Vol.14 Pete Lesperance / August 2012

Pete Lesperance

カナダ産ハードロックバンド HAREM SCAREM ではギター・ヒーロとしての十二分な資格を備えた魅力溢れるギタープレイ、そしてコンポーザーとしてのセンス溢れる音楽で多くのファンを魅了していたピート・レスペランス。

残念ながらHAREM SCAREMはバンドとしての活動を停止したが、ピートは相変わらず素晴らしい音楽を創り続けており、今回リリースされた最新のソロアルバム「FADE INTO STARS」でもシンガー・ソングライターとしてより高い次元のアーティストへと進化を遂げている。

最新作「FADE INTO STARS」についてピートに訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)

 

Muse On Muse (以下MM) : 前作「Down In It」からはおよそ8年ぶりとなるソロ作品のリリースとなりますが今の気持ちは? 前作からは8年の間が空きましたが、その間のあなたの活動状況についてもお聞かせ下さい。
Pete Lesperance(以下PL) : やっとアルバムが完成してとても気分はいいよ。次にアルバムを作る時は8年もかからいことを約束するよ。アルバムに収録されている曲の中には何年か前に書いた曲もあるから、やっと形にすることができてホッとしている部分もあるね。前作からの8年の間は他のアーティストの音楽をてがける仕事に携わっていた。様々なプロジェクトでギターを弾いたり、プロデュースをしたりしていた。それと、前までは家族と過ごす時間が少なかった分、家族との時間も取るようにしていた。今ではスタジオの仕事が多く、ギターやプロデュースの他にも作曲、ミックス等もやっていて忙しくしているよ。

MM : 今回の作品はHarem Scarem時代からのあなたのファンはもちろんのこと、それ以外のロック・ポップス音楽のファンに至るまで幅広い音楽ファンが聴いて楽しめる良質なボーカルアルバムに仕上がっていますね。
PL : ありがとう。ここ何年かは自分のボーカルを上達させるために努力していたからね。決してハードロック系のパワフルなボーカリストではないけど、僕の歌を聴いて気に入ってもらえるのは本当に嬉しいことだよ。アルバム自体、ハードロック・ファンよりもメインストリームな音楽を好むリスナーをターゲットにしている感はあるね。それは意図的にやったことだよ。

MM : 今回のアルバムを制作する上で何かコンセプトはありましたか? またアルバムタイトル「Fade Into Stars」に込められている意味は?
PL : 特にコンセプトはなかったよ。ただ、自分のクリエイティヴな考えの中でそろそろ作品を作りたいという気持ちが芽生えていたのは事実で。ここ何年かで書き溜めていた楽曲があって、その楽曲同士の相性もよかったことからひとつの作品として出そうと思ったのさ。アルバムタイトルの「Fade Into Stars」は”Say Hello”という曲の歌詞の4行目からそのまま取ったフレーズだ。「fade」という言葉はどうしても「暗闇へとフェードアウトする」というような、消えていくイメージがある。あえて逆の発想で「明るい場所へとフェードインする」イメージでこのフレーズをタイトルに使っている。

MM : 前作「Down In It」に続き今作もギタリストとしての音楽というよりも、シンガー・ソングライターとして、より歌を重視し、歌詞やメロディの世界を探求している印象を受けましたが、あなた自身はどのように考えますか?
PL : ソングライティングというのは自分にとって常に最優先される要素だ。楽曲とそのジャンルに対して全力であることをいつも心がけているよ。特に今回のようなポップな楽曲はハードロック系のギター音楽と違って独特の繊細さが必要になってくる。元々、ハードロックアルバムにするつもりもなかったので、最初から作品に対するアプローチも異なっていた。

MM : アルバム用の曲作りやレコーディングにはどのくらいの期間をかけたのでしょうか?
PL : アルバムに収録されている曲は過去5年の間に書いているが、レコーディング自体は2011年4月から始めた。でも、基本的には他の仕事の合間に録音していて、常にレコーディングを続けていた訳ではない。インスピレーションが働く時だけ作業をしていた。

MM : アルバムのレコーディング作業はどのように進められたのでしょうか?
PL : まず、ドラムはハリー・ヘスのスタジオで録って、その後は自分のスタジオで残りのレコーディングとミックスを行った。近年の録音技術は本当に便利で素晴らしい。アルバムに参加してくれたミュージシャンのうちの何人かは自分のパートを自宅スタジオで録音して、それをファイルで僕に送ってくれた。この作業方法はとても気に入っているよ。

 

MM : あなたが曲作りを行う上で心がけたことは何でしょうか?
PL : メロディ的にも歌詞的にも、常に面白みを持つことだと思うね。ソングライターとして、曲を作る作業行程の中で少しでも「つまらない」と思ってしまったらリスナーもきっと同じようにその楽曲に対して「つまらない」という印象を持つだろうね。

MM : 曲作りに対するアプローチ方法としてはHarem Scarem時代と今とでは変わった点はありますか? 例えばHarem Scaremのようなハードロックの場合は曲におけるギターのリフ作りも重要な要素だったと思いますが。
PL : そうだね、全く違うよ。自分のソロ作品のための曲作りとなるとメロディと歌詞に重点を置くようなアプローチによって演奏も決まる。Harem Scaremの場合は演奏における面白みやギター・リフが中心になる。それは僕とハリー・ヘスが作り上げるサウンドでもあるからね。勿論、その他の要素に関しても同じくらい重要だと思って曲作りをするけど、Harem Scaremの楽曲の着地点を考えると演奏力が重視されるのは自然の流れだろうね。

MM : “Be The One”は美しいピアノも印象的ですが、この曲はピアノで作曲しているのでしょうか? 曲作りの際、ピアノやギターを使い分けていますか? 使い分けているのであればどのような観点で使い分けているのでしょうか? 
PL : ありがとう。この曲はピアノで作曲している。基本的にはピアノかギター、どちらかの楽器で曲を書き始めると、曲が完成するまでその同じ楽器で曲作り作業を続けて完成させる傾向があるね。

MM : 曲をプレイする上でのギタリストとしてのアプローチ方法のHarem Scarem時代との違いはありますか?
PL : 勿論、違いはあるよ。音楽スタイルが全く違うからアプローチも異なる。自分のアルバムでは楽曲そのものによってギターパートが左右される。でも、Harem Scaremの場合は複雑で高度なギターパートが曲の基礎になっている部分がある。

MM : 今作で聴くことが出来るあなたのギターソロはどれも曲にマッチした素晴らしいプレイですがこれらフレーズは事前に考えられたものですか、それともインプロヴァイズでしょうか?
PL : ソロを録る際は、ある程度インプロヴァイズしたものを元に作っている。基本的には録音ボタンを押して、インプロヴァイズして一番良いテイクを採用するというようなことはしないね。

MM : 曲にマッチしたギターサウンドを創る上でのあなたの考えをお聞かせ下さい。
PL : 前にも言っているけど、ギターサウンドも楽曲そのものによって左右される。レコーディングをしながら楽曲にマッチするようにゲインやEQを調整して、自分の頭の中で想像しているその楽曲のギターの音になるまで調整を続けている。

MM : それではアルバムに収録されている各曲について曲の生い立ちや曲に対するあなたの想い、レコーディング時のエピソードなどお話しいただけますか? 
PL :
“Say Hello”
この曲の元々のアイディアは10年前からあるんだ。クレイトン・ドーンのビートルズっぽいハーモニーがお気に入りだ。

“Save Me”
才能溢れるマーク・ジョーダンと一緒に書いた曲。レイ・コバーンのシンセ・パートがともかく素晴らしい。この曲の大部分を作っているパートだと僕は個人的に思っている。

“Too High”
アルバムの中で最も気に入っている曲だ。理由は最も自分らしくないから(笑)エンディングにあるリック・マクファーソンの歌が最高だね。その部分がアルバムの中で最もお気に入りの瞬間かもしれないね。

“Be The One”
自分の兄弟と一緒に書いた曲で、タラ・リン・ハートの歌をフィーチャーしている。

“Hollywood”
この曲はとても仲のいい友人でもあるディーン・マクタガートと一緒にプロデュースしていたプロジェクト用に書いた曲だ。ナッシュヴィルのアーティストにもカヴァーされている。

“Satellites”
この曲はナッシュヴィルへ行った時にスティーヴ・フリーマンとメアリー・リン・ステラと一緒に書いている。バリー・ドナヘイがベースを弾いて歌を歌っている。これも元々はカントリー音楽として書いた曲だ。

“6 Ways(It Could Only Be You)”
これは妻のことを題材に作った曲だ。彼女がバッキング・ボーカル歌ってくれている。また、ジム・ホークが幻想的なスチール・ギターを入れてくれている。

“Love Someone”
今回のアルバム収録曲の中で最後に書いた曲だ。ハリー・ヘスが存在感のある歌を入れてくれている。

“One Last Time”
元々は数年前にナッシュヴィルへ行く時のために用意したカントリー音楽のデモに収録した楽曲だ。

“The Ride”
Fair Groundのアルバムを作る仕事を終えた直後に書いた曲だ。

MM : 今回収録されている曲の中で、あなたにとって一番思い入れがある曲を教えて下さい。
PL : Be The Oneだね!

MM : 今回のアルバムの中で使用したギター、アンプ、エフェクター、ペダル類を教えて下さい。
PL : アンプはKoch Powertone 2を使い、キャビはMesa Boogieの2x12を鳴らしている。ペダルボードの内容はこんな感じだ:
-Pigtronix-Philosopherトーン・コンプレッサー
-Love Pedal Kanji オーバードライヴ
-Keeler Push オーバードライヴ
-SubDecay Prometheus フィルター・ペダル
-Whetstone フェーザー
-Electro-Harmonix-POG 2
-Empress トレモロ・ペダル
-Malekko spring chicken リヴァーブ
-Boss ギガ・ディレイ
-Ernie Ball ボリューム・ペダル

 

MM : 使用しているギター・ピックの種類や使用している弦の種類なども教えて下さい。?
PL : In Tuneというメーカーにカスタムのピックを作ってもらっている。ちゃんと自分の名前も入っているよ!(僕のエゴで(笑))弦はテレキャスターにErnie Ball10、レスポールとグレッチにはライトトップ/ヘヴィボトムを使っている。

MM : 今後のあなたの予定をお聞かせ下さい。
PL : 次はカナダのカントリー・アーティストのミッシェル・ライトのツアーが6週間ある。ツアーから戻ったらギター・オリエンテッドな作品(アルバムかEP)の制作を始めようと思っているよ。ギターファンが喜んでもらえるようにね!(もう何年も同じことを言っているのは分かっているよ・・・今度こそ!)

MM : 日本のファンへメッセージをお願いします。
PL : 何年もの間Harem Scaremを応援してくれたことを心から感謝したい。そして今度は「Fade Into Stars」を楽しんでもらえることを願っているよ。

Pete Lesperance Official Site : http://petelesperance.com


FADE INTO STARS / PETE LESPERANCE

1. Say Hello
2. Save Me
3. Too High
4. Be The One
5. Hollywood
6. Satellites
7. 6 Ways (It Could Only Be You)
8. Love Someone
9. One Last Time
10. The Ride