Vol.32 MARAGOLD / March 2014

MARAGOLD


グレッグ・ハウが中心となり結成されたバンドと聞くと多くの音楽ファンは高度なジャズ・フュージョン音楽をイメージするかもしれない。今回特集するMARAGOLDは良い意味でそのような音楽ファンの予想を覆すだろう。
バンドの華でありそのパワフルかつハートが込められた美しい歌声で聴く者を魅了するボーカリストのメーガン。ヴァラエティに富んだリズムギターにメロディックかつ緩急をつけたギター・ソロで曲を惹きたてるグレッグ。ドラムのジェンルカ、ベースのケヴィンのリズム隊が生み出す心地よいグルーヴ。そして一度聴くと頭から離れない印象的なメロディを持った曲を擁するなど多くの魅力を放つバンドがMARAGOLDである。
MUSE ON MUSEではメーガン、グレッグの二人にMARAGOLDについて語って貰った。

PART1 – Meghan Krauss (Lead Vocals)

Interview / Text  Mamoru Moriyama

Translation         Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)

 

Muse On Muse (以下MM) : あなたが音楽に興味に持った当時の年齢やきっかけについて教えて下さい。
Meghan Krauss (以下MK) : 初めて歌を歌い始めたのは2才の頃だったの。母が言うには、言葉が少し喋れるようになった途端に”You Are My Sunshine”をひっきりなしに歌っていたそうよ(笑)それが全ての始まりだったわ。

MM : 当時はどのような音楽、アーティストに影響を受けていましたか? 彼等に惹かれた理由もお聞かせ下さい。
MK : 10才の頃、その年齢の子供にしてはとても幅広い音楽の趣味を持っていたの。両親はレコードを沢山持っていて、私はKC AND THE SUNSHINE BANDからGRATEFUL DEADやLED ZEPPELINまで、色々な音楽を聴いていた。おかげ様で、私は多くの音楽ジャンルを理解することができたの。私の父はクラッシック以外の音楽は全てカントリーだと思っているような人なので(笑)子供の頃はクラシックも聴いていたわ。

MM : プロのシンガーになろうと決心したのはいつ頃でしょうか? MARAGOLDに加入するに至るまでのあなたの音楽活動の道のりについて詳しく話して頂けますか?
MK : 自分の中ではずっとプロのミュージシャンになりたいと思っていた。自分の職業にしたいと思っていたわ。でも、実際は他のことをある程度経験してから、思い切って音楽の世界に飛び込もうと決めたの。以前やっていたバンドのドラマーと出会ったのはカラオケ・バーで、それ以降はミュージシャンの生活をしているわ。ほぼ、毎週末のように歌を歌い、決して元へと戻ることはなかった。自分で、これが進むべき道だということを分かっていた。

MM : はじめてMARAGOLDのメンバーと音を出した時の状況や彼等の印象は如何でしたか?
MK : ケヴィンのことは前から知っていたわ。当時からケヴィンは西海岸の音楽シーンでもの凄い才能を発揮していた。彼は歌も素晴らしいし、今までに見たプレイヤーの中でベストよ!信じられないレベルよ!だから、彼のことは噂でも聞いていたし、実際にライヴも見ていたし、その腕前に常に驚かされていたの。ケヴィンからこのプロジェクトのオファーをもらった時は本当にびっくりしたし、他のメンバーとも面識がなかったのでちょっと怖かったの。レコーディングが始まるまでは他のメンバーとも会ったことがなく、やり取りも全て電話だった。グレッグはとても優しく、社交的でフレンドリーだったのですぐに友達になったわ。ジャンルカはともかくこの世で一番優しい人。私たちメンバーの出会いはとても運命的だったわ。スタジオで音を出した時も、まるで体に電流が走っていたかのような感覚だったの。みんな鳥肌状態でお互いの顔を見合わせて、頭をずっと縦に振っていた感じだったわ!

MM : MARAGOLDの各メンバーについて紹介下さい。
MK : グレッグ・ハウ、ギターに関してはともかく技術が高くて素質がある人よ。彼はファンの前であまりユーモラスな側面を見せないけど、実際には本当に面白い人よ。彼は非常に賢い人間でありながら、クレイジーになるととことんクレイジーなのよ!人混みの中で大転倒して周りの人たちに助けられたり、ともかく可笑しいの!彼はそういったことを恥じないし、それが彼のいいところでもあるわ。ジャンルカは人間的にとても美しい。とても優しくて才能のあるドラマーよ。それに、彼は料理も上手なの。バンドのために料理してくれることもあって、イタリア出身の彼が作る家庭料理は本当に美味しいわ。ケヴィンはともかくぶっ飛んでいる。恥を感じない人ね。彼の面白いエピソードは沢山聞いたことがあるけど、場の雰囲気を盛り上げようと思って犬のオシッコを舐めたというのが一番強烈だったわ!それがケヴィンなの。場がどんな状態だろうと、彼は雰囲気を良くしてくれるのよ。


MARAGOLD L to R : Gianluca Palmieri(dr), Greg Howe(g), Meghan Krauss(vo), Kevin Vecchione(b)

MM : MARAGOLDの1stアルバムではあなたは圧倒的な存在感のあるパワフルかつ美しい歌声が素晴らしくとても印象的です。このアルバムであなたはどういったことを心掛けていたのでしょうか?
MK : このアルバムをレコーディングしている時、特に心がけたことはないわ。ともかく誇りに思えるような作品を作りたいと思っていただけよ。自分たちが楽しんで演奏できるようなものを作りたかったの。作業はとてもスムーズに進んだし、それほど努力した気もしないわ。スタジオに入り、自然と魔法のような体験ができた。ちょっと不思議な言い方かもしれないけど、本当にそういう感じだったのよ。

MM : 各メンバーとのレコーディング作業は如何でしたか? 印象に残っているエピソード等ございますか?
MK : 元々はケヴィンしか実際に会ったことがなく、グレッグとジャンルカとは初対面だったから、初めてレコーディングに入る時は相当緊張したし、どうなるか不安でしょうがなかった。でも、メンバーはとてもいい人たちばかりだったし、仕事という感じがしなかったわ。全てが自然に進んだの。みんな面白くて、ケヴィンはずっと冗談を言っているし、私とグレッグはレコーディング中にBobbitというゲームにハマっていたわ。本当に楽しかった!

MM : アルバムの中であなた自身が特に印象に残っている曲とその理由をお聞かせ下さい。
MK : 特に印象に残っている曲を選ぶのは難しいわね。どの曲も大切な曲だから。でも、中でもお気に入りだったのは”Oracle”。アリーナ・ロック的なアンセムのような曲で、ともかく無我夢中になるの。歌詞の内容的にも、メロディ的にも大好きよ。それに、この曲でのグレッグのギター・ソロはアルバムの中で私が一番気に入っているソロなの。とても美しい構成でありながら、それを素晴らしく弾いているわ。この曲とは大切な繋がりを感じるの。

MM : MARAGOLDとしての今後の抱負をお聞かせ下さい。
MK : これからも各メンバーにとって意義のあるものを作り続けていきたいと私は思っているの。それがリスナーにも受け入れてもらえていれば素晴らしいわ。私たちがこの音楽に心を動かされているのと同じように、聴いている人たちも心を動かされていたら嬉しい。ともかく音楽を作り続けたい。今、やっていることをずっと続けたい。普通とは違うことを私たちはやっている。30年後に振り返り、私たちは必ず今やっていることと、そこから生まれた芸術に対して感謝の気持ちを持つに違いないわ。これを続けて、どんどん大きくしていきたいと思っている。

MM : 日本のファンへのメッセージをお願いします。
MK : 日本のファンの皆さん、ありがとう!いつも応援してくれて感謝しているわ。私たちの音楽を受け入れてくれてありがとう!早く日本へ行って皆さんに会いたいわ!

 

PART2 – Greg Howe (Guitar)

Muse On Muse (以下MM) : MARAGOLDを結成した経緯についてお聞かせ下さい。
Greg Howe (以下GH) : 以前からヴォーカル入りのバンドやりたいとずっと思っていたんだ。ケヴィンとも長い付き合いだけど、前々からヴォーカル入りのバンドをやりたいという話はしていたが、なかなかタイミングが合わなかったのさ。僕は所属していたレコード会社と契約を交わしていて、レーベルは自分をインスト・アーティストとして売り続けたいという考えが強かった。その契約が満了した時点で、僕は新たなバンドを作るチャンスを得た。その時にケヴィン、そして「Sound Proof」という自分のアルバムで叩いてくれたジャンルカと一緒にバンドを始めたんだ。その頃はElvio Fernandesというシンガーと一緒にやることを考えていた。彼は今DAUGHTRYのバンドメンバーとして活躍している。2009年頃、Elvioはバンドを離れ、ヴォーカリストがいない状態になってしまったのさ。その後、ケヴィンが東海岸で様々なバンドで歌っていたメーガンを見つけたんだ。彼女の歌声を聴き、そしてその姿を見たら、このバンドにぴったりだということがすぐに分かった。彼女に加入を打診したら、ありがたいことに彼女は快く引き受けてくれた訳さ。

MM : MARAGOLDの1stアルバム「MARAGOLD」はメーガンのパワフルで美しい歌声と素晴らしいバンドサウンド、そして良い意味でキャッチーで聴く人の心に残る楽曲が満載された素晴らしいアルバムです。アルバムのコンセプトについて教えて下さい。
GH : アルバムのコンセプトは自然にできたものだと思っているよ。事前にコンセプトを持って臨んだ訳じゃないんだ。メンバーそれぞれが自然だと思えるような音楽、そして自分たちが受けて来た影響を取り入れることのできる音楽を作りたかっただけさ。ある意味、音楽そのものが我々の方向性を支配したと言っても過言ではない。音楽性を無理矢理作り上げようとはしなかった訳だ。自然に進化していったんだ。だから、頭の中にコンセプトは元々なかった。あえてコンセプトがあったとしたら、それは自分たちに正直に音楽を作るということだったかもしれないね。

MM : アルバムに収録されている曲の曲作りはどのように進められたのでしょうか?
GH : 作曲に関して言えば、特に決まった方法は無い。ギター・リフから曲に発展する場合もあれば、コード進行が曲へと発展する場合もある。ドラムのリズム・パターンから曲のアイディアが浮かぶこともあるよ。時にはキーボードの前に座って、ギターという楽器にとらわれない状態で作曲をする場合もあるんだ。そうすることによって音楽に対する新しい考えを得ることができる。基本的にはギターを使わないで作曲をすることが多いね。頭の中でアイディアが浮かび、後からギターを使って音符を探す。ともかく、色んな方法の組み合わせなんだ。歌詞に関しては・・・ケヴィンと二人で書いたね。当時、ケヴィンはまだ東海岸に住んでいたんだ。何時間もSkypeでアイディアを交換していたよ。(今回の楽曲の)アイディアは古いアイディアから発展したものも存在する。昔からアイディアだけあって、曲に発展させることができなかったものを(ケヴィンと)一緒に仕上げたのさ。例えば”Evergreen Is Golder”のリフは10年前から存在している。ともかく、決まった方法は無い。ただ、心が赴くままに作業を進めただけなんだ。

MM : ギターのインストゥルメンタル曲ではなくMaragoldのようにシンガーがいるバンドの曲を作る上で心掛けていることはありますか?
GH : シンガーがいるバンドのために曲を書くのと、インストゥルメンタル・バンドで曲を書く最も大きな違いは、シンガーがいるバンドの場合はギタリストやプレイヤーに限らない、より幅広いリスナー層にアピールできるようにしなければならないという点だ。ある意味、ヴォーカル入りの曲を書く時はクリエイティヴでユニークでありながらも、平均的なリスナー層にとってある程度親しみやすく、また突拍子も無さ過ぎない内容に仕上げなければならないという部分では非常にチャレンジングだ。特にラジオ向けの音楽である以上、自分にとっては歌が入っている音楽を作る方が難しいね。それが最も大きな違いだ。自分にとってはインストゥルメンタル音楽を書く方が楽だよ。何故なら、制約が全くないからね。自分の思う存分クリエイティヴなことができる訳だ。それに、リスナー層もユニークなものを求めていることを分かっている。実際に(MARAGOLDを聴く人々の中にも)ミュージシャンが多いのも分かっているから、彼らを満足させないといけないという気持ちはあるし、同時に新たなリスナー層を開拓したいのもある。この絶妙のバランスを見つけるのは非常に難しいことだ。

MM : アルバムにおけるあなたのギターのバッキングはどの曲においても実に多彩でメーガンの歌を惹きたてています。シンガーがいる場合におけるバッキングの組み立てやギターのサウンド作りにおけるあなたのアプローチ方法について詳しくお聞かせ下さい。 
GH : ギター・パートはその楽曲のメインとしてフィーチャーされているパートのためにスペースを空けておくように作られている。それはインストゥルメンタル・アルバムでも同じことだ。常にフックのある音楽的なアイディアを考えているが、それはあくまでもリード・ヴォーカルの邪魔にならないように考えるのさ。インストの場合は(メロディを弾いている)リード・ギターの邪魔にならないようにする。だから、自分のギター・パートは大きなコードを鳴らすよりもファンキーなアプローチを取っているのが分かるはずだ。むしろコンピングのような感じだね。それに、リズム・ギターのパートはインプロヴィゼイションが多く、ジャズ的なアプローチもある。でも、最も重要な目的はヴォーカルの邪魔をせずに音楽のフィーリングを高めることだ。

MM : アルバムにおけるギター・ソロはどの曲も歌心を感じさせるメロディックであるとともに、一方でテクニカルでスリリングな素晴らしいプレイです。あなたがソロを組み立てる際のアプローチ方法についても詳しくお聞かせ下さい。
GH : 自分のギター・ソロのアプローチは少し変わっているかもしれないね。何故ならソロを弾いていて、自分のプレイを客観的に聴くことが非常に難しいからだ。スタジオでレコーディング等の作業をしている時、自分にとって最も効果的な方法はまずソロの部分を何度か通して弾く。その中でソロ全体の輪郭、もしくは骨組みを作り上げる。それができれば、あとはその中でインプロヴァイズして弾いていくのさ。場合によってはミスをするまでただひたすら弾き続けて、テイクを聴き直して気に入った部分があればキープしてまたその後のパートから弾き直すこともある。気に入った部分がなければ、また最初からやり直しだ。自分がソロにおいて絶対的に必要としているのは、そのソロに「炎」があることだ。自分は事前にソロを構築することができない。事前に作ってしまうと、その「炎」のような燃える要素が消えてしまうのさ。自分にとってソロにはこの「炎」の要素が非常に重要なんだ。メロディ的な部分で言うと、産業ロック・ベースのロック・バンドである以上、ソロにもメロディックな要素を取り入れる必要はある。きっと、ソロを弾いている時にそれを無意識に考えているのだろう。このアルバムにおけるギター・ソロは他のインスト作品よりメロディックな仕上がりになっているのは確かだ。でも、アプローチとしては同じだ。そのソロに入り込めるようにすると同時に、客観的になるというアプローチを取っている。実際にはとても難しいことだが、楽しいことでもある。挑戦することは楽しいことだからね。

MM : アルバムに収録されている各曲についてコメント(解説)をお願いします。
GH :

“Evergreen Is Golder”
この曲のイントロ・リフはかなり昔に思いついたものなんだ。アルバムのオープニングにはミディアム・テンポのキャッチーな曲が欲しいと思っていた。それでこの曲で始めたという訳だ。キャッチーなミディアム・テンポのロック・チューンだよ。

“Saturday Sun”
まるでリハーサルで演奏しているかのような騒々しい曲が欲しいというアイディアから発展した曲だ。大音量でガレージで演奏しているようでありながらもまとまっている感じ。こういう騒々しいのが好きなんだ。僕はRAMONESやSEX PISTOLS、パンク系等の音楽も前から好きだった。そういった影響がこの曲に入っているとまでは言わないが、ダブルタイムのスネア等、その雰囲気だけでも取り入れたかった。

“Lullaby”
“Lullaby”は元々メイン・テーマ的な下降していくフレーズしか存在しない状態で始まった曲だ。互い違いのリズムを持った曲でとても面白かったけど、曲を完成させても何かが足りないとずっと思っていたんだ。この曲全体をまとめる何かが必要だった。色々試しつつ最終的にはクリーンのギター・パートを入れて、それが今では曲のフックになっている。とても素晴らしい構成に仕上がっていることもあって、この曲はかなりのお気に入りだ。それにサビが転調しているのに全く不自然に聞こえないのも気に入っている部分だ。音楽的に完成度が高いだけでなく、素晴らしいポップなフィーリングも兼ね備えているので、”Lullaby”の仕上がりにはとても満足している。

“Oracle”
この曲はクラシック・ロックからアイディアを得ている。メーガンが伸びやかに歌えるような骨太くてスローでヘヴィな曲をいつも想像していたんだ。平歌はメロディックでインターヴァリックなヴォーカル・ラインを取り入れたかった。Barbara Streisandを想像していた。この曲がどのようにして生まれたかを説明するのは難しいね。Barbara StreisandとAEROSMITHを同時に聴いていたらこんな曲が生まれるという感じかな。ともかく、クラシック・ロックに敬意を表した曲だ。

“Cry”
“Cry”は(レコーディングの)最後に短時間で書かれた曲だ。普段、インストゥルメンタル・アルバムをレコーディングする時はいつも8〜9曲をアルバムに収録している。それは1曲が6分ぐらいあって長いからだ。今回のレコーディングで楽曲の演奏時間を計ったら明らかに足りなかったんだ。既にマスタリング目前という状態で急いで書いた曲のひとつがこの”Cry”だ。8分の6のリズムで何かやりたかったんだ。ケヴィンが8分の6のリズムの話をしていて、ケヴィンも僕も8分の6のリズムが好きだった。そのリズムでリフを考えて色々と弾いて、歌詞とメロディを考えて、何となく曲が出来上がったいった感じだった訳さ。時間的に追いつめられた状態の中だったけど、結果はとても良かったね。

“Paradigm Tsunami”
とても風変わりな曲だったね。多くのヴァージョンを経て仕上がった感じだ。元々は別のキーだったし、サビも全く違っていた。それに、元々はヘヴィな曲にするつもりもなかったんだ。サビはもっとソフトでメロディ重視の予定だった。でも、なかなかメーガンのヴォーカル・パートがしっくりいかなかったのさ。平歌が上手く出来上がったと思ったらサビの音程が高過ぎて、サビが上手く出来たかと思ったら今度は平歌が低過ぎて・・・という具合でサビを書き直したんだ。方向性を変えて力強いモダンなロック風のアレンジにしてみたのさ。僕はRAGE AGAINST THE MACHINEが大好きなんだけど、その影響を少し垣間見える部分かもしれないね。この曲のサビもギリギリに書いた感じだったよ。実際には同じ曲の全く異なるヴァージョンを録音してあるんだ。将来的には何らかの形でリリースするかもしれない。別の曲のリメイクとしても色々試したりはしたんだ。結果的にはまた別の曲のリメイクとして上手くいきそうだったけど、それらのアイディアは最終的に使われなかった。

“Story’s Ending”
この曲は10年ほど前に友達でもあるCasey Cavaliereと共作した曲だ。当時は別の女性ヴォーカリストと一緒にやっていんたんだ。歌詞は二人で書き、作曲は殆ど自分ひとりでやっている。オリジナル・ヴァージョンはもっとR&B風でファンキーなアレンジで今の形とは全く異なる雰囲気だった。僕はアコースティックギターを使って、もっとストレートなリズム・パターンでこの曲をロック系のバラード調に仕上げたらきっと合うとずっと思っていたんだ。それに、メーガンの声を知ってからは、彼女にぴったりの曲になると思っていた。

“Magic Pain”
この曲もレコーディングの最後の方で急いで書かれた楽曲だ。急いで書いたというのは45分以内という意味だ(笑)元々、ラジオ向けにしようとは思っていなかった曲だ。ロック・アンセムのようなクオリティを誇るライヴ向けの楽曲にしたかったのさ。インプロヴァイズするスペースを十分に残していて、どちらかというと自分のインスト系音楽の影響を感じる曲だね。自分でもかっこいい曲だと思っているよ。ツェッペリン的なクラシック・ロック系のフィーリングがある曲だ。あからさまにラジオ向けに作った感じの曲にはしたくなかったのさ。アルバムの他の曲とも相性がいいんだ。

“Boom Boom Tap (Dance On)”
この曲は殆どがケヴィンのインスピレーションによって生まれた曲だ。作曲作業を進めている中で、彼が思いついたコード進行だ。彼はそのコード進行をとても気に入っていたんだけど、何故か自分にはピンとこなかったんだ。ケヴィンはコード進行だけの状態で聴かせてくれていたけど、どうも自分の耳には心地いいとは思えなかった。実際にコード進行を演奏し始めたら、ケヴィンは自由に演奏してくれと言って、僕はその中でギター・リフを作り出し、曲が少しずつまとまるようになった。そして、ケヴィンがそのコード進行の上でメーガンが歌いそうなヴォーカル・ラインを乗せたら、僕はすぐに曲を気に入ったよ。この曲を書いた時期はブルース系ギタリストやジミ・ヘンドリックス、そしてジミヘンに影響されたプレイヤー等の作品を多く聴いていた。今までに自分のアルバムで聴かせたことがなかった側面を披露する機会でもあった。レコーディングをしていてとても楽しかったし、ファンにとっても今までに聴かせたことのないスタイルだ。この曲はほぼワンテイクで録った曲だ。デモを作った後にギター・パートを録り直そうと思っていたのだが、アイディアを出し合っている中で録音したデモと同じフィーリングを捉えることができなかったんだ。だから、この曲はデモの殆どがそのまま実際の曲になってしまった。

MM : 今回のアルバムの中で使用したギター、アンプ、エフェクター、ペダル類を教えて下さい。
GH : 色んな機材を使ったよ。アルバムにはデモからそのまま進化して採用された楽曲もあるからね。実験しながらアイディアや曲を作っている時は色んなことを試している。アンプを使って弾いている時に、必要な音が作れない時は別のアンプに繋げたり、フットペダルを使ったりして探している音が見つかるまで続ける。その場で色々と変わるから今までの足取りを全てチェックすることは難しい。基本的な使用機材は・・・アンプは何台か使った:ヘヴィなパートにはCornford MK50やMarshallを使った。Marshallの中ではJCM 2000(Dual Channel)がお気に入りだったね。自分のアンプの場合は少しだけモディファイしてある。それに、初期のアルバムで使っていたFender Dual Showmanも使った。特にFenderっぽいジャキジャキしたシングルコイル系のサウンドには抜群のアンプだ。ヘヴィな部分ではMarshall、Cornford、それにAxe-FXもアルバムではかなり使っている。クリーン部分に関してはDual ShowmanとAxe-FXを使う。かなり多くの機材を使っている。ペダル類に関しては、正直あまり使っていない。Carl MartinのPLEXI TONEはとても使いやすくて、ストラトのクリーン・サウンドを少しブーストさせたい時に使っている。ワウペダルはDunlopのBuddy Guyモデルを使っている。白い水玉模様のペダルだ。アルバムではLAGUNAのギターを何本か使っている。LAGUNAは自分が普段使っているギターだ。実際にはストラトかストラトタイプのLAGUNAを使っている。シングルコイル3つにピックガードが付いているだけだ。ピックアップはDiMarzioのAreaシリーズを使っている。素晴らしい音をしているよ。ともかくチェーンはなるべくクリーンにするようにしている。普段、ギターの信号はギターからケーブルでアンプへ、アンプからキャビネット、そしてキャビネットからマイクで音を拾ってコンソールへ送るというシンプルなセッティングが多い。僕は大きいラックシステムやペダルボードを使うのは好きじゃないんだ。なるべくオーガニックなアプローチで取り組みたいと思っているんだ。

MM : 今後の活動予定について教えて下さい。
GH : 今後はMARAGOLDのスケジュールで忙しくなるだろうね。メンバーはみんなラスベガスに移住することになっているんだ。既に新曲を沢山レコーディングしているよ。おそらく、もうすぐ新しいアルバムの制作を始めることになるだろう。それと、ツアーに向けてもバンドは動いている。今年はツアーを沢山やる予定だ。あと、DV Mark社ではシグネイチャー・アンプの発売も決定している。その名も”Maragold”だ!今年の6月から生産を開始する予定だ。アンプは素晴らしい音をしているよ。自分が普段使っているのと同じトーンでアタックが早く、音のレスポンスも非常に早い。どちらかと言うとブリティッシュ寄りの特性を持ったアンプだ。ワット数は低く40W。アウトプットにはEL34が2つあって、ブースト・スイッチ等の余計な装置は一切付いていない。2チャンネルにベース、ミッド、トレブル、プレゼンス、フット・スウィッチ、エフェクト・ループ、それくらいだ!それと、春には教則DVDシリーズの第1弾が発売される予定だ。ともかく忙しい一年になりそうだけど、とても楽しみだよ。

MM : 日本のファンへのメッセージをお願いします。
GH : 日本の皆さんは本当にロックしている!いつも応援してくれて感謝しているし、早く日本へ行って皆さんの前でプレイしたいよ!


MARAGOLD / Maragold

1.Evergreen Is Golder
2.Saturday Sun
3.Lullaby
4.Oracle
5.Cry
6.Paradigm Tsunami
7.Penniless and Sane
8.Story’s Ending
9.Magic Pain
10.Boom Boom Tap (Dance On)