Vol.37 Sam Coulson / August 2014

Sam Coulson


©Isao Nakamura

プログレッシヴ・ロック界の巨匠ギタリストであるスティーヴ・ハウの後任として見事にASIA入りを果たした将来性豊かな才能を持つギタリスト、サム・コールソン。
ASIAの新作「GRAVITAS」においてはその要所を押さえたクレバーなギタープレイで曲の魅力を余すことなく惹き立てることに貢献している。今回のインタビューではサムの音楽的なバックグランドからASIAの新作におけるギタープレイに至るまで色々と語って貰った。

Interview / Text  Mamoru Moriyama

Translation         Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)

 

Muse On Muse (以下MM) : あなたが音楽に興味を持った当時の年齢やきっかけについて教えて下さい。
Sam Coulson (以下SC) : 15歳の頃からロックを聴くようになり、同じ時期に友人がクリスマス・プレゼントにギターをもらい、その少し後にギターを弾き始めたんだ。翌年のクリスマスには自分も親からギターをプレゼントしてもらった。ギターを手にしてからは完全にとりこになって、ともかく練習ばかりしていたよ。

MM : 当時はどのような音楽、アーティストに影響を受けていましたか? 彼等に惹かれた理由もお聞かせ下さい。
SC : 多くのギターの名手たちに影響を受けたし、ブルース・ロック系のギタリストにもハマったね。特にジミ・ヘンドリックス、クラプトン、ジェフ・ベック等、60年代の革新家たちは特に好きだったよ。生々しいブルージーなアピールがあるところが彼等を好きなった理由だ。それと、あの時代において当時の器機を使って色んな新しい音を作り出していたことも魅力的だった。他にもポール・ギルバート、エリック・ジョンソン、イングヴェイ・マルムスティーンも大ファンだ。彼等みたいに優れた腕前をもったプレイヤーを見るのはとても刺激的だ。しかし、それだけではなく彼等には優れたフィーリングも持ち合わせている。彼等のプレイの中にも60年代のギター・ヒーローたちから影響が見られる。そこがまた最高だと思っているよ。

MM : ギターを始めてからコピーしていたアーティスト、曲や当時の想い出についてお聞かせ下さい。
SC : 色々やっていたよ。マイケル・シェンカーのインストゥルメンタル曲”Into The Arena”をコピーしていたのはよく覚えているね。あの曲を弾けるようになった時はとても誇りに思えたよ!ウォルター・トラウトの「Relentless」も当時お気に入りの作品だった。あのアルバムを聴きながらジャムをすることを覚えたんだ。

MM : 彼等の音楽やギタープレイからはどのようなことを学びましたか?
SC : 色んなことを学んだね。でも、その中でギターのトーン、フィーリング、そして優れたヴィブラートの重要性を覚えたのが一番大きかったと思うよ。

MM : ギターを始めた頃は憧れのギタリストのプレイを学び、そしてテクニックを向上させ、その後に自分のオリジナルなプレイスタイルや曲、フレーズ作りを経るかと思いますが、あなたの場合はどうだったのでしょうか?あなたが現在のプレイスタイルを創り上げた過程について詳細をお聞かせ下さい。
SC : 音楽の場合は自分が何を飲み込むかによってスタイルが決まるような気がする。自分の場合は常に好きなミュージシャンのプレイを自分のプレイに取り入れようとしていたけど、同時に自分だけの音を見いだせるように努力をしているんだ。

MM : あなたはJAM TRACK CENTRALで”MODERN ROCK SOLOING”や”CUSTOM ROCK BLUES”などのギターレッスン教材を提供していましたが、それらを含めASIAに加入するまでにおけるあなたの音楽活動状況について詳しくお聞かせ下さい。
SC : 16才の頃からイギリス・ミッドランド地方で様々なバンドでプレイしていたよ。同時にキダーミンスターにある学校で音楽技術の勉強をしていた。2006年頃からYouTubeに動画をアップするようになったんだ。それは今でも続けている!本格的なバンドとして最初に参加したのがスコットランドのNinetysix4というバンド。家を離れてグラスゴーで暮らし、とても刺激的な時期だったね。そのバンドとはEPをレコーディングし、ツアーも行った。上海では大きなショウに出ることもできたし、グラスゴーではUFOの前座も務めることができた。その後、ギター講師になるため、そのバンドを離れることになったけど、2012年にはGreat Guitar Escapeというイベントでポール・ギルバートやガスリー・ゴーヴァン、トニー・マカパインと共演を果たすことができた。JAM TRACK CENTRALとは長年共に仕事をしていて、彼等のチーム所属することができてとても誇りに思っている。

MM : ASIAへ加入するに至った経緯についてお聞かせ下さい。
SC : ポール・ギルバートが推薦すてくれたことがきっかけでASIAに加入したんだ。

MM : ASIAへ加入するためのオーディションはどのように行われたのでしょうか? 事前にいくつかの曲を伝えられメンバーとともにプレイしたのでしょうか?(その場合、指定されたのはどの曲でしたか?)その時の状況やオーディションに挑む上であなたがどのように準備したのかを詳しくお聞かせ下さい。
SC : ポール・ギルバートから連絡が来て、その後ASIAの曲を覚えた感じだ。正式なオーディションがあった訳じゃないんだ。以前に自分がYouTubeにアップした動画をメンバーは事前に見ていて、既に僕のプレイを気に入ってくれていたのさ。スタジオで会って、レコーディングをして、1時間ほど色々と話をして、数日後にマネージャーから連絡があり、僕が後任として決まったと知らされた訳だ。

MM : ASIAに正式に加入後、オーケストラとの共演なども含めたツアーを欧州で行いましたが如何でしたか?
SC : 2013年のツアーは基本的に通常のロック・バンド編成でツアーを行った。実際にオーケストラと一緒にやったショウはブルガリアの1公演だけだった。オーケストラとの共演はそれまでにやったことがなかったのでとても楽しかったよ。勿論、それ以外の公演を含めたヨーロッパ・ツアーはとても楽しかった!

MM : ステージではスティーヴ・ハウによるプレイも再現することになったと思いますが、歴史あるASIAの各曲をプレイする上でのあなたの取り組みに方についてお聞かせ下さい。
SC : 初めてジョン・ウェットンに会った時に彼はスティーヴ・ハウのクローンは望んでいないとはっきり言われたんだ。常に自分のプレイを心がけるようにと言われた。勿論、ASIAのサウンドにおいてスティーヴ・ハウのプレイは非常に重要ではある。スティーヴ・ハウが演奏していたフレーズ等は残しつつもソロでは自己流のスタイルでプレイするようにしている。僕の音色とスティーヴ・ハウの音色はかなり異なるので、今はバンド・サウンドが全体的によりヘヴィな雰囲気になっている。


 ©Isao Nakamura

MM : 新作「GRAVITAS」では作曲者のクレジットを見るとジョン・ウェットン、ジェフ・ダウンズがすべての曲を書いているようですが、ギタープレイやサウンドに関して彼等から曲に対するイメージを伝えられたり等の要望はありましたか?
SC : 「GRAVITAS」のギター・パートをレコーディングしていた時は、ジョンとジェフが常に一緒にいて、何を弾いてほしいかを細かく指示してくれた。でも、ソロの部分に関しては自分で何が必要かを判断する自由がもう少し与えられていた。自分にとってはそういった部分が一番楽しめるところでもある。

MM : ASIAの音楽はキーボードも曲の重要なパートを占めており、ギター、ベース、ドラム編成のロック・スタイルのように印象的なギターリフで曲を牽引するタイプとは異なりますが、そのような中でギターのバッキングパートの部分についてどのように考えて取り組みましたか? あなたのアプローチ方法についてお聞かせ下さい。
SC : その通りだ。ASIAの音楽はキーボードも重要なパートを占めている。リズム・ギターの多くはベースとのコンビネーションでとても特徴的なハードな音に仕上がっていることが多いね。例えば”Valkyrie”のような曲ではコードをいくつも重ねて、お約束だけど更にそのトラックをダブらせているんだ。

MM : 各曲におけるギターソロではボーカルが歌う印象的なメロディを踏襲しつつもテクニカルでフラッシーな部分を一瞬光らせるツボを押さえた起承転結あるクレバーなプレイに惹かれました。
SC : 正直、ボーカルのメロディを踏襲しているという意識は無いんだ。でも、ギターソロに印象的なメロディがあることは非常に重要だと思っているよ。僕はブライアン・メイのギターソロが大好きなんだ。彼のソロはどれも口ずさめるものばかりだ。自分の場合はそこに更にフラッシーなプレイを取り入れることで、少しモダンな輝きを加えることができる訳だ。

MM : “Valkyrie”や”Gravitas”を筆頭のギターソロの旋律がとてもメロディックで印象的ですが、これらメロディについてはジョン・ウェットン、ジェフ・ダウンズからのインプットもあったのでしょうか?
SC : 彼らのインプットは特に無かったよ。ソロ部分に関しては真っ白いキャンバスを与えられた状態で、自由にプレイすることができた。

MM : あなたがギターソロを組み立てる際のアプローチ方法についてお聞かせ下さい。 
SC : まず、最初はコード進行に合わせてインプロヴィゼイションをしている。それを何度か繰り返してから好きな部分をピックアップしてソロの構成を作るんだ。特に決まったルールは設けていないけどね。自分が満足するまで弾き続ける感じだよ。

MM : ASIAでギターをプレイする上でのギターのサウンド作りについてあなたの考えや工夫していることについて教えて下さい。
SC : ASIAでプレイする際は全体的にEQで高音域を少し足している。以前はトリオ系のバンドで演奏していたことが多く、その場合は音量を割と大きくする必要があった。でもASIAの場合は効果的に音を抜けさせるために高音域をもう少し効かせるようにしているんだ。

MM : アルバムの中で使用したギター、アンプ、エフェクター、ペダル類を教えて下さい。またピックの種類や使用している弦の種類なども教えて下さい。
SC : 僕はCHARVELのギターが大好きで、ASIAの時はそれを使っているんだ。全てフロイドローズのトレモロ付きだ。基本的にピックアップはHSHにしている。弦はROTOSOUNDの10を使っている。これは半音下げチューニングに対応するためだ。アンプはENGLのPowerball IIを2台使っている。素晴らしいアンプだよ!4チャンネル仕様で、どんな音も出せる信頼性の高いアンプだ。それに音量も信じられないぐらい大きい!ここ数年間、規模の大きいコンサートを沢山やっているけど、一度もマスター・ボリュームのツマミを2以上に上げたことがない。嘘じゃないよ!足下にはストンプボックスをいくつか置いている:ディレイ、コーラス、チューナー、ワウ、そして追加のオーバードライブ。ピックに関してはともかくDunlopのJazz IIIが無いと駄目なんだ。小さめで先がとがっているところがとても使いやすい!素晴らしいピックだよ!

MM : 「GRAVITAS」はジョン・ウェットン、ジェフ・ダウンズがすべての曲を書いていますが、今後は曲作りでもあなたが関与を深めていくことによりASIAの歴史ある音楽スタイルを踏襲しつつも新しい展開が繰り広げられることを期待している音楽ファンもいると思います。
SC : 勿論、機会があれば曲作りもしてみたいと思っているよ。でも、ジェフとジョンのパートナーシップはとても強いものだ。ASIAのサウンドを担う最も重要な部分だと僕も思っている。彼らが作る楽曲全てはピアノとボーカルのみで作られている。他の楽器が加えられる前に、既にとても美しい楽曲に仕上がっている。だからこそ、どの楽曲も不朽の名曲になっていく訳だ。

MM : 今後の予定をお聞かせ下さい。ソロ・アルバムなども構想にありますか?
SC : 次はアメリカで30公演のツアーがある。それが終わったら今度はイギリスで5公演行われる予定だ。ソロ・アルバムはずっと作りたいと思っていたけど、今のところはなかなか時間がなくてまだ実現していないんだ。今後に期待していてくださいね!

MM : 最後に日本のファンへメッセージをお願いします。
SC : 今年、日本で演奏できたのはとても光栄だったね。以前から日本で演奏したいと思っていたんだ。日本での経験は予想通り素晴らしかったね。日本の文化、そして日本人の皆さんのおもてなしには感動した。また近い将来、日本に行けることをとても楽しみにしているよ!

 

ASIA official site : http://originalasia.com/
Sam Coulson official site : http://www.samcoulson.com/


ASIA / GRAVITAS
WARD RECORDS VQCD-10364 \3,024 (税込)
http://wardrecords.com/

01.VALKYRIE
02.GRAVITAS
03.THE CLOSER I GET TO YOU
04.NYCTOPHOBIA
05.RUSSIAN DOLLS
06.HEAVEN HELP ME NOW
07.I WOULD DIE FOR YOU
08.JOE Di MAGGIO’S GLOVE
09.TILL WE MEET AGAIN
10.RUSSIAN DOLLS (ACOUSTIC)