Vol.41 Steve Morse / December 2014

Steve Morse


Photo by Jim Arbogast

Flying Colorsが新作「Second Nature」をリリースした。Flying Colorsはスティーヴ・モーズ、マイク・ポートノイ、ニール・モーズをはじめとする各メンバーが他にメインとする音楽活動に取り組む中、その隙間を縫ってアルバム制作やライヴ活動のために集まるといったプロジェクト的な要素が強いバンドのように捉えられている。しかしながらバンドはそのような制約の中にあってもデビューアルバムの「FLYING COLORS」、ライヴ作品である「LIVE IN EUROPE」、そして新作「SECOND NATURE」といった非常に完成度の高い作品を一貫して創り続けている。新作「Second Nature」についてスティーヴ・モーズに訊いた。


Photo by Jim Arbogast

Interview / Text  Mamoru Moriyama

Translation         Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)

 

Muse On Muse (以下MM) : 今春にはDEEP PURPLEのメンバーとして日本公演を行いましたが如何でしたか?
Steve Morse (以下SM) : 日本に行くのはいつも楽しい。日本の特別な文化に触れることができるのはとても良い経験だと思っているよ。

MM : 日本をツアー中に特に印象に残った想い出はありますか?
SM : プロモーターのウドーさんが手厚くおもてなしをしてくれたのがとても印象的だった。それと、日本のオーディエンスは昔と違って今は素直でオープンな反応をしてくれるようになったのも印象的だったね。

MM : あなたの場合、DEEP PURPLE、Steve Morse Band、そしてFlying Colorsといったバンドで活躍していますが、それぞれをどのように分けて考えていますか?
SM : どのバンドにおいても重要なのは楽曲だ。だから自分の中で分けて考えるようなことは特にしていない。でも、例えば”Highway Star”のような楽曲を弾く時はソロ作品のインストゥルメンタル曲を弾いている時とは異なる自分のプレイ・スタイルが姿を現す。

MM : それではFlying Colorsについてお話を伺います。デビューアルバム「FLYING COLORS」を発表してからおよそ2年半ぶりとなるスタジオ作品「SECOND NATURE」がリリースされましたが、今作品を制作するにあたりコンセプトはありましたか?
SM : バンドが自然な形で曲を作るというシンプルなコンセプトだ。今回は楽曲に自然な「呼吸」を持たせることに重点を置き、あえて余計な編集を避けるようにした。それに、このバンドのリスナーは楽曲の細かい部分まで楽しむ人が多いのを知っているので、そういったリスナーたちにも喜んでもらえるような作品に仕上げたつもりだ。

MM : アルバムタイトルである「SECOND NATURE」にはどのような意味が込められているのでしょうか?
SM : 今回のアルバムがバンドにとってのセカンド・アルバムだから、「セカンド」という言葉を使っている。それと、second natureというフレーズは集中しなくても人が自然に行動するという意味もあって、今回のアルバムのコンセプトにもマッチしている。自動的に、そして自然な流れで行動するという意味だ。


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MM : デビュー作「FLYING COLORS」のインタビューの際にはアルバムに収録されている曲のほとんどは現場で書いたとのことでしたが、今作品の場合はどうでしたか?
SM : 前回に引き続き、曲を用意するのではなくアイデアを用意するという進め方に今回もこだわった。そうすることによってバンドは自分たちのサウンドに合わせるためにアイデアを変えていくことができる。

MM : アルバムのクレジットにはソングライティングにFlying Colorsとありますが、各メンバーの曲作りにおける役割、例えば歌詞を担う部分が大きいメンバーやメロディパート作りなどへの比重が大きいメンバーなど、実際の曲作りのプロセスを例に詳しい話をお聞かせ頂けますか?
SM : CaseyとNealが歌詞を書いている。僕は音楽的なアイデアを沢山出すようにしている。勿論、CaseyとNealも音楽的なアイデアを沢山出してくれるよ。MikeとDaveはバンド全体の方向性を正しい方向へと導いてくれる。特にMikeは作業が進んでいく中で僕たちが出し合ったアイデアを上手くアレンジとしてまとめてくれる。彼はともかく頭の回転が速い。

MM : “A Place In Your World”では曲の冒頭ではSteve Morse Bandを彷彿させられるあなたらしいフレーズが印象的です。歌のバックにおけるギターパートも曲に華を添えていますが、歌を惹き立てるためのバッキングパートに対するあなたの考え方をお聞かせ下さい。
SM : バッキング・ギターというのはヴォーカルを引き立てるためにあるものだと思っている。でも、その中でエネルギーや個性を与えることも必要だ。Nealの歌のフレーズの合間に取り入れているメロディックなアイデアは彼の歌に対する楽器を使ったレスポンスのようなものだ。感覚的にはギターを使ってヴォーカルとデュエットしているような感じだ。

MM : “Cosmic Symphony”のII.Serching For The Airのギターソロでは一聴するとスウィープピッキングにも聞こえるテクニカルなフレーズが出てきますが、あなたの場合はやはりオルタネイトピッキングで弾ききっているのでしょうか?
SM : そうだね、やっと自分のソロにもスウィープ奏法を取り入れることができたよ。ソロをレコーディングしている時の音のセッティングでこのフレーズを弾いていたらとても面白くて、そのまま最後までそのフレーズを弾き続けたのさ。バンドのメンバーもこのソロをとても気に入ってくれていたので、ライヴでも同じように弾いたよ。

MM : あなたのようなピッキングテクニックを身に付けるにはもちろん相当量の練習が必要だと思いますが、練習に取り組むにあたって考慮すべきアドバイスを頂けますか?
SM : 必要な時に様々なテクニックを瞬時に出すために練習は必要不可欠だ。しかしながら、我々の音楽はスケール練習をやっているかのように聴こえてはいけない。メロディックな方向性を持つことによって人の記憶に残るソロを演奏できるという考え方もある訳だ。練習をする際にリズムマシンやメトロトームを使うことによって自分の進歩を確認できるだけでなく、正確なタイミングで体内時計を養うこともできる。

MM : Flying Colorsは各メンバーが他のバンドで活動しつつ、機会を見てアルバム制作やライヴ活動のために集まるといったプロジェクト的な要素が強いバンドのように思われます。そのような制約の中でデビューアルバムの「Flying Colors」、ライヴ作品である「LIVE IN EUROPE」、そして新作「SECOND NATURE」といった完成度の高い作品を創り出し続けているバンドの結束力についてどう感じていますか?
SM : まず、我々はお互いのことをリスペクトしている。そして一緒にバンドができることに対して感謝の気持ちを持っている。このバンドの重要な要素は音楽を楽しむことでもある。自分にとっては他の才能あるミュージシャンと一緒に音楽を作る絶好の機会だし、自分の音楽歴の中でも十分にフィットするスタイルでやらせてもらえている。そういった意識を持った結果だろうね。


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MM : 今回のアルバムであなたが使用したギター、アンプ、ペダル類を教えて下さい。
SM : ギターはMusic Man Steve Morseシグネイチャー・モデル(ピックアップはDimarzioを4つ使用)とMusic Man Y2D(ピックアップはDimarzioを3つ使用)を使った。アンプはいつものENGL SM 100(シグネイチャー・ヘッド)。その他には自分のTonePrintをロードしたTC ElectronicsのFlashback ディレイ・ペダルとチューナー・ペダル。また、クリーン系やクランチ系にはKealeyのコンプレッサー・ペダルも使った。

MM : 近頃はかなり精度の高いモデリングアンプもありますが、そういったアンプについてはどのように感じていますか?
SM : とても良くできたモデリングアンプを1台持っているよ。Kemperというやつだ。とても使いやすいのは認めるが、使うことができる環境であれば昔ながらのアンプとスピーカーを使うようにしている。例えば小さな会場でのライヴやちょっとしたデモ演奏をやる時は、こういった便利な機材に自分の音を記憶させて使えたらとても便利で楽だろうね。効率よく機材の運搬やセッティングができるだろうし。でも、現段階ではその手間や費用をかけてでも本物のアンプを使うようにしている。

MM : あなたの普段の曲作りにおけるアイデアのストックにはDAWなども活用しているのでしょうか? もしよろしければ普段の曲作りやアイデアのストック方法について詳細をお聞かせ下さい。
SM : 何をやるにもCubase 7.5を使っているよ。ひとつのアイデアからデモ音源、そして更にはマスター・トラックまでとても簡単に作ることができる。モデリングアンプと同じでDAWも質が良くなり、使い勝手も良くなったことで作業そのものがとても楽になったから使わざるを得ない状況だ。自分の場合はシンプルなノートパソコンとCubaseだけで全てができてしまう。

MM : ところで、最近はあなた達と同様にアルバムをCDだけでなくアナログレコードでもリリースするアーティストが増えています。再びアナログレコードが扱われはじめている昨今の動向についてどう感じていますか?
SM : 一種のノスタルジーだね。音楽が宝物として扱われていた頃を思い出させてくれるのだろう。あの頃は1枚のアルバムが大きなイベントだった。薄暗い明かりの中で読めるほど大きい(歌詞カードやライナーの)文字を読みながら、A面を聴き終えたらひっくり返してB面を聴く。今ではイアホンで手軽に聴けるから、人は色んなことをやりながら音楽を聴くのが習慣になった。ゆっくり座って音楽が持つ様々な繊細さを聴くこともなくなってしまった。アナログ盤は徐々に消耗し、傷が付くようになる。アナログ盤を買う人たちはとても熱心なリスナーばかりだ。レコードを聴きながら他のことをやったりせず、集中してレコードを聴いているだろう。

MM : 今後の予定について教えて下さい。
SM : まだはっきりとは分からない。でも、最近は息子と曲を書いたりしているよ。彼はとても優れたプレイヤーだし、頭の回転も良くて曲のアイデアも豊富だ。何れアルバムをレコーディングしたいと思っている。ヴォーカルとヘヴィな演奏が入った内容になるはずだ。

MM : 最後に日本のファンへメッセージをお願いします。
SM : 日本の皆さんの熱いエネルギーと音楽に対する愛情には感謝しています。そして同時に丁寧で相手に対する尊敬の念を常に持っている文化が素晴らしいです。いつもライヴ・ミュージックを支えてくれてありがとう!
 
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Flying Colors official site www.flyingcolorsmusic.com
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FLYING COLORS / SECOND NATURE

1. OPEN YOUR EYES
2. MASK MACHINE
3. BOMBS AWAY
4. THE FURY OF MY LOVE
5. A PLACE IN YOUR WORLD
6. LOST WITHOUT YOU
7. ONE LOVE FOREVER
8. PEACEFUL HARBOR
9. COSMIC SYMPHONY
l. STILL LIFE
II. SEARCHING FOR THE AIR
III. POUND FOR POUND