは予めメロディが指定されていたのでしょうか? それともレコーディング時にその場でインプロヴァイズしたものでしょうか?
ML : ポップ・ミュージックのケースで言うと、ほとんどの場合プロデューサーがヴォーカルメロディーに近い形のギターソロを好む傾向がある。だからソロの前半はメロディーをなぞるような形でスタートさせて、後半では崩して自分の即興を自由に盛り込むって言うスタイルでやった事が多かったね。

MM : ところで、Covid-19(コロナ)は世界中で猛威を見せており、音楽業界にも大きなダメージを与えています。今作の舞台であるBaked Potato Jazz Clubも大きな影響を受けています。あなた自身は現在の状況についてどのように受け止めていますか?
ML : 今の複雑な状況に関して僕自身も答えを見つけられていない。ただ言える事は、色々な意味で新しい時代が始まったという事だ。この地球規模の問題に対して我々が団結して乗り越えることができればと思っているよ。音楽に関しては今までずっと自分には音楽があったように、この時代に入ってもかつてないくらい音楽を愛しているんだ。音楽を楽しむ事に関して、コロナウイルスが邪魔できる事は無いからね!

MM : あなたにとって、Baked Potato Jazz Clubとはどのような存在なのでしょうか。
ML : The Baked Potatoはユニークな場所で、小さなステージは箱の中心に位置していて、観客は両側からステージを囲むような形でショーを観る事になる。音響システムも他とは違っていて、バンドを囲むようにスピーカーが組まれている。つまり箱の中の全員が一つのPAシステムに包まれているような感覚なんだ。スピーカーとみんなとの距離が近いから、全員が同じ部屋でヘッドフォンを付けているような感覚になるんだ。天井も低くて反響が非常に少ないのもあって、小さな音も含めて一つ一つの音のディテールが全て聞こえる。大きな会場の輪郭を失ったような音響とは違って、演者にとってごまかしが効かない会場と言えるだろうね。エイブ、ジミーとデヴィッドとThe Baked Potatoで演奏する事は、僕にとって最高の瞬間なんだ。あまりリハーサルはしないよ。フレッシュな状態で音楽に自分を委ねていく事で音楽自身が僕たちを連れて行ってくれるんだ。あの箱では別々のバンドで何度も演奏してきたけど、今までも、そしてこれからも自分の音楽人生の中の大きな場所を占めている会場だと言えるだろう。

MM : ファンへのメッセージをお願いします。
ML : 僕たちのライブや音源は、みんなと音楽体験を共有できるツールだと思っていて、友人や家族、そして人生をエンジョイするためのものなんだ。人生は短いから全ての瞬間を楽しもう!

Michael Landau official site https://mikelandau.com/


Michael Landau / Liquid Quartet Live

1.Can’t Buy My Way Home
2.Well Let’s Just See
3.Greedy Life
4.Killing Time
5.Bad Friend
6.Can’t Walk Away From It Now
7.Renegade Destruction
8.One Tear Away
9.Tunnel 88
10.Dust Bowl