Vol.89 Michael Romeo / September 2018

Michael Romeo

プログレッシヴ・メタルの重鎮Symphony Xの司令塔であり、その卓越した高度なギター・テクニックにおいても多くのファンを持つマイケル・ロメオが自身のソロ・アルバム「War Of The Worlds / Pt.1」をリリースした。「War Of The Worlds / Pt.1」には、プログレッシヴ・メタルとオーケストレーションが融合した壮大でドラマチックで起伏豊かな楽曲が並んでおり、ボーカルのRick Castellanoが歌い上げる詞とともに時に激しく、時に美しく物語が展開されていく。傑作「War Of The Worlds / Pt.1」を創り上げたマイケル・ロメオに作品について訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura

Muse On Muse (以下MM) : 「WAR OF THE WORLDS // PT.I」は、まるで壮大なスケールの映画を観たかのような感動を与えてくれます。この作品のコンセプトについてお聞かせ下さい。
Michael Romeo (以下MR) : このソロ・アルバムの曲を書き始めた時、既に明確なアイデアが頭にあったんだ。収録曲がまるで映画のように互いにリンクしているイメージだ。もちろんヘヴィーなギター・リフやプログレッシブな音、電子音も大事だったんだけど、今回に関してオーケストラとギターのサウンドの融合こそが重要だったんだ。オーケストラ・サウンドがSFや宇宙的な雰囲気を与えると思っていたからね。メタル、映画のスコア、電子音楽といった自分が好きな違うタイプの音楽をミックスして今までにない作品を創造しようと思っていた。もちろんギターが前面に出ていてメロディーがある音楽という前提でね。

MM : アルバムの参加メンバー及び彼らに参加を依頼することになった経緯について教えて下さい。
MR : 彼等はみんな良い友人で、そういった友人達と仕事したいと思っていた。ジョン・マカルーソの事はずっと知っていて、彼は偉大なドラマーであるだけでなく素晴らしい人間で、何か一緒にやろうって話をずっとしていた。JDと俺とは一緒の高校に通った仲で少年の時からの友人だ。二人の事を本当にリスペクトしているから彼等と仕事するのは当たり前のチョイスだったよ。そしてリックとは7年前に出会った。昔からの友人達と遊びでジャムしていた時に友達がリックを紹介してくれた。彼と1日中、Sabbath、Priest、Rushなんかのクラシックなナンバーを一緒にジャムして、彼が凄く良かったから、その後もお互いに連絡を取り合っていたんだ。いつかソロ・プロジェクトか何かで一緒にやりたいって思ってた。そして今アルバムのプロジェクトを始めた時に彼に電話をしたんだ。

MM : 今回の作品をSymphony Xとしてではなく、あなたのソロ・アルバムとして取り組もうと考えたのはなぜでしょうか?
MR : 他のメンバーが他にやる事がある関係で、Symphony Xは昨年から少しの休止期間に入ってる。俺もアイデアをまとめてソロアルバムをやりたいってずっと思ってたけど、いつも時間が無かったから、この期間は凄く良いチャンスだと思って時間をかけて音楽的なアイデアを一つにまとめたんだ。

MM : ギタリストとして名を馳せているあなたのソロ・アルバムということでギター・インストゥルメンタルのアルバムは考えなかったのでしょうか?
MR : 一瞬そう思ったけど、本当に作りたいのは映画的なフィーリングを持ったボーカルの乗った作品だったんだ。それがプロジェクトの初期からのアイデアだ。オーケストラ調で、映画的で、良く使うヘヴィーなリフ、多くのギターリフ、プログレッシブな要素がありながらも、メインはオーケストラとギターが絡み合う作品を作りたかった。オーケストラの要素はSFっぽさ、壮大な宇宙観を出すために必要なんだ。ちょっとスター・ウォーズみたいな感じといえばわかるかな。映画のサントラみたいなクオリティにしたかったんだ。だからインストのアルバムでは無い事を心配してしてなかったよ。十分ギターが前面に出てるからね。曲とオーケストラの部分の間で多くのギターサウンドを聴く事ができるよ。

MM : この作品の収録されている曲のソングライティングはどのように行われたのでしょうか?
MR : 5ヶ月に渡って毎日曲を書いた。基本となるリフから始めて、サビのアイデアやシンプルなメロディーを組み合わせて曲を作り上げていったんだ。電子音を色々と試しながら他とは違うサウンドを加えていった。そしてオーケストラ・サウンドに関しては紙とペンで書いたんだ。オールド・スクールなやり方さ。

MM : 昨今ではアルバムを通して聴くことはせずにお気に入りの曲のみ抜き出して聴く、といった聴き方も多くなっているようですが、この作品はアルバムを通して最初から最後まで一気に、そして何度も聴かせてしまうようなストーリー、各曲が持つ静と動の抑揚を持っています。
MR : そうだね。残念ながら多くの人がアルバム単位で音楽を聴く事をやめてしまった。でも俺自身のようにアルバム全体を聴く人もいるんだ。だから俺は抑揚があって音楽という旅を体感できるアルバムを作りたいんだよ。個々の曲単体がクールになるように作りながら、アルバム全体に対してもいつも意識している。それには全ての音が鍵となるんだ。

MM : ブックレットのクレジットによるとドラムとギターのリアンプのレコーディングはそれ用のスタジオが使用されているようですが、基本はあなたのホーム・スタジオで制作されたのでしょうか?
MR : ドラムはジョン・マカルーソが共通の良き友人でもあるシモーネ・ムラローニとイタリアで録音したんだ。その他の殆どの音は俺のスタジオで録音した。俺はいつもギターはダイレクト・ボックスで録音するんだ。そうしておくと後でアンプを通す時に選択肢ができるからね。

MM : あなたが作曲やレコーディングなどの音楽制作時に使用している機材を教えて下さい。
MR : ギターのセットアップはシンプルだ。キャパリソンのギターとENGLのアンプを使用している。ほとんど全てのギターパートはエフェクター無しのギターとアンプのみで録音されている。メイン以外に使用したギターは恐らくストラトやアコースティックのもので別のアンプを通したりサウンドを変えたりしている。DAWは長年Cubaseを、RMEのオーディオ・インターフェイスと共に使用している。他には数台のコンピューターを繋いだネットワーク上にインストールしたVienna Ensemble Proをオーケストラの音やサウンド・デザイン用に使用した。録音用に良いマイク、プリアンプ、コンプや反響が優れたライブ・ルームもあるから仕事を終えるのに必要なものは全て揃ってるよ。

MM : 続編となる次の作品について可能な範囲で教えて下さい。
MR : Part IとPart II の曲は同時に書いたんだ。多くのアイデアがあったから2つのソロ・アルバムを一度に作る事ができた。2つのパートに別れるだろうとはじめから思っていて、2作品分のアルバムの楽曲に必要なドラム、ベース、大量のギターとヴォーカルを録音する事ができた。もちろん様々なタイプの曲が収録されているが、2作品を通してテーマは共通していて、1つのアイデアを基に作られた2つのアルバムなんだ。

MM : 今後の予定を教えて下さい。LOUD PARK 2016ではSymphony Xとして日本のファンの前でプレイしていますが、再び日本でのあなたのショーを心待ちにしているファンも多くいます。今作や次作を従えての来日の可能性はありますか?
MR : Loud Parkは凄く良かったね。皆さんとまた会いたいね!でもこのアルバムを作り始めた時はソロ・ツアーに関しては正直考えていなかった。それよりも音による光景を創造したかったんだ。バンドとして曲を作る時はライヴで演奏するのが分かっているから、レコーディングしている時も音数が多すぎたりしないように意識しながら作るんだけど、今回はそれについては考えなかった。曲の中にギタートラックが20個もあって、オーケストラや何重ものシンセの音が同時に鳴っている曲をライブでやるのは・・。でもこのアルバムの反響によってはツアーを考える可能性はあると思う。ライヴの準備やアレンジの変更は必要だけどね。

MM : ファンへメッセージをお願いします。
MR : 深い感謝の気持ちを全てのファンに伝えたいね!Symphony Xは日本で火がついたバンドだから、日本にはいつも感謝している、ありがとう!そしてソロ・アルバムを買ってくれた人にも感謝したい。凄く楽しんでまとめあげたアルバムだからみんながエンジョイしてくれたら嬉しいよ!

Michael Romeo official site  http://michaelromeomusic.com/


MICHAEL ROMEO / WAR Of THE WORLDS / Pt.1

1. Introduction
2. Fear The Unknown
3. Black
4. F*cking Robots
5. Djinn
6. Believe
7. Differences
8. War Machine
9. Oblivion
10.Constellations