Stevie Salas (スティーヴィー・サラス) コラム issue #1 もっと語られるべき偉大なギタリスト達について

今朝起きた時、俺はテキサス州オースチンでリック・スプリングフィールドが書いた『Jessie’s Girl』っていう風変わりな古い曲(80年代にヒットした)について考えていた。別にリックやその曲自体についてではない。その中でアメイジングかつメロディックなソロを弾きつつも、誰にも語られることのなかった偉大なギタリスト、ニール・ジラルドについてだ。俺は頭の中でニールの音を聴きながら、それらを指板上で視覚的に置き換えてみた。そしたら妙なことが起きた。なんとそれらの音がどこからやってきたのか全く見当が付かなかったんだ。

そこで、“もしこの曲のレコーディングで雇われたのが自分だったら、果たして同じように弾いただろうか?”と想像してみた。答えはノーだ。“じゃあ、これが友人で腕の立つギタリスト連中、例えばザック・ワイルド、リッチー・コッツェン、スラッシュ、Tak松本だったら?”-いやいや、あんなメロディーや音並びは誰も思い付かないに違いない。“それならスティーヴ・ルカサーは?”-フーム。スティーヴならあり得なくもないが、ブラザーとして敬愛している彼でさえ、ニールのようなロウなキラートーンでああいったフレーズをプレイすることはきっとなかっただろう。

速弾きが台頭する以前にもクレイジーなロックギタリストは存在したが、どういうワケか彼らが話題に上ることはあまりない。今日はそのうちの何人かを取り上げてみたい。

 

■Neil Giraldo (ニール・ジラルド) [December 29, 1955 – ]

Photo by Natalie Jones
http://benatargiraldo.com/
http://www.benatarfanclub.com/

ロウなロックトーンにスピーディーさと“歌えるメロディー”が融合。パット・ベネターとの作品は全て聴くべし。

 

■LINK WRAY (リンク・レイ) [May 2, 1929 – November 5, 2005]

http://www.linkwray.com/

俺同様、ネイティヴ・アメリカンの血を引くギタリスト。パワーコードを発明したのがリンク・レイだ。1958年に発表された曲『Rumble』を聴いてみてほしい。アルバム録音でヘヴィーなディスト―ションサウンドを初めて使ったのも彼なんだ。一度ジェフ・ベックが話してくれたことだが、高校生の頃、ジミー・ペイジはリンク・レイの曲に合わせてエアギターを弾いていたらしい。パワーコードで名を馳せたザ・フーのピート・タウンゼンドも俺とのメールのやり取りの中で、「リンクは自分の考えを根底から覆した」と語っていた。またスラッシュがある晩、“ジミー・ペイジ、クラプトン、ベックについては誰もが知っているが、一体彼らの師匠は誰なんだ?”と考えていた時、最終的に行き付いた答えがリンク・レイだったそうだ。リンク・レイこそ、“世界に影響を与えたギタリスト達”に影響を与えた張本人ってワケだ。

 

■Alvin Lee (アルヴィン・リー) [19 December 1944 – 6 March 2013]

http://www.alvinlee.com/

テン・イヤーズ・アフターのウッドストックでの映像をチェックして、名曲『I’m Going Home』を聴いてほしい。あの涙が出るほどのトーンで、本気で弾きまくるヤツの姿を是非目の当たりにしてくれ!

ギターの達人について語る時、あまり多くの人が語らないことのひとつに、ギタートーンというのがある。腰抜けの激歪みサウンドで速弾きするのは実に簡単なことで、俺はそれを“ベッドルームサウンド”と呼んでいる。それがどんな音かといえば、自分の部屋でアンプ越しに聞く分には良い音だが、マディソンスクエアガーデンや武道館だと埋もれて聞こえなくなってしまうようなサウンドのことだ。デカイ会場でプレイするには、ちゃんと音が通るしっかりとしたトーンでなくてはダメだ。クリーンかつクリアーなトーンで速弾くのは簡単なことじゃない。でも、それこそが“凄いものと凡庸なもの”、“強者と弱者”、“レジェンドとポーザー”を分かつ一線なんだ。

 

■Elliot Easton (エリオット・イーストン) [December 18, 1953 – ]

http://theemptyhearts.com/

あり得ないトーン、そしてユニークなノートチョイスに反してなぜかメロディック。90年代、俺がLAのスタジオで『Caught In A Moment』という曲をレコーディングしていた時の話だ。ソロ部分を、ザ・カーズのヒット曲 『Just What I Needed』でのエリオットのような感じで弾こうと試みたものの、どうやってもしっくりこない。そこで、実際にエリオット本人にスタジオまで来てもらいソロを弾いてもらったところ、聞こえてきたのはあのエリオット・イーストンのサウンドそのものだった。エリオットは唯一無二の宝としか言いようがない。

 

■Phil X (フィルX) [March 10, 1966 – ]

http://www.philx.tv/

最後に、新しいギタリストの中で俺のお気に入りであるフィルXをチェックしてみてくれ。ヤツはビーストだ!トーンは凄いわ、速弾きも物凄いわ、しかもそれを超パンチの効いたクリアートーンで体現できるときたもんだ。エディー・ヴァン・ヘイレンのリックをアンガス・ヤングのトーンで弾いたら・・・と想像してみてほしい。しかもフィルのヤツときたら超メロディックなんだ!

実は、俺はその秘訣を知っている。ヤツはカラーコードの一枚目にかなり影響を受けたらしい・・・フィルの話ではそういうことだ。(マジか!?)・・・本当にそうであったら嬉しいが、まあ違うだろう。ともかく、ヤツの流れるようなプレイスタイルは、おそらく子供の頃からブズーキというギリシャの民族楽器をプレイしてきたことが理由だと思う。なんたってブズーキを演奏するには、3本の弦をいっぺんにプルオフしなくちゃならない。フィルは後にそのテクニックをギターに応用したってワケだ。驚きだよな!

というワケで、是非これらのギタープレイヤーをチェックしてほしい。彼らのことを語り継いでいくことで、新しい世代のミュージシャンは、ギター史上、“世界で最も有名なギタリスト”以外の達人から学ぶことができるはずだ。

スティーヴィー・サラス
 
Stevie Salas official site : http://www.steviesalas.com/
Stevie Salas official facebook : https://www.facebook.com/StevieSalasOfficial
Stevie Salas official Bandcamp : https://steviesalas.bandcamp.com/music

Translation by Yuichiro Chikamochi