Vol.40 Mattias IA Eklundh / November 2014

Mattias IA Eklundh


Photo by Patric Ullaeus

Freak Kitchenが前作「LAND OF THE FREAKS」からおよそ5年ぶりとなる新作「COOKING WITH PAGANS」をリリースした。新作はFreak Kitchenの魅力であるハード&ヘヴィなグルーヴにキャッチーで親しみやすい歌、そしてマティアス独自のユニークで素晴らしいセンスに溢れたギターが組み合わさった正にファン待望の作品となっている。またアルバムのアートワークやミュージックビデオをディズニーのアニメーターなどで有名なJuanjo Guarnidoが手掛けており、躍動感あるFreak Kitchenの姿を見事にアニメーションで表現している。新作、Juanjo Guarnidoとのコラボレーションに関することなど色々とマティアスに訊いてみた。


Photo by Patric Ullaeus

Interview / Text  Mamoru Moriyama

Translation         Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)

 

Muse On Muse (以下MM) : 新作「COOKING WITH PAGANS」はFreak Kitchenとしては2009年にリリースした前作「LAND OF THE FREAKS」からおよそ5年ぶりの作品となりますが今の気持ちをお聞かせ下さい。
Mattias IA Eklundh (以下ME) : そうだね、確かに「LAND OF THE FREAKS」が出てからだいぶ時間が経ったね。今回の「COOKING WITH PAGANS」が完成して我々も嬉しく思っているし、リスナーのみんなが喜んでくれることを願っているよ。

MM : 今回の作品を制作するにあたりコンセプトはありましたか?
ME : 特にコンセプトは無いよ。一体感や統一感を生んでくれる良い曲を12曲集めたというだけだ。内容的には現代の世の中をテーマにしている。

MM : アルバムのアートワークはディズニーのアニメなどを手掛けているJuanjo Guarnidoが行っていますが、彼に依頼することになった経緯について教えて下さい。
ME : 実は僕が知らないところでJuanjoは長年Freak Kitchenのファンだったんだ。2013年2月に彼からメールが届き、彼が手掛けたディズニーの作品やBlacksadというキャラクターのことを教えてくれたのさ。その後、彼から宅急便が届き、その中には彼の本やグッズが沢山入っていてびっくりしたよ。僕はすぐにアルバムジャケットの制作を彼に打診した。ベースのChrisはJuanjoの大ファンで、これが現実に起きていたことをその時は信じることができなかったようだったね。このように一緒に仕事ができるようになったことにとても感謝しているよ。

MM : アルバムジャケットのイラストは結構刺激が強いですが、このジャケットにはどのような意味が込められているのでしょうか?
ME : バンドメンバーの首が切られて、牛に支配されるというアイデアが前からずっとあったのさ。理由はよく分からないけど、何となく(アルバムジャケットとして)魅力的だと思ったんだ(笑)そのアイデアを忠実に再現できるのはJuanjo以外にいないと思った。彼のスタイルはとても好きだし、アートワークも気に入っているよ。紛れもなくバンド史上最高のアルバムジャケットだね。

MM : アルバム収録曲の曲作り、そしてレコーディングはどのように進められたのでしょうか?
ME : 曲作りに関しては特に決まった方法は無いよ。何時間もギターを弾いているとアイデアが浮かんで来るのさ。どの曲も方法は異なるけどね。レコーディング自体はとてもスムーズで簡単だった。時間がかかってしまったのには様々な理由があった:家を離れている時期が多かったり、Freak Guitarを作っていたり、友人のJonas HellborgとSmorgasbordを作っていたり、それにJazz Rajのアルバムも作っていたり、他にも色々とやっていたからね。次のアルバムを作るにはそんなに時間はかからないよ。約束する!レコーディングは自宅スタジオで行い、ミックスはコペンハーゲンのスタジオでやった。ミックスは1日半で終わらせた。


Photo by Patric Ullaeus

MM : あなたが作った曲を他のメンバーに聞かせるためのデモの内容はどのレベルまで仕上がっているのでしょうか? ベース、ドラムのパートもある程度作りこまれているのでしょうか?
ME : そもそもデモは作らない。時間の無駄だと思っている。自分が作りたいものが明確なので、満足するまで楽曲のレコーディング作業を続けるだけだ。セカンド・アルバム「Spanking Hour」以降からデモを作らなくなったよ。何故、全ての曲を2回レコーディングする必用があるのだ?労力の無駄だし、大抵デモの方が出来がいいことが多い。だったら一回目で仕上げることに労力を費やした方がいいはずだ。

MM : アルバムの収録曲はどの曲も細部まで作りこまれていて聴く度に新たなパート、サウンドなどを発見できます。その辺りの作りにはかなり注意を払っているのでしょうか?
ME : それこそがアルバムをプロデュースするということだ。楽曲に飾り付けをしていく方法を見つけていくという作業だ。それぞれの楽曲の特徴を適切に見つけ出したり、楽曲をベストの状態へと持っていくのは時間のかかる作業だ。不安定で変わりやすい状況もあるが、基本的にはそのプロセスを楽しんでいるよ。

MM : 今作でも高度な演奏技術+ハードかつヘヴィなサウンドに親しみやすいメロディックな歌が融合したFreak Kitchenの魅力が健在ですね。
ME : ありがとう!どのアルバムもベストの作品を作れるように一生懸命やっているよ。

MM : “Freak of the Week”、”Mathmatics of Defeat”などの曲をはじめサビにおけるメロディの展開がCoolで素晴らしい曲が多いですね。あなたの曲ではサビの部分を迎えるまでサプライズをお預け・・といった楽しみ方が出来る曲が多いですが、このことについてあなたの考えをお聞かせ下さい。
ME : 僕は美しいメロディに弱いんだ。音にならない音でグロウルするよりもアグレッシブであっても効果的なメロディを使うことができる訳だ。ともかく思うがままに作ったけど、結果的にそれが正解だったと思える部分が多い作品に仕上がったね。

MM : “Sloppy”はSlop-py-py-py-py-py-py-py-py! Sloppy!のフレーズがとてもFreak Kitchenらしくて一度聴いたら頭から離れなくなる曲ですね。この言葉とリズムの組み合わせによる面白いアイデアはどのように生まれたのでしょうか?
ME : 元々はインド音楽に興味を持っていたことがきっかけでこういったアイデアが生まれたんだ。この曲のアイデアになったのは古いボリウッド音楽がきっかけで、面白くておかしいのが頭に残っていたものだ。最初は物真似っぽかったけど、少しずつ自分の中で(音楽的に)成長していったフレーズだ。

MM : あなたは社会や日常で起こった出来事への風刺をよく曲にしていますが、”(SAVING UP FOR AN) ANAL BLEACH”はネット依存社会の風刺でしょうか?
ME : この曲は人生そのものや、今の人類を象徴している内容だ。馬鹿げていたり、めちゃくちゃなことがあまりにも多い世の中だから、自分なりに分析してみたんだ。ある意味、対処する方法のひとつでもある。実際に考えた歌詞よりも、現実の方が遥かに並外れているけどね。人には大げさだと時々言われるけど・・・自分の周囲に存在するちょっとした正気の無さにはいつも驚かされるね。僕は家族と動物たちと一緒に林の中に住んでいるから、この不思議な世の中でも正気を保てている訳さ。

MM : “Come Back to Comeback”では「再結成」に関して歌っていますが、現在の音楽業界についてどのように感じていますか?
ME : 僕はこの音楽業界とその醜さに身を置きながらも、そこに属していないと自分では考えているよ。仕事をして、演奏をして、終わったら帰る・・・そんなニュアンスだ。数多くの再結成ツアー、フェアウェルツアー、そして再び再結成ツアーがあるが、馬鹿馬鹿しいね。解散を宣言するならきちんと解散するべきだ。そこで辞めるべきなんだよ。辞めて魚釣りにでも行けばいいのさ。

MM : 透き通るような美しいメロディとタッピングによるバッキングを聴くことが出来るバラードの”Hide”、そしてイントロからのメロディックなタッピングが印象的なロックナンバーの”Ranks of the Terrified”ではとても効果的に曲を彩るためにタッピングが使用されていますね。
ME : ありがとう。僕はタッピングが大好きなんだ。プレイヤーによってはタッピングという奏法を単なる音符の羅列にしか捉えていないかもしれないが、個人的にはリズミカルな奏法として活用させてもらっている。

MM : あなたの場合はどの曲においてもギターソロがメロディックな部分とテクニカルな部分がバランスよく融合された構成になっています。これらソロはあらかじめ考えられたものなのでしょうか、それともインプロヴァイズなのでしょうか?ソロを組み立てる際のアプローチ方法についてお聞かせ下さい。
ME : いつもインプロヴァイズしている。予めプランしてあるソロは無いよ。まずは何度かソロを録音して、録音したものを聴いて何が良かったか、何が良くなかったかを判断する。またその中に使えるメロディやリズム・パターン等がないかもチェックする。場合によってはそこからパンチインをして特定の箇所を修正したり、ソロとソロの繋ぎを作ったりすることもある。正直、毎回方法は異なるよ。


[Freak Kitchen : L to R] Christer Ortefors (b,vo), Bjorn Fryklund (dr), Mattias IA Eklundh (vo,g)
Photo by Patric Ullaeus

MM : アルバムに収録されている各曲についてあなた自身による解説をお願い出来るでしょうか? 曲が生まれるまでの経緯や曲に込められた思い等をお聞かせ下さい。 
ME :
“Professional Help”
このアルバムの中で最も気に入っている曲だ。とてもシンプルだが効果的な曲なんだ。サビでは思いっきり叫んでいるけど・・・本当に口から血が出ていたよ。喉も痛かったしね。曲自体はオーストラリアのホテルの部屋で書いたもので、短時間で作られている。

“Freak of the Week”
これも大好きな曲のひとつだ。それにJuanjo Guarnidoと彼のチームに素晴らしいビデオも作ってもらった曲だ。こんな機会に恵まれて本当に感謝している。このビデオと同じストーリーの本が後に出ることになっているが、それも素晴らしい仕上がりになりそうだ。全体のプロセスについてのかなりディープな内容になりそうだと聞いている。この曲にはトリッキーな様相が沢山取り入れられている:インドのラーガ音階、変拍子、対位法等。でも、基本的には奇妙な要素を沢山取り入れたポップ・ソングだ。

“Sloppy”
AC/DCのようなベーシックなロックをダウン・チューニングにして、更にインド系のヒネリを加えている。この曲のグルーヴをとても気に入っているよ。合わせるのが難しかったが、上手くできたよ!

“Goody Goody”
どうしてもレコーディングしてみたい曲だった。元は1936年の曲だよ。過去12年間、ずっとステージ上で”Goody Goody”と叫んでいたからね。(理由は訊かないでくれ!僕にも分からないんだ)ともかく、出来には満足しているよ。

“(Saving Up For An) Anal Bleach”
歌詞の観点から見て、アルバムの中で最も野蛮な曲と言える。世の中の様々な醜い出来事を題材にしている。Freak Kitchenはどうしても面白おかしいバンドとしてとらえられているみたいだが、個人的にはユーモアという武器を使って難しいテーマに取り組んでいると解釈している。曲のリズムは全てインド系だ・・・またしても。

“Private Property”
Chrisが書いて僕がアレンジした曲だ。彼は素晴らしい仕事をしてくれたよ。パンク・ポップ系の雰囲気を持っていてとても好きだし、演奏していてとても楽しい。最初に考えたソロ部分が上手くいかなかったので、一度作り直す必用があった。ギターのチューニングをBに下げて狂ったように弾いたら・・・上手くいったよ!

“Mathematics of Defeat”
これもインド音楽(リズムが南インドのカルナーティック)とコンテンポラリーな音階(ヴァース部分は全てシンメトリック)をベースにした楽曲だ。逆にコーラスは完全にポップになっていて、安心して聴けるようになっている。インド音楽部分ではBjornが素晴らしいソロを披露してくれている。

“I Don’t Want to Golf”
個人的には捨て曲だと思っていたが、プレイリストから分析すると思いの外、リスナーの間では反応が良い曲だ。コーラスのメロディは「Organic」に入っている”Look Bored”から完全に盗んだものだ。(たった一度しか歌っていないフレーズで、それだけで終わらせるのは勿体ないと思ったのさ(笑))

“Hide”
アルバムの中で最もソフトな曲だけど、日常や常に我々を取り巻く雑音をテーマにした曲だ。大好きな曲だ。

“Come Back to Comeback”
とてもベーシックなロックだ。偽りのない感じだ。何故かギターサウンドがとても気に入っている。他の曲とセッティングが同じはずなのに、何かが違うんだ。

“Ranks of the Terrified”
タッピング、タッピング、タッピング!大昔に作ったフレーズがやっと日の目を見ることができたという訳だ。先日、ワールドツアーのプレミア公演で初めて生演奏をしたけど、素晴らしい出来だったよ!

“Once Upon a Time in Scandinavistan”
多くの人たちを困惑させている曲だ。無理も無いよ。この曲を理解するためには良き友人でもあるZac O’Yeahの本(同タイトル)を読まないといけないんだ。エンディングのフレットレス・ソロの出来には満足しているよ。インド音楽の雰囲気を持っている。フレットレスを演奏するのは怖いね。自分がどれだけ下手かが良く分かるよ!でも、良い教訓だね。

MM : 最近は新作をリリースする際にCDやダウンロード音源以外にアナログレコードも同時にリリースするアーティストも増えています。今作ではアナログレコードでのリリースは考えなかったのでしょうか? 最近はハイレゾ音源のダウンロード配信なども話題になっていますが、アナログレコードに対するあなたの考えをお聞かせ下さい。
ME : アナログレコードはリリースする予定だ。もうすぐプレスをするところで、クリスマス前には完成するはずだ。早く現物を手に入れてその音に没頭したいよ。見た目もいいし、音質も申し分ない。


Photo by Patric Ullaeus

MM : 今回もアルバムで使用したイクイップメントはCaparisonのシグネイチャーギター、Laneyのアンプがメインでしょうか? アルバムのブックレットの中ではあなたがフレットレスギターを持つ姿も確認できますが。
ME : そのとおりだ!100% Laney Ironheart 120W アンプに 2X12スピーカーを使った。使用したギターも全て自分のCaparison Apple Hornだ。他には何も使っていない。使う必用がないのさ!フレットレスのApple Horn Jazzも大好きだ。

MM : あなたのギターに新たに8弦ギターが加わりましたが、8弦ギターの開発に至った経緯を教えて下さい。実際に8弦ギターをプレイしてどのように感じましたか?
ME : 12月の来日の際にApple Horn 8を持っていく予定だ。最強の楽器で大好きだ。今までに触った楽器の中で一番優れた楽器だ。6弦ギターを弾くのとは全く感覚が違うね。7弦ギターはあまり興味を持てなかったし、合理的ではない気がしていた。でも、8弦ギターに関しては合理的だと思えたのさ。チューニングは低い弦からE、A、E、A、D、G、B、Eだ。素晴らしいギターだよ。

MM : 12月に日本でギタークリニックが開催されますがどのような内容になるのでしょうか?
ME : Apple Horn 8を使って沢山演奏する予定だよ。Freak Guitarアルバムからも色んな曲を弾くし、Freak Guitar Campやそれ以外にも色んな内容を網羅するつもりだ。

MM : 最後に日本のファンへメッセージをお願いします。
ME : 長年、応援してもらえて本当に感謝しているよ。これからも奇妙な音楽をどんどん作っていくので楽しみにしていてほしい。12月に会おう!皆さん、お元気で!
 
Freak Kitchen official site : http://www.freakkitchen.com/
Mattias IA Eklundh official site : http://www.freakguitar.com/
 

Freak Kitchen / Cooking With Pagans
1.Professional Help
2.Freak of the Week
3.Sloppy
4.Goody Goody
5.(Saving up for an) Anal Bleach
6.Private Property
7.Mathematics of Defeat
8.I don’t want to Golf
9.Hide
10.Come back to Comeback
11.Ranks of the terrified
12.Once upon a time in Scandinavistan