Vol.2 Keith Scott / September 2011

Keith Scott

長年に渡りBryan Adamsの音楽をギターで支え続けてきたKeith Scott (キース・スコット)。 KeithにBryanとのこれまでの活動や自身のギタープレイについて語ってもらった。

 

Interview / Text     Mamoru Moriyama
Translation            Tomoko Kikuchi

ブライアン・アダムスといえば80年代から数々のヒット曲を放ってきたカナダ出身のロック・ミュージシャンである。 そんなブライアンのロック・スピリットをギターで見事に表現し、レコーディング、そしてツアーで支え続けている男こそが今回特集するキース・スコットである。 ブライアンの曲が持つ素晴らしさを更に魅力溢れるものとするギタートーン。 そしてメロディックなフレーズ、ロック・フィーリングに溢れたリズム・ギターと彼のギタープレイは聴きどころ満載である。

今回キースのインタビューを行うにあたり、ブライアンから以下のコメントが寄せられた。ブライアンが語ってくれたディープ・パープルのライヴにおけるキースの行動は、彼のギターキッズな一面を知ることができて興味深い。

<ブライアン・アダムスのコメント>
「テッド・ニュージェントが、キース・スコットのことを本物の刺客だと表現したことがあったよ。俺たちは何年もそのことをネタにして笑っている。すべての優れたギタリストたちがそうであるように、キースはギターに対する情熱を持っているから、(レコーディングでの彼のプレイ時は、全て彼に任せて)ただテープやProToolsを回して彼がプレイを録り終えるのを眺めておくだけでいいんだ。キースのことはよく知っているし、俺が行ったディープ・パープルのライヴに彼も来ていたと知った時は、一生の友達になるなと思った。それだけではなく、リッチー・ブラックモアがギターを掲げて観客に向けた時、キースはそのギターをつかんでリッチーの手から離したんだよ!伝説的だな。」

Muse On Muse (以下MM) : 今回のインタビューで初めてあなたのことを知る新しいファンもいるかと思いますので、まず最初にあなたの簡単なプロフィールからお聞かせ下さい。 まずはあなたがギターを始めた当時の年齢やきっかけを教えて下さい。
Keith Scott (以下KS) : 14歳ぐらいのころに始めたんだ。まわりの友達たちもみんなギターに興味持っていたよ。もちろん、ビートルズや60年代のポップミュージックブームも好きだった。

MM : その当時に影響を受けていたミュージシャン、ギタリストは?
KS : 最初の頃はエリック・クラプトンやジミ・ヘンドリックスに大きな影響を受けたけれど、たくさんのジャズ・ギター・プレーヤーにも影響された。ジャズが好きだった父親のおかげでね。

MM : 当時はどのような練習方法でギタープレイを上達させていたのですか? また、あなたはその当時のバンドではどのような音楽をプレイしていたのでしょうか?
KS : ほとんど耳で学んだよ。様々なジャンルの音楽を聴いてね。あとは、高校のバンドでフルートを担当していたから、楽譜の読み方や大きいグループでの演奏を学ぶことができた。

MM : あなたがプロのギタリストとして初めて携わった仕事や当時の思い出についてお聞かせ下さい。
KS : 初めての仕事はこんな感じだったかな…高校の友達とバンドを始めた時に、他のミュージシャンたちが地元の教会での僕たちの演奏を観に来て、僕たちにライブハウスでの前座をやってくれと聞いてきたんだ。そのライブでの演奏のあと、そのバンドのリーダーが僕にオーディションを受けないかと言って来てさ、彼はギタリストをクビにしたがってたんだ!僕はオーディションを合格して、そのバンドと一緒に数年間、全米中をツアーしたよ。

MM : その後、あなたがブライアン・アダムスのアルバムやツアーに参加することになった経緯やその当時の状況をお聞かせ下さい。 初めてブライアンと一緒に仕事をした際の彼の印象は如何でしたか?
KS : ブライアンと初めて会ったのは、彼がまだ別のバンドで歌っていた時だった。電話番号を交換して、しばらくした後に彼から一緒に演奏してほしいと頼まれたんだ。彼は、エネルギッシュで、キャリアを考えているなという印象だったよ。

MM : ブライアンのアルバムでのあなたのギターソロは曲が持つボーカルのメロディの素晴らしさを引き継ぎ、メロディックかつ印象的な展開を持つ素晴らしいプレイです。 あなたのソロパートはインプロヴァイズが主体でしょうか、それとも事前に考えたものなのでしょうか?
KS : CDのほとんどのソロは、コンビネーションで出来ている。レコーディングの早い段階では、ブライアンと彼のパートナーのジム・バランスが作ったデモのソロやパートを演奏してほしいと言われるんだ。アルバムを作る段階になると、僕たちはいつもはデモのアイディアを継続するけれど、たまに運がいい時は最初の録音でソロをとれることがある。後で、その過程が変わることもあって様々だけれども、最初の数回の試みでソロがとれると最高だよ。どのアルバムでも、最低でも1曲か2曲は、このようにソロを演奏することができた。

MM : ブライアンの曲にはリズムギターも曲を印象付ける素晴らしいものが数多くあります。 例えばRun To YouのイントロのアルペジオやIt’s Only Love、Somebodyなどは曲が始まった途端にそれと判るインパクトを持っています。他にもブライアンには同様の素晴らしいリズムギターを持つ曲が多くあります。 レコーディングのクレジットにはリズムギターとしてブライアンの名前もクレジットされていますが、リズムギターのリフ作りやソロパートのメロディ構成作りではブライアンからのインプットもあるのでしょうか?
KS : 本当のことを言うと、それらの曲のアイディアは、ブライアンとジムからきたものなんだ。”Run To You”のように、レコーディングの最後に僕がデモからリフを演奏することあれば、ブライアンがもう一度演奏することもある。そして、いつもブライアンがソロとリズムについてアイディアを出すんだ。

MM : 曲の中でリードギター、リズムギター、それぞれをプレイする際にあなたが心がけていることはどのような事でしょうか?
KS : 心がけていることは、他にもプレイーヤーがステージにいることを意識することと、もっと重要なことは、素晴らしいシンガーがいるということ!だから、僕はできるだけ他のプレイーヤーの邪魔にならないようにしているんだ。

MM : ブライアンのアルバムでは、Into the Fireをリリースした頃までは大陸的でスケールの大きさを感じさせるストレートかつシンプルで力強いロック・サウンドでした。 それ以降、Def Leppardのアルバム等を手掛けていたJohn “Mutt” Langeが制作に携わったアルバムあたりから、徐々に緻密に作り込まれたサウンドに変化していったように感じられます。あなたはそれらサウンドの変化に対してどのように感じ、取り組んでいましたか?
KS : 最初は、この新しいパートナーシップがどうなるかわからなかった。マット・ラングと何ヶ月も一つの部屋で一緒に作業をして、彼の技術がどのようなものかわかったよ。その経験は本当に素晴らしかったし、僕は彼と彼の音楽アイディアを大いに尊敬している。さらに、彼はとてもいい人なんだ!

MM : John “Mutt” LangeはDef Leppardのアルバムでも聴くことが出来るように、何本も重ねられたギターサウンド、重厚なコーラス等、密度が高いサウンドが特徴的ですが当時のレコーディングはどのような感じで行われたのでしょうか? それ以前のアルバムの制作に携わっていたBob Clearmountainの手法とはかなり違っていましたか?
KS : 彼とのレコーディングは、今まで一番時間をかけたけれど、あれほど一生懸命に取り組み、レコーディングが楽しかったことは今までなかったよ。

MM : あなたは長年に渡りブライアンのアルバムやツアーでギターを任されていますが、あなたが使用してきたギターの機材(ギター、アンプ、エフェクター等)もそれぞれの時期によって変化しているのでしょうか? 変化しているのであれば、それぞれの時期ごとにメインにしていたギター、アンプ、エフェクターについて教えて下さい。
KS : 最初の頃は、2、3本のギターしか持っていなかったから、僕たちの音の範囲は小さく限られていた。一緒にツアーをしたバンドの機材を借りることはあったけど、それぐらいだよ。何年にもわたり、より多くのギターやアンプが必要になって、それによってたくさんの機材を使って音の幅を広げることができた。

MM : あなたがプレイするギターを選ぶ際の観点を教えて下さい。ルックス、サウンド、弾きやすさ等色々なチェックポイントがあるかとは思いますが・・。
KS : 楽器の感触がどう好きなのか言葉で表すのは難しいけれど、それはその日の気分によったりもするんだ。大体は、ギターの持ちやすさや、音の引き出しやすさで決めるよ。

MM : 同様にアンプやエフェクターについても選択する際のチェックポイントを教えて下さい。
KS : 何か上手くいくようなフィーリングかな。もし上手くいかなかったら、他のものを試して、自分たちが満足できるようにするよ。

MM : ブライアンのアルバムにおいて、あなたがギターで音作りする際に最も心がけていた点を教えて下さい。
KS : 最初のアルバムでは、トップレベルのエンジニアにサウンド作りを手伝ってもらった。それは僕たちにとって楽なことであったけど、時がたつにつれて僕たちの考え方がかわってきた。音楽を作るには、たくさんの違った方法があるから、僕たちはいつも、他の人たちや試してみることからアイディアを見つけようとしているよ。

MM : あなたはThe Fontanasというバンドで作品をリリースしていますが、The Fontanas の結成の経緯や音楽性について教えて頂けないでしょうか? The Fontanasでは爽快なサーフミュージックをプレイしているようですが。
KS : 1960年代のサーフスタイルのギターはずっと好きなんだ。だから、サーフミュージックをできるチャンスがきた時は、飛びついたよ。映画業界で働いていた友人がバンドのアイディアを出して、一緒にCDを作り上げたよ。2、3杯のワインのあとにThe Fontanasと名付けたんだ。

MM : あなたのメロディックで素晴らしい構成力を持ったリードプレイ、例えばブライアンのNative Sonや(Everything I Do) I Do It For Youなどで聴くことが出来るような音楽をメインにしたソロ・アルバム等の制作は考えていないのでしょうか?
KS : そのようなソロは、特定の期間、曲、シンガーのために作られたものだから、それはないかな。しかも、それらは僕の人生の中での一時で、あのように演奏するよう言われてた。あの音をまた作ることができるかと言えば、できるかもしれないけれど、僕の興味はちがうことに向いているよ。

MM : あなたの現在の活動状況及び今後の予定について教えて下さい。
KS : 最近は、いろんなスタイルで自分の音楽を作曲し、レコーディングしているよ。The FontanasのCDをいくつか仕上げる予定で、アコースティックアルバムもその中のひとつだ。

MM : あなたのような素晴らしいギタリストになる事を目指しているギタープレイヤーに練習方法やプレイする上での心がけ等、何かアドバイスをお願いします。
KS : 最も重要なことは、自分がいいと思うフィーリングを大事にすることだ。様々なジャンルの音楽を聴いて、できるだけ多くの音楽を学び、できるだけ多く自分の音楽を作るんだ。

MM : 最後に日本の音楽ファンへメッセージをお願いします。
KS : 僕たちは、1983年から日本に行くことができていて、とても幸運だと思っている。30年近く前だね!色々なことが変わったけれど、僕たちはいつも日本に行くことを楽しんでいるし、世界中のどこのライヴでもたくさんの日本人のファンに会うんだ。来年日本に行けることをとても楽しみにしているよ。  オヤスミナサイ!アリガト!