Vol.50 Steve Gadd / July 2015

Steve Gadd


Photo by Rob Shanahan

ポール・サイモン、エリック・クラプトン、ピーター・ガブリエル、スティーヴィー・ワンダー、チック・コリア・・・、全てをここに挙げることはとてもできないほどにジャンルを超えた膨大な数の素晴らしいアーティスト達のレコーディングやツアーに参加しているSteve Gadd(スティーヴ・ガッド)。
今年70歳を迎えた世界最高峰のドラマーはマイケル・ランドウ(g)、ラリー・ゴールディングス(key)、ジミー・ジョンソン(b)、ウォルト・ファウラー(tp,flh)といった気心の知れた仲間を集め、バースデイ記念アルバム「70STRONG」をリリースした。このアルバムでは、トップミュージシャン達による最高のアンサンブル、そしてスティーヴの繊細かつダイナミクスに溢れた多種多様なドラムプレイを聴くことが出来る。
新作「70STRONG」の内容やドラムへの取り組み方などについてスティーヴに訊いた。


Photo by Steve Singer

Interview / Text  Mamoru Moriyama

Translation         Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)

 

Muse On Muse (以下MM) : まずは70歳、おめでとうございます。ここまで音楽活動を続けられていることについてどのように感じていますか?
Steve Gadd (以下SG) : 最高だよ!素晴らしい気分だ!この年になってもお客さんの前でプレイできて、尚かつ友人でもある素晴らしいミュージシャンたちと一緒に演奏しながらみんなのエネルギーを感じることができるのは最高だ!

MM : あなたはこれまでに数多くのアーティストの作品やツアーに携わっていますが、その中で特に思い出に残る作品やエピソードはありますか?
SG : どれかひとつ選ぶのは無理だよ。何故なら自分にとって(今まで携わった全てのアーティストたち)全員が同じくらい大切だからだ。とても良い経験をさせてもらったと思っているし、仕事で携わった全てのアーティストたちや様々な人々から私は多くを学んだ。

MM : 長年に渡り音楽の世界で現在の位置をキープし続けていく上であなた自身が常に努力し取り組んでいることは何でしょうか?
SG : ともかく、いつも100%を出すことだ。それと、運動をして健康な体を作ることを心掛けているよ。食事も気にしているし、精神的にも安定した状態を保つことを心掛けている。それに自分の仕事を好きだと思っているのも長年この世界で仕事を続けていられる大きいな理由のひとつだ。

MM : 今回、2年半振りに新作「70 STRONG」が発表されましたがこのアルバムのコンセプトについてお聞かせ下さい。
SG : 一緒にプレイしている仲間たちと楽しむのが第一だった。思い返せば、それがコンセプトだったように思えるね。みんなで集まって良いグルーヴを一緒に感じたかっただけだ。

MM : このアルバムはドラマーのみならず楽器を演奏しない音楽ファンも存分に楽しめる音楽的内容の素晴らしさに溢れる作品となっていますが、アルバム・プロデュースといった面からそのあたりのバランスはどのように考えていましたか?
SG : 今回参加してくれたメンバーたちがいたからできたことだ。一緒に音楽を作ることを楽しんでくれるミュージシャンたちに参加してもらうということ以外は特に考えていないよ。(正しい人選ができていれば)あとは自然に出来上がっていくものだ。

MM : 前作「Gadditude」同様にマイケル・ランドウ(g)、ラリー・ゴールディングス(key)、ジミー・ジョンソン(b)、ウォルト・ファウラー(tp)といったメンバーがアルバムに参加していますが、彼等とのレコーディング作業は如何でしたか?
SG : 素晴らしいよ!彼らは友達でもある。彼らは偉大なミュージシャンたちだ。一緒に作業をしていてとても楽しいよ。

MM : レコーディングにはどのくらいの期間を要し、どのように進められたのでしょうか?
SG : 1週間ぐらいでレコーディングしたよ。みんなで曲を書いて、それを私が聴きながら色々なことを試した。アルバムに何が合うかを考えながら作業を進めた。それと、みんなが共通して好きな曲を何曲かカヴァーすることにした。

MM : “Foam Home”は作曲者にメンバー全員の名前が記されていますが、この曲について詳しく教えて頂けますか?
SG : この曲はスタジオでみんな一緒に書いたのさ。ジャムしながら曲のアイディアを思いついてね。アルバム『Gadditude』では”Green Foam”という曲を収録したけど、今回もfoamという言葉をモチーフにした曲をバンド全員で書くことにした訳だ(笑)次作でもfoamという言葉が曲の題名に使われていたら、その曲はバンドのみんなで書いた曲だと思ってくれ!

MM : 各メンバーそれぞれのオリジナル曲もアルバムでプレイされていますが、これらの曲はどのような観点で選曲したのでしょうか?
SG : みんなが持ち寄った曲を聴いて、どの曲がアルバムに合うか自分で判断して決めた。とても簡単なことだ。

MM : マイルス・デイヴィスの演奏で有名なエディ・ハリスの”Freedom Jazz Dance”をアルバムで取り上げていますが、この曲に取り組むにあたってどのようなアプローチをしようと考えましたか?
SG : エディ・ハリスの曲をいくつか組み合わせたんだ。私はエディ・ハリスの大ファンだし、バンドのメンバーもみんな大ファンなんだ。みんなでエディ・ハリスの曲をいくつかピックアップして1曲にまとめてみたのさ。

MM : ヤン・ハマーの”Oh, Yeah?”を取り上げたのはなぜでしょうか?
SG : ウォルト・ファウラーの家でパーティーがあってね。色んなミュージシャンが来ていて、その時にみんなでこの曲をジャムしていたんだ。私だけがこの曲を知らなかったのだが、聴いてすぐに気に入ったのさ。曲を聴いた瞬間に自分のバンドでプレイしたら面白そうだと思った。だからアルバムに入れたのさ。演奏していてとても楽しい曲だよ。


Photo by Bill Zules

MM : “Sly Boots”ではあなたの巧みで多彩な素晴らしいリズムアプローチを堪能できますね。
SG : その通りだ!

MM : あなたがこのバンドでプレイしている中で特に喜びを感じられる瞬間とはどういった時でしょうか?
SG : いつもだ!音楽的に楽しんでいる以外にもメンバーやメンバーの奥様方と一緒に話をしたりふざけたりしているのも楽しいよ。

MM : 非常に正確でありつつ、グルーヴ感溢れる人間味を感じさせるあなたの音楽、ドラムプレイは世界中のドラマーや音楽ファンを魅了し多大な影響を与えています。あなた自身はどのようにして今のスタイルを築き上げたのでしょうか?
SG : 常に念頭に置いて、そこに向かって努力を続けることが大切だ。何かを学んで、忘れてしまう・・・そういう次元の話ではない。常に達成に向かって努力を続けないといけない。

MM : アンサンブルの中でドラムを響かせる上であなたが考えるドラムの良い音とはどういう音でしょうか? そのためにあなたがドラムをプレイする際に、テクニック的に意識し、心掛けていることについて詳しく教えて下さい。
SG : 練習すること、そしてドラムを正しく叩こうという意識を持つことを何年も続けて来た結果だ。子供の頃に教わったこと、そのバランスを常にプレイに取り入れるところにある。そのテクニックは体が覚え込むもので、特に頭で考えたり心掛けたりすることではない。分かるかな?全てが自動的に起こることなんだ。

MM : ミュージシャンにとって大切なリズム感を鍛え、向上させるために必要な練習方法等をアドバイスして頂けますか?
SG : クリックを使って練習するのがいい。もしくは、リズムをプログラミングできるリズム・マシーンをヘッドホンで聴きながら練習するのがいいだろう。ヘッドホンはVIC FIRTHが出しているような密閉式のもので、生のドラムの音が聞こえないようにするのが重要だ。自分が叩いている音よりも大きな音に合わせながら、その音を自分が実際に叩いているかのようにイメージすることが大切だ。リズムの基準になるものに合わせて練習し、尚かつ様々な異なるテンポやフィーリングで練習することも必要だ。例えば、ひとつのパターンを8小節叩いて、最後にフィルインを入れて何度も繰り返すのもいいだろう。そうすると、叩いているフレーズが変わる時に自分のリズムが速くなったり遅くなったりするのが明確に分かるようになる。

MM : ドラムをプレイする上ではパワーや持久力も必要だと思われますが、それらを維持するためにあなたが取り組んでいることを教えて下さい。
SG : 運動をすることだね。毎日、もしくは週に4〜5回ぐらいはジョギングをするように心掛けている。運動をするのはとても大切なことだと思っているよ。

MM : レコーディングで使用したドラムセットやスネアを教えて下さい。
SG : スネアはSteve Gaddメタル・スネアを使った。”Foam Home”では13インチのSteve Gaddスネアを使った。ドラムセット自体はYAMAHAのSteve Gaddカスタムを使っていて、サイズはバスドラが20インチ、タム類は12、13、14、16インチを使っている。

MM : 今後の予定をお聞かせ下さい。
SG : 数週間後にニューヨークでJames Taylorのプロモーション・コンサートをやる予定だ。その後はSteve Gadd BandでRochester International Jazz Festivalに出演する。その後は再びJames Taylorと8月6日までツアーが続く。Steve Gadd Bandは9月にアジア・ツアー、10月と11月はヨーロッパ・ツアーが予定されている。

Steve Gadd official site : http://www.drstevegadd.com/

 


STEVE GADD BAND / 70 STRONG

1.Foam Home
2.Freedom Jazz Dance
3.Written in Stone
4.The Long Way Home
5.Sly Boots
6.Duke’s Anthem
7.Elegant Squares
8.Desu
9.De Volta Ao Samba
10.Oh, Yeah?
11.Blues For…

Steve Gadd – Drums
Walt Fowler – Trumpet, Flugelhorn
Larry Goldings – Keyboards, Accordion
Jimmy Johnson – Bass
Michael Landau – Guitars