Vol.47 Simon Phillips & Andy Timmons / May 2015

Simon Phillips & Andy Timmons

ジェフ・ベック、マイケル・シェンカー・グループ、ザ・フーなど数々のアーティストとの共演やジェフ・ポーカロ亡き後のTOTOのドラマーとして多くの聴衆を魅了し活躍してきた世界屈指のスーパー・ドラマーであるサイモン・フィリップス。
その超絶的なドラム・プレイのみにあらずコンポーザー、プロデューサーからレコーディング・エンジニアに至るまでその才能を如何なく発揮するなどトータルなアーティストとして確固たる地位を築いており、近年では上原ひろみザ・トリオ・プロジェクトのメンバーとして日本でも高い人気を誇っている。
そんなサイモンが自ら信頼する名うてのミュージシャン達を招集し、スーパー・ドラマーとしての真髄を聴かせるハード・フュージョン/ジェズ・ロックのプロジェクト Protocolが遂に新作「protocol III」を完成させた。
protocolの司令塔であるサイモン、そしてメンバーの一員であり、新作の中でもそのセンス溢れるギタープレイで見事に楽曲に躍動感溢れる命を吹き込んでいるアンディ・ティモンズに話を訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama

Translation         Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)

 
– Simon Phillips –


Muse On Muse (以下MM) : 新作「protocol III」を完成させた今の気持ちは如何ですか?
Simon Phillips (以下SP) : 新しいアルバムを完成させてとてもワクワクしているよ!

MM : 今作のコンセプトについてお聞かせ下さい。
SP : 同じライナップで多くのライヴをこなしたバンドで作品を作りたいというコンセプトがあった。それに加えて複雑な構成の曲をレコーディングしたいという気持ちもあったけど、以前とはまた異なるスタイルを今回のアルバムでは導入してみたいというコンセプトも存在していた。

MM : トップ・ドラマーであるあなたの作品は、多くのドラマー達が興味を抱く内容でありつつも楽器をプレイしない音楽ファンにも十分楽しむことができる音楽性に富んだ作品となっています。アルバムのプロデューサーとしての立場からその辺りのバランスについてはどう考えているのでしょうか?
SP : 私はドラマーの観点から曲作りをすることはない。音楽(楽曲そのもの)とプロジェクトのコンセプトが最も重要だと思って取り組んでいるよ。

MM : あなた一人で作曲する場合と”UNDERCOVER”のようにあなたと他のメンバーが共同で曲作りを行う場合とでは曲作りの方法に違いはありますか?それぞれの場合における曲作りの方法について詳しく教えて頂けますか?
SP : 他のメンバーが作曲に携わるとプロセスはもちろん変わる。でも、他のメンバーが関与する前の段階までは一人で作曲している時と全く同じだ。楽曲や楽曲の一部をメンバーに聴かせて作曲作業に携わってもらった後、自分はプロデューサー的な立場に立ち位置が変わっていくのが大きな違いと言えるだろう。

MM : あなたが一人で作る曲の場合、その曲を他のメンバーに聴かせるためのデモの内容はどのレベルまで仕上がっているのでしょうか? ベース、キーボード、ギターのパートはどの程度まで作りこまれているのでしょうか?
SP : 自分が作るデモはかなり完璧に近い状態に仕上げてあるね。ベースやキーボードは勿論、ギターのシミュレーションも録音してあるし、ドラムは生で録っている。このやり方に慣れているし、作品を自分が目指している最終的な仕上がりに近づけることができる手法だ。

MM : アルバム全体を通してアンディの多彩で曲にマッチしたギタープレイが大きく貢献しているように感じましたが、今作の彼のギターについてはどう思いますか?
SP : 彼はとても素晴らしい仕事をしてくれたし、楽曲のメロディを全て自分のものにしているところも素晴らしい。だから彼と仕事をするのが好きなのさ。私にとって常に彼が第一候補だ。私がメロディを作り、アンディが弾けば、彼がそのメロディを楽曲に最も合った形で演奏してくれることが約束されているような感じだ。それに、彼はとても素晴らしい人間で、とても仲がいいんだ。

MM : アンディやスティーヴ・ウェインガード(key)やアーネスト・ティブス(b)とは前作「Protocol II」の制作、そしてツアーと一緒にプレイしている期間も長いですが今回のレコーディングは如何でしたか?
SP : このメンバーで集まって演奏すると、いつも特別な気持ちになれる感じがする。前作「Protocol II」に比べて楽曲の難易度も高かったし、曲を覚える時間も限られていたこともあって、メンバーには少し酷だったかもしれない。レコーディングの直前まで作曲をしていたからね。でも、結果はとても良かったと思うし、全員の演奏がとても新鮮かつ力強い形で収められている。


l. to r.  Simon Phillips(ds), Andy Timmons (g), Ernest Tibbs(b), Steve Weingart (key)
 
MM : アルバムに収録されている各曲についてあなた自身による解説をお願い出来るでしょうか? 曲が生まれるまでの経緯や曲に込められた思い等をお聞かせ下さい。
SP :
“NARMADA”
Joe Zawinulに影響を受けた曲だ。彼の曲は大好きだし、個人的にもWEATHER REPORTの大ファンなんだ。ワールド・ミュージック的な雰囲気があって、当初はProtocolにマッチしないと思っていたけど、メンバーに聴かせたら「是非やりたい!」と言われたのでやってみた訳さ!

“IMAGINARY WAYS”
まだイギリスに住んでいた頃に作ったデモで、実はこのデモをずっと探していたんだ。未完成のままだったけど、雰囲気がとても好きでね。幸運にもデモを見つけることができて、後に曲を書き直し、更に新たなセクションを加えて完成させた。プログレでありながらも、よりブルージーなアプローチが欲しいと思った結果だ。

“OUTLAW”
これはアンディと一緒にロックバンドを作ろうと思って2000年頃に書いた曲だ。プロジェクト自体は適任のヴォーカリストが見つからず、結局は実現できなかったけど、Billie Rainbirdのアルバムをミックスしている時にこのデモを偶然見つけたんだ。ProToolsから速度を半分に落として録音する作業を行っていて、その作業には古いDAT機を使う必要があった。その時、たまたま手にしたDATテープの中身を確認したらこのデモが入っていた訳だ。このバンドで演奏したら少し変わっていてかっこいいと思って、やってみたのさ。

“CATALYST”
上原ひろみトリオでツアー中、ウィーンから東京に移動している時に飛行機の中で書いた曲だ。キーボードを持ち合わせていなかったので、全てステップ入力で書いた。「Protocol II」に収録されている”Upside In Downside Up”から発展するような曲を書きたいと思っていて、スティーヴ・ウェインガードにこの曲のデモを送って、彼の魔法のようなアイディアを足してもらい完成した!

“AMRITA”
数年前のある日の午後に書いた曲だ。一度だけのセッションで完成した。元々は2007年頃から曲作りを開始していたソロ・アルバムのために書いた曲だったけど、どうしても方向性に満足することができなかった。でも、ずっと好きだと思っていた曲でもある。

“CIRCLE SEVEN”
これはスティーヴ・ウェインガードがデモを作ったものに自分が最終的な仕上げを加えた曲だ。私とスティーヴの間で何度もやり取りをしたけど、結果にはとても満足している。メロディックでありながらジャズっぽさも兼ね備えている。Rhodesを使ったソロでスティーヴが持ち前の素晴らしいテクニックを披露してくれている。結果的にアルバムの中で最も好きな曲のひとつとなった。

“YOU CAN’T BUT YOU CAN”
元々、マイク・スターンのために書かれた曲で2007年にニューヨークでレコーディングもされている。Protocol IIのライヴで演奏してい曲で、とてもいい感じだったのでリ・レコーディングしたいと思っていた。これは1テイクで録った曲で、バンドのエッセンスを上手く捉えている。ステージ上でお客さんを前に演奏しているかのような気持ちでレコーディングをした。スタジオでレコーディングしている時でも常にその感じを出したいと思ってやっているよ。

“UNDERCOVER”
AパートとBパートの基本的なメロディはあったものの、更にオーガニックかつルースな雰囲気を作りたいと思い、未完成のままバンドに続きを任せた訳だ。”Bitches Brew”のような初期マイルス・デイヴィス的なアプローチで、今までに自分が作った楽曲にはないタイプの曲だ。

MM : アルバムの曲順の決め方について教えて下さい。曲の並びによっては同じ内容のアルバムでも別の雰囲気になることもあるかと思いますが、あなたの場合、アルバムの曲順についてはどのような観点で決定していますか?
SP : レコーディングのかなり早い段階から曲順のことは考えているけど、実際はマスタリングの段階まで変更を行うことがあるよ。ミックス作業を行っている時も、ラフミックスが上がればCDに焼いて車の中やツアーの移動中に聴きながら曲順をチェックしている。曲の並びによって、その曲が良く聴こえることもあって、基本的にはそこをスタートラインにすることもある。やがて、全ての曲が入るべき曲順に上手く収まっていく感じだ。今回のアルバムではマスタリングの直前に最後の曲順変更を行った。

MM : あなたはアルバム制作におけるエンジニアリングの仕事でもプロフェッショナルとして知られています。あなたが理想とする素晴らしい音とはどのような音でしょうか?
SP : 自分がミックスしたものが理想の音であることを願ってミックスしている。強いて言えば44.1k/16 bitのCD に変換される前の96kのマスターをリスナーのみんなに聴かせることができないのが残念だね。でも、アナログでリリースすることができれば、聴いてもらえることになるね!

MM : バンドのアンサンブルの中でドラムの素晴らしい音を得るために必要なことは何でしょうか?ドラマーとしてドラムプレイにおけるテクニック的な観点、そしてエンジニアリングとしてのドラムサウンドの録り方、この2つの観点からあなたの考えをお聞かせ下さい。
SP : レコーディング環境の中で、ドラムセットの音が楽曲にマッチしなければいけない。しかし、演奏方法によって音も大きく変わることがある。ドラマーは周りの音をよく聴いて、楽曲に何が必要とされているかを把握しなければいけない。エンジニアの観点から考えれば、ともかく一貫性が求められる。要するに、曲の頭から最後まで同じ音を保たなければならないということだ。それが得られれば、ミックスでの作業が断然楽になるね。

MM : 最近はアルバムをデジタル音源、CDだけでなくアナログレコードでもリリースするアーティストが多いですが、再びアナログレコードが扱われている昨今の動向についてどう感じていますか?
SP : 素晴らしいことだと思うよ。前にも言ったように、元々レコーディングされている音を聴いてもらうにはアナログしかないからね。勿論、セーフェイス・ノイズや全体的な音量の低さという欠点もあるが、アナログには独特の甘味がある。再生機器によっても音質が大きく変わることもあるね。

MM : ところで先日リリースされたTOTOの新作はもう聴きましたか?
SP : まだ聴いてないね!

MM : 今後の予定について教えて下さい。
SP : Protocolはもうすぐヨーロッパ・ツアーがスタートする。5週間かけて20公演を予定している。ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、オーストリア、スイス、ハンガリー、クロアチア、ブルガリア、ギリシャをまわる予定だ。

MM : 日本のファンへメッセージをお願いします。
SP : 6月に日本に行って、新しいアルバムの曲を演奏するのをとても楽しみにしているよ。去年の日本でのライヴもとても楽しかったので、今回もこの素晴らしいバンドの演奏をみんな聴きに来てほしいと思っているよ。
 
Simon Phillips Official Website : http://www.simon-phillips.com/

 

– Andy Timmons –


Muse On Muse (以下MM) : 新作「Protocol III」であなたはそのエモーショナルかつダイナミクスに溢れたギタープレイで曲に躍動感や繊細さといった生命感を見事に与える役目を果たしていますね。
アンディ・ティモンズ (以下AT) : ありがとう!とても嬉しい褒め言葉だよ。

MM : 今作はあなたがProtocolに参加してから2作目のスタジオ作品となりますがレコーディング作業は如何でしたか?
AT : 前回のProtocol IIと同様にレコーディングは短くて密度の濃いものだった。殆どリハーサルをする時間も無く、レコーディング自体も5日間しかなかった。正直、少しストレスを感じるほどだった。でも、結果的にはこのやり方が正しかったと思っている。考えたり悩んだりする暇もないので、音がとても素直に録音されていてライヴ感もある。昔はどのアルバムもこうやって作られていた。現代のレコーディングでは凝り過ぎてしまう感がある。それは自分の作品でも言えることだね。だからこそ、サイモンとの仕事は楽しい。全て古いやり方でやっているのさ。

MM : レコーディングはライヴ形式で進められたのでしょうか? 詳細をお聞かせ下さい。
AT : レコーディングはライヴ形式で行われ、必要な部分だけ修正を加えた。”You Can’t, But You Can”はワンテイクで完全にライヴだ。でも、”Catalyst”等のような難しい曲はリハーサルテイクの回数を多く要したり、修正も少し行った。ただ、全体的に時間が少なかったこともあったので、ともかくひとつのテイクに全神経を集中させて、どんどん次の曲へと作業を続けなければならない状況だった。

MM : Protocolのようにフュージョンの要素が強い音楽とロックとではプレイする際のアプローチに違いはありますか?
AT : 音楽的にどんな状況であっても、同じアプローチを取るようにしている:どうすれば楽曲が良くなるか、自分の能力の範囲内でベストのプレイをすること、出来る限り音楽的に演奏をすること、そして楽曲に適した演奏をしながらも自分のアイデンティティを保つこと。楽曲に対するリスペクトが必要だし、一緒に作業をしている人たちに対してもリスペクトが必要だ。幸運にも、ここ何年かは練習生の心を持って毎日ジャズを練習していたこともあってProtocolのレコーディングやツアーにとても役立ったよ。

MM : あなたとサイモンによる共作曲”OUTLAW”ではヘヴィなギターリフによる”動”の部分とメロディックで繊細な”静”の部分の対比がクールな曲ですね。
AT : この曲のリフは2000年にサイモンと一緒に作った。当時、サイモンと一緒にヴォーカル入りのロックバンドを結成するプランがあった。テキサスにある自分のスタジオにサイモンが来て、一週間曲作りやレコーディングをした。沢山のクールなアイディアができたものの、適任のヴォーカリストが見つからないままお互いのバンドが忙しくなってしまい、バンド自体が流れてしまったんだ。Protocol IIIのレコーディングが始まる前にサイモンがたまたまこの頃の音源を聴いて、今回のアルバムにこの曲が合うと判断してサイモンは新たにAメロとBメロを作り、レコーディングの当日に僕がサビを作った。自発的なことの連続だったね。

MM : アルバムを通してギターサウンドは全体的にハードな印象をうけましたが、Protocolにおいてはどのようなサウンド作りを意識していますか?
AT : 表現力を出すために割とアタックの効いた音が欲しかった。意識的にハードな方向へ行こうという意思は特になかった。自然とそうなってしまっただけだ。勿論、音色が変わればプレイスタイルも変わる。そういったディテールや違いを楽しむのも好きだ。

MM : 今回の作品で使用したギター、アンプ、ペダル類について教えて下さい。
AT : いつものようにアンプはMesa Boogie Lone Starに2×12のRectifierキャビネットを使っている。ギターはオリジナルのIbanez AT100。それにローズウッドのフィンガーボードがついた新しい白のAT100も使っている。ペダル類はKeeley Blues DriverとJHS Angry Charlieを使った。

MM : あなたにとってprotocolはどういった存在でしょうか?
AT : 自分が普段作曲や演奏をしている音楽とは異なる別の表現方法であり、素晴らしい音楽的チャレンジでもある。音楽的な知識がとても豊富なサイモンやスティーヴ、アーネストと仕事をすることは自分にとって様々なことが学べる貴重な機会でもある。自分にとって素晴らしい友人たちでもあり、素晴らしいヒーローたちでもある。

MM : 日本のファンへメッセージをお願いします。
AT : 6月にProtocolとして日本でプレイできることをとても嬉しく思っているよ。1990年以降、日本で何度も公演を行うことができて光栄に思っているし、日本のファンは僕にとって宝物だよ。本当にありがとう!!
 
Andy Timmons Official Website : http://www.andytimmons.com/
 


SIMON PHILLIPS / PROTOCOL III
UCCU-1477 ¥2,916(税込)Universal

1. NARMADA
2. IMAGINARY WAYS
3. OUTLAW
4. CATALYST
5. AMRITA
6. CIRCLE SEVEN
7. YOU CAN’T BUT YOU CAN
8. UNDERCOVER

Produced by Simon Phillips
Simon Phillips (Drums)
Andy Timmons (Guitars)
Steve Weingart (Keyboards)
Ernest Tibbs (Bass)

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